【混戦の京都を夏秋制覇】立命館宇治の躍進は、「数値化トレーニング」が支えていた!
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全国各地で開催されている秋季大会も佳境を迎えている。強豪校がひしめく京都府も例外ではなく、9月終了時点でベスト4まで出揃った。そのなかには、この夏、4年ぶり4度目となる夏の甲子園に出場した立命館宇治がいる。
京都大会では、全国最多となる春夏甲子園通算76回出場の龍谷大平安に完封勝利するなど、ライバルたちに勝利。甲子園では初戦で鹿児島代表・神村学園の強打の前に敗れたものの、前年秋はベスト16だったチームが、一冬越えた春に準優勝、そして夏は優勝して甲子園出場と急成長を遂げてみせた。
高い個々の能力を存分に発揮して、京都国際の台頭などで近年混戦模様となっている京都を勝ち抜いたことは、確かな実績である。この実績は「突然変異」で生まれた産物ではなく、裏付けのある取り組みから導き出された結果でもあった。
野球のあらゆるプレーを「数値化」し、徹底的に分析
立命館宇治は、以前から選手たちのフィジカル能力を数字で把握するため、スポーツメーカーアシックスの協力を得て、年4回ほどのペースでBaseball Labと言われる測定を受けていた。
学校のスポーツテストでも実施している握力や背筋はもちろん、体脂肪なども計測できるインボディを活用した体組成の計測などで、基本的なフィジカルを数字で算出する。さらに、この測定の優れていた点は、下記の項目も同時に計測するところにあった。
・スイングスピード測定
・守備反応スピード測定
・10m、塁間、一~三塁の走力測定
・ピッチング測定
・柔軟、全身の連動性測定
アシックスの独自研究によって導き出された測定内容で、野球に求められる瞬間的なスピードはもちろん、走力、投力を、実際のプレーまで落とし込んで計測することで、より実践的な数字を算出して判定する。さらに柔軟性や連動性といった体組成では計り知れない能力も、動画撮影などを駆使して、選手たちのより深い潜在能力を数値化させている。
こうして導き出された数字を、今度は集計・分析していく。
野球部の顧問ではない田中美佳先生、猪股隼人先生、内藤大暉先生、法柏有紀江先生の4人が、選手たちの計測結果の分析に協力してくれた。 測定数値を組み合わせ学年やポジション別など、あらゆるセグメントで分析することで、チーム、そして選手の現状を多角的かつ詳細に見られるようにした。
選手のモチベーション向上、競争が激化した
選手たちも、「数字を通じて自分の成長した点、落ちている点が可視化できた」と自身のパフォーマンスの変化を捉えているために選手もいれば、プレーレベルで数字が出て比較できることで「主力選手と比較しても数字では負けていない」と自信を深めて試合でも結果を残すことが増えてきた選手も。さらにはレギュラー入りに向けて、自分が勝負できる部分はどこか、数字から探る選手もいる。
数字が出ることで選手個々のなかで生まれる自己肯定感とモチベーションが向上すると同時に、数字に基づいた更なる上達のための思考をきっかけに、チーム内競争が激化した。
限られた練習時間のなかでも数字をフルに活用することで練習の質が高まる。その結果、個々の能力は急速に上がり、夏の甲子園という結果が生まれた。当然の帰結といっていいだろう。
新チームはエース・十川 奨己投手(2年)をはじめとした経験者たちを中心に、大きな財産を3年生から引き継ぎ、秋の京都府大会でも初戦を12対2の5回コールド勝利で突破するなど順調なスタートを切り、勢いそのままにベスト4まで勝ち上がった。春夏連続甲子園への期待がかかるが、京都はもちろん、近畿のライバルたちは黙っていないだろう。しかし、この先進的な取り組みを進める立命館宇治が、近い将来、再び甲子園で戦う姿を見せてくれることを期待せずにはいられない。