試合レポート

【東京】延長12回の死闘!二松学舎大附 またもタイブレークに泣く‼ 明暗分けた8回の代走〈秋季地区大会〉

2023.10.29


<秋季東京都大会:日大二4-3二松学舎大附(延長12回)>◇28日◇準々決勝◇スリーボンドスタジアム八王子
10月も終わりに近づいているのに、昼間は汗が出るような温かさだった。猛暑に襲われた今年の夏、東京では波乱が続出した。そして、その多くがタイブレークであり、二松学舎大附もタイブレークの末、3回戦で敗れた。実力的に優位とされるチームは、タイブレークになるのは避けたいところだ。またこの秋の二松学舎大附は、圧倒的な強さをみせて勝ち上がってきたが、失点も多く、柱になる投手はいなかった。そうしたことが全て伏線になって、この試合の結果に大きな影響を与えた。

1回裏二松学舎大附は1死二塁から3番・片井海斗内野手(2年)の中前安打で1点を先制する。また得点にはつながらなかったが、4番・五十嵐将斗外野手(2年)も中前安打を放っている。片井は全国的に知られた強打者だが、五十嵐もまた力のある打者だけに、片井と勝負せざるを得ないというのが、二松学舎大附の強みである。

日大二の先発・鈴木勝也投手(2年)は初回に1点は失ったものの、緩急をつけた丁寧な投球で追加点を許さない。すると5回表、2死二塁から日大二の1番・樋口結外野手(2年)がライトに強い打球の安打を放つと、本塁への送球を急いだ右翼手の五十嵐が打球を後逸。樋口は一気にホームインし、2点が入り逆転した。記録は安打と失策だが、本塁打と同じ意味を持つ安打になった。

もっとも二松学舎大附もすぐに反撃し、7回裏、二塁打を放った7番・花澤莞爾外野手(1年)が、9番・小枝英心外野手(2年)の左犠飛で還り、同点に追いつく。8回裏の攻撃でも、この回先頭の4番・五十嵐が中前安打で出塁する。この回得点が入らないと、延長タイブレークに突入する可能性が高くなる。そのため二松学舎大附は勝負に出て、五十嵐に代えて代走・岡部雄大内野手(2年)を送る。しかしこの回得点挙げることができなかった。

9回裏の攻撃では二死一、二塁から3番・片井がライナーを放ったが、二塁手の村岡隼人内野手(2年)が捕球し、得点は入らず延長タイブレークに突入する。

無死一、二塁から始まるタイブレークは、毎回激しい攻防が繰り広げられた。
10回表、二塁走者になっていた投手の鈴木勝は、この回先頭の9番・瀧澤和也捕手(1年)の2球目に飛び出し、刺される。それでも瀧澤は四球で出塁し、チャンスは続く。そして2番・村岡の中前安打で1人生還し、日大二が勝ち越す。その裏二松学舎大附は4番からの打順だが、五十嵐はベンチに退いているため、代打に日笠雅凰捕手(1年)を送る。日笠の執念のバントは相手のエラーを誘い満塁となる。

そして5番・椎名潤内野手(2年)の中犠飛で二松学舎大附が同点に追いつく。しかし6番・永尾愛蓮捕手(1年)が三ゴロの併殺に倒れ、試合は11回に進むが、この回は両チームとも得点は入らなかった。
12回表、二松学舎大附は4番手の投手として大内啓輔投手(2年)を送る。日大二はこの回先頭の8番・毛塚蒼翔内野手(1年)の犠打で二、三塁とした後、ワイルドピッチがあって1点を勝ち越す。無死一、二塁から始まるタイブレークゆえの得点であった。

日大二は前の回から2番手として宮村笑琥投手(1年)が登板している。そして日大二1点リードの12回裏、二松学舎大附が2死二、三塁の場面で3番・片井を迎えるが、4番の五十嵐は退いているため、日大二は片井との勝負を避け、申告敬遠で満塁にする。二松学舎大附が代打に送った小浦隼之介内野手(2年)は三直に終わり試合終了。試合時間3時間17分の死闘は終わった。

二松学舎大附は夏に続いて、タイブレークで敗れた。「タイブレークが難しい」と市原勝人監督は言う。日大二の鈴木勝は3回戦で佼成学園を抑えているだけに、警戒はしていた。けれども「力んだ部分はあります。フライが多かったです」と主砲の片井は言う。二松学舎大附は、力はトップクラスであることは間違いない。ただ柱になる投手がいないことが響いた。

日大二は10回まで投げた鈴木勝が試合を作ったことが大きかった。球威はさほどないものの、緩急をつけた投球が光った。「緩い球が高めだと打たれるので、コースに投げることを意識しました」と鈴木勝は言う。なお今年1月、元監督で長年日大二の野球部に尽力してきた高本晴夫氏が亡くなった。齊藤寛文監督は、「亡くなられた高本先生への恩返しの気持ちで戦いました」と語った。

齊藤監督は29歳で、3月に監督に就任したばかりだ。飛びぬけた選手はいないものの、しぶとく、負けない試合をするようになった。この勢いは決して侮れない。準決勝は創価と対戦する。
取材・文=大島 裕史

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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