試合レポート

東海大菅生vs二松学舎大附

2022.11.14

東海大菅生 日當が完投し、新井が今大会チーム初本塁打を放ち2年ぶり4回目の秋制覇

東海大菅生vs二松学舎大附 | 高校野球ドットコム
雄叫びを挙げるエース日當 直喜(東海大菅生)

<秋季東京都高校野球大会:東海大菅生8-2二松学舎大附>◇13日◇決勝◇神宮

 今大会、試合の序盤にやや苦しむことがあっても、ほぼ危なげなく勝ち上がってきた二松学舎大附に対し、東海大菅生は延長戦や試合終盤の勝ち越しなど、苦しみながら勝ち上がってきた。しかし決勝戦では、東海大菅生が苦戦の中で積み上げてきた力が一気に開花し、2年ぶりに秋季都大会を制した。

 [stadium]神宮球場[/stadium]は曇り空で風が強く、時おり砂塵が舞う中で試合が行われた。二松学舎大附は大矢 青葉外野手(2年)、東海大菅生は日當 直喜投手(2年)と、準決勝と同じ先発投手で試合が始まった。

 試合は1回から動き出す。まず1回表、二松学舎大附は1番・毛利 拓真外野手(2年)が左前安打を放つと、3番・大矢、4番・片井 海斗内野手(1年)の連続安打で幸先よく先制する。さらに6番・日笠 礼凰内野手(2年)が四球で出塁し、2死満塁とチャンスが続いたが、7番・五十嵐 将斗外野手(1年)は一飛に倒れ追加点は挙げられなかった。東海大菅生の日當は前日完投しているだけに、二松学舎大附としては、しっかり攻略しておきたかったところだ。

 その裏、東海大菅生は、1番・沼澤 梁成外野手(2年)が右前安打で出塁すると、2番・大舛 凌央内野手(2年)の犠打と暴投で三塁に進み、この試合4番に入った北島 蒼大捕手(2年)の中前安打で同点に追いついた。

 二松学舎大附の先発・大矢は、好不調の波がある。この試合では、悪い方の波が来た感じだ。3回裏は2死後、4番・北島が中前安打で出塁すると、これまでは4番だったが、この試合は5番に下がった新井 瑛喜内野手(2年)がセンターバックスクリーン直撃の2ランを放った。東海大菅生としては、今大会チーム初の本塁打であった。「たまたま風があったから。でもあのホームランが効きましたね」と、若林 弘泰監督は言う。

 リードを許したことで、二松学舎大附のゲームプランが狂い始める。4回裏、東海大菅生が、この回先頭の7番・門間 丈内野手(2年)が中前安打で出塁したところで、二松学舎大附は大矢に代えて、今大会安定した投球をしてきた重川 創思投手(2年)が登板する。しかし東海大菅生の9番・日當が、レフトフェンス直撃の二塁打を放ち、1点を追加する。

 さらに東海大菅生は5回裏に4番・北島の左前安打、5番・新井の四球に、守備の人のイメージがある7番・門間の二塁打で2人が還り2点を追加。送球間に三塁に進んだ門間も8番・高橋 玄樹外野手(2年)の中前安打で還り、この回3点を入れた。重川の失点について二松学舎大附の市原勝人監督は、「真っ直ぐが速いピッチャーでない。向こうが、力が抜けた状態からだったので、かわいそうでした」と語る。重川の特徴は、ボール球でも勝負できる投球術にある。それは相手が焦ればより効果的であるが、この日の登板は、その逆であった。

 7回表、二松学舎大附は、8番・押切 康太郎捕手(2年)の三塁打などで1点を入れて反撃するが、なおも続く2死一、二塁のチャンスで期待の4番・片井が三ゴロに倒れて、さらなる追い上げはできない。そのうえ、その裏、東海大菅生は4番・北島、5番・新井の連続安打に犠打2つで1点を追加する。この試合4番に抜擢された北島は単打ばかりだが4安打。しかもすべてが得点に絡んでいる。このようなコツコツと点を重ねるのもこの秋の東海大菅生の特徴だ。

 投げては若林監督が、「ダチョウのように体力がある」という日當が、打たれながらもペースが落ちずに、淡々と投球し、相手打線を抑える。9回表も安打2本に四球で1死満塁のピンチを迎えたが、4番・片井を二ゴロの併殺に仕留め、歓喜の瞬間を迎えた。

 最後の打者になった片井は、「先輩たちが(打席を)回してくれたのに、打てなくて悔しいです」と語る。そして悔しい思いで東海大菅生の校歌を聞いた。また市原監督は、「力負け。思うようにいかないですね」と語った。二松学舎大附は、夏のメンバーが多く残り、優勝できるだけの戦力はあったと思う。ただ個々の選手も、チーム全体としても調子や流れのいい時もあれば、悪い時もある。この試合では、悪い方の面が表に出てしまった。けれどもそれは、今後の成長の糧にもなるはずだ。とはいえ2年連続の準優勝。またも、センバツは当落線上で冬を迎える。

 2年ぶり4回目の優勝を決めた東海大菅生のエース・日當は、9回最後の場面で片井に、「打てるものなら打ってみろ」という思いで投げて、勝利をつかんだ。

 夏場、若林監督から「最低のチーム」と言われ、見返してやるという思いで選手たちがまとまった。その先頭に立ったのが、主将の渡部 奏楽(2年)だった。そのキャプテンシーは、若林監督も高く評価している。このチームは、日當以外は公式戦の経験がほとんどないまま秋を迎えた。

 特に課題となったのは福原聖矢が抜けた後の捕手であった。新チームで正捕手になった北島は、肩は強いもののバッテリーエラーが多く、打撃も不振で、不安なスタートになった。しかし3回戦の佼成学園戦で4安打の活躍をし、見違えるような活躍をするようになった。「最低だ」と言い続けてきた若林監督は、「ここまでよく成長しました。謝罪したいと思います。本当にいいチームになりました」と語った。

 秋季大会は1次予選も含めると2か月以上続く。勝者になるのは、強いチームでなく、強くなっていったチームであった。明治神宮大会、そして出場を確実にしたセンバツでの活躍を期待したい。

(記事=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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