胸郭出口症候群とチェック法
ルーステストで1分以内にだるさやしびれ感が見られる場合は、胸郭出口症候群の可能性がある
オフシーズンから春のシーズンに移行する際によく「キャッチボールや投球動作を行うとだんだん腕がしびれてくる、力が入りづらいと感じる」というものがあります。最初は「体がまだ十分に温まっていないから」かとさほど気にならないようですが、体が温まってからもこのような状態が続き、次第に不安に感じる選手がいるようです。
気温の寒い時期によくみられるこのような症状は、投球動作(腕を挙げる動作)の繰り返しによって起こることがあります。鎖骨と肋骨の間には胸郭出口と呼ばれる間隙(かんげき:すき間のこと)が存在しますが、腕を挙げる動作を繰り返し行うとそのすき間が狭くなり、その間にある血管や神経を圧迫して腕のだるさや痛みなどが現れるようになります。これを胸郭出口(きょうかくでぐち)症候群と呼びます。胸郭出口症候群は胸郭に付着する筋肉の動きが悪くなったり、肩甲骨の動きを安定させる腱板(いわゆる肩のインナーマッスル)が弱くなっていたりすることも原因の一つと考えられます。この他にもベンチプレスで大胸筋を過度に強化し、背筋とのバランスがとれずに姿勢が崩れて起こることもあります。
胸郭出口症候群かどうかをみるテスト法はいくつかありますが、自分で簡単にチェックできるものにルーステスト法(Roos Test)があります。これは肩外転90°肘屈曲90°のポジションをとり(ガッツポーズのように)、その場で手のグーパーを1秒ごとに繰り返します。通常は3分続けて行うテストですが胸郭出口症候群のような症状がある場合は1分にも満たない間に手のだるさやしびれ感が現れ、腕を挙げた状態でいられなくなります。あまりにも短い時間で左右差が現れたり、痛みやしびれ感が強くなったりするときはすぐにテストを終了しましょう。
胸郭出口症候群は胸郭出口付近での血管、神経の圧迫が大きな要因の一つですので、首から肩、肩甲骨にかけて入念にストレッチを行うようにしましょう。また入浴などで体全体を温めて血流を良くすることも大切です。
さらに背中が丸まった姿勢は肩の位置が前方へとシフトし、肩の動きを制限してしまうことがあります。頭の位置が前方に傾いていないか、首が前に出たカメのような姿勢になっていないか(スマホ首)といったことを、壁などを使ってチェックしてみることも大切です。上腕部の痛みやしびれ感が続き、思い切ったプレーができない場合は一度練習を中止し、スポーツ整形外科等、投球動作と胸郭出口症候群に詳しい医師の診察を受けるようにしましょう。
文:西村 典子
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