優勝請負人・福井章吾の日本一を感じた「声」
大学でも主将として日本一に牽引した慶應大・福井章吾(大阪桐蔭)
慶應大の福井章吾は大学でも「日本一の主将」となった。高校時代は名門・大阪桐蔭で2017年の選抜で優勝。大学ラストシーズンで主将となった今季は34年ぶりとなる全日本大学野球選手権優勝を果たした。優勝後のインタビューで「いつもの試合と同じように臨みました」と語っていたようにリーグ戦、今大会の準決勝までと変わらない動きをその決勝戦でも見せた。
攻撃中は毎回のようにブルペンへ足を運び、救援陣、控え捕手とコミュニケーションをとる。そして内野ゴロのカバーリングは一塁側カメラマン席に飛び込んでくる勢いの全力疾走。そのほかにも目に見えるプレーだけでなく、主将としての存在感も光った。
その存在感を大きく感じさせたのは福井の「声」だ。次に想定できるプレーの確認は、ジェスチャー、リアクションをつけ相互的なコミュニケーションで行われる。また「鼓舞」という言葉に集約されるような流れを渡さない声かけが際立った。鼓舞というとミスや打たれた直後など、マイナスをゼロやプラスにするための振る舞いがイメージされるが、福井はプラスやゼロをマイナスにしない声かけが実践できていた。嫌な雰囲気を誰よりも早く察知し、その雰囲気がチーム全体に行き届く前に断ち切る。結果的に平凡に抑えているように見えた場面でも、そこには必ず福井の力は働いていた。
そのセンスにはやはり、これまでの福井の野球人生が凝縮されているのだろう。決して一朝一夕ではものにすることはできない技量が、この決勝戦でも「いつもの試合と同じように」発揮された。
大阪桐蔭から初めて慶應大野球部に進んだ福井。主将として34年ぶりの快挙へ牽引し、間違いなく新しい風を吹かせている。