倉敷工エース髙山の悔い、夏への成長の糧に
髙山侑大
トーナメント表
・浦和学院、敦賀気比などが属するブロック
・大阪桐蔭、花巻東などが属するブロック
・ベスト8以上の組み合わせ
<第94回選抜高校野球:和歌山東8-2倉敷工(延長11回)>◇19日◇1回戦◇甲子園
甲子園は、どんな「ほころび」も許してくれないようだ。2022年センバツが開幕した日の第2試合で、そう思った。倉敷工(岡山)のエース髙山侑大投手(3年)は先発して延長10回までわずか1失点に抑える好投を見せていたが、11回表だけで7失点。悪夢の結末を味わった。
緊迫したゲームほど、小さなミスが流れを大きく変えると言われている。髙山はそれを痛感していた。試合後のコメントでは、直前の攻撃で自分がアウトカウントを間違えて併殺に倒れたことを悔やんでいた。
同点で迎えた延長10回裏1死一、二塁。髙山は一塁走者だった。次の打者が右翼へ飛球を打ち上げる。右翼手の捕球と同時に、二塁走者はタッチアップを狙って三塁へ向かった。しかし、その時、髙山はすでに二塁まで到達していた…。そう、2死だと思っていたのだ。勘違いと気づいたときは遅く、併殺が成立した。失意のまま、延長11回表のマウンドに上がっていたのだ。
先頭打者から3連打。打ち取った力なき打球が野手の間に落ちる安打もあった。向こうに行ってしまった流れを引き戻すことはできず、そのまま7失点で降板。最後までマウンドにいることはできなかった。
髙山は自分の投球を楽しんでいるかのようだった。182センチの長身から繰り出される角度のついた直球に、スプリットとツーシームの間の魔球「スプリーム」も武器に、粘りのある投球を続けていた。腕の振りは独特で、投げた後に右手が左脇を通り越して背中に当たるほど、強く振り抜いていた。その昔、甲子園のアイドルとして騒がれた、早稲田実業のエースだった荒木大輔投手も、同じように背中に当たりそうな振りをしていたと記憶している。球質こそ違うが、髙山には伸びしろを感じる。
春の甲子園は髙山に大切なことを教えた。どんなところからでも、野球の流れは変わるものだと。精神的にも技術的にも成長した髙山の姿を、夏の甲子園は待っている。