松坂氏がキャンプで次々とスライダーを伝授、高校野球指導も期待
松坂 大輔氏
「平成の怪物」こと、松坂 大輔氏(横浜高出身)が野球評論家ルーキーとして精力的にキャンプ視察を行っている。2022年月2月1日のキャンプインの日に、古巣・西武に姿を見せると、ソフトバンク、広島、巨人、オリックスと宮崎県でキャンプを行う球団を視察。第1クール3日間であっという間に球団を渡り歩いた。テレビ局の評論家としての仕事とはいえ、単純にビジネスとしてキャンプを巡っているとは思えない。
その表情はまるで少年のように楽しそうだ。現役のころから、他球団のキャンプでどんな練習をしているのか気になっていたという。横浜高から西武に入り、メジャー、ソフトバンク、中日とキャンプを行っていたが、他球団、他の投手の調整には興味があったのだろう。好奇心が目線をぐるぐると動かせていたに違いない。
さらに、まるで「臨時コーチ」のように、現役投手にスライダーを伝授している。広島・九里 亜蓮投手(岡山理大附出身)、巨人・戸郷 翔征投手(聖心ウルスラ出身)に、現役時代に自らの得意球だった「伝家の宝刀」スライダーを直接伝授した。昨シーズンに最多勝を手にした九里には新たな球種への取り組みとなり、戸郷にすれば2年連続で2ケタに届かなかった悔しさを晴らすために心強い新球となるに違いない。松坂はコーチでもないが、惜しみなく自分の経験を後輩の投手らに伝えていた。
先日、学生野球資格回復認定者が発表され、元日本ハムの斎藤 佑樹氏と並んで、松坂氏も名前を連ねた。近年は、イチロー氏(マリナーズ会長付き特別補佐兼インストラクター)による球児への野球教室が話題となっているが、同じMLB出身の世界一経験投手、松坂氏による指導となれば、人気も高くなるだろう。何よりも「教える」ことに対して、これほどまでに楽しそうにする松坂を見るのは初めてだった。
ソフトバンク時代に1度だけ、直接取材をする機会があった。リハビリ中で、ファームで登板に向けてカウントダウンに入ったときに手応えを聞いたことを思い出した。思いつめたように下を向きながら、淡々と言葉を発していた。不安を抱えながらも必死に這い上がろうとしていたのだろう。痛々しかったあのころとは180度変わった「元球児」でもある松坂氏。自らの経験を、惜しみなく高校球児に伝えてくれる日は近いと思う。
(文・浦田由紀夫)