198安打を誇ったソフトバンクの「打撃職人」がバットを置いた
長谷川 勇也外野手(酒田南ー専修大出身)
職人がまた1人、球界を去る。ソフトバンク長谷川勇也外野手(酒田南ー専修大出身)が今季限りでの引退を発表した。「打撃の職人」として、ファンからも選手からも愛された好打者。ペイペイドームで代打を告げられると、「必殺仕事人」のテーマ曲とともに、バットの先を足でつんつんとたたきながら打席へ向かう。「男は黙って仕事する」。そんな雰囲気を醸し出す、プロ中のプロのような選手だ。
かと思いきや、内野へ微妙なゴロが転がると、一塁へヘッドスライディングする。「黙って」というイメージとはかけ離れた「ガッツ」あふれる闘志をむき出しにするときがあった。時にはユニフォームが破れるほど、激しく滑り込んだ時もあった。昨年は、新型コロナウイルスにも感染。野球ができない悔しさと、復帰した時の野球ができる喜びを痛感していた。12月の誕生日がきて37歳になる。プロ15年目。お疲れさまでしたと言いたい。
長谷川がソフトバンク5位で指名されたのが2006年のドラフト。高校生ドラフトで駒大苫小牧の田中将大投手(現楽天)が4球団の1位指名競合の末、楽天が指名した年だ。長谷川の同期として大学卒で入団した選手のなかには、こんな選手がいた。
楽天・岸孝之投手(名取北ー東北学院大)=西武希望枠
ヤクルト・嶋基宏捕手(中京大中京ー国学院大)=楽天3位
中日・浅尾拓也二軍投手コーチ(常滑北ー日本福祉大)=中日3位
ロッテ・大隣憲司二軍投手コーチ(京都学園ー近畿大)=ソフトバンク希望枠
現役もいれば、コーチになっている選手もいる。「職人」と呼ばれた長谷川も、指導者となって新たな「職人」を育ててほしい。
オフでも毎日、ペイペイドームに足を運び、トレーニングを欠かさなかった。1月上旬、福岡県筑後市のファーム施設が「仕事はじめ」としてスタートする日、ほとんどの選手がフィジカルトレーニングをするなか、投手の投げる球で普通に打撃練習をしていた。誰よりも練習するベテランだった。練習量の多さでは評判のソフトバンク選手のなかでも、特別目を引いていた。
通算1232試合 3849打数 1108安打 76本塁打 434打点 打率.288。
2013年は198安打、打率.341を放ち、最多安打、首位打者のタイトルも獲得した。シーズン198安打は、ソフトバンク球団では最多で、パ・リーグとしても西武・秋山216安打(15年)、オリックス・イチロー210安打(94年)、ロッテ西岡206安打(10年)に続く歴代4位の記録(セ・パ両リーグでは8位)。
ホークスが誇る「ヒットマン」の記録を破る選手がホークスから出てくるのは、いつの日だろうか。
(記事=浦田 由紀夫)