前十字靱帯損傷とは
膝が内側にひねられた時に前十字靱帯が伸ばされ、さらにひねられることで損傷する
膝関節は体を支える荷重関節(体重のかかる関節)であり、スポーツ選手はもちろんのこと、日常生活でも傷めやすい関節の一つです。スポーツの場面においては、突然のアクシデントによって膝のクッション的な役割を果たしている半月板や、骨と骨をつなぐ靱帯などを損傷するケースがあり、場合によっては長期離脱を余儀なくされることがあります。野球は接触プレーの少ないノンコンタクト(非接触)スポーツに分類されますが、アクシデントによる膝のスポーツ外傷は非接触の場面でも見られることがあります。その代表的なものに膝の前十字(ぜんじゅうじ)靱帯損傷が挙げられます。
膝関節には関節の外側についている内側側副(ないそくそくふく)靱帯、外側側副(がいそくそくふく)靱帯だけではなく、膝関節の内部にも靱帯があります。前十字靱帯は太ももにある大腿骨とすねの骨である脛骨(けいこつ)をつなぎ、脛骨が前方に移動しないように関節内部から支えています。この靱帯が何らかの原因で部分的に損傷したり、完全に切れてしまったりすると、脛骨が前方に引き出されて膝関節がグラグラして安定せず、普段どおりのプレーをすることがむずかしくなります。
野球の場面ではジャンプをした後の着地で足を滑らせたり、スパイクが芝などに引っかかったりして膝が内側にひねられ(逆「く」の字型)、そこからさらに自体重がかかったり、転倒して膝に大きなストレスがかかったりすると前十字靱帯が損傷します。内野守備での切り返しなどで受傷することもあり、不意を突かれた場面でも起こることがあります。そして前十字靱帯を損傷すると、一緒に内側側副靱帯や内側の半月板も一緒に傷んでしまうことが多く、非常に厄介なスポーツ外傷の一つと言えるでしょう。
前十字靱帯を損傷すると痛みとともにすぐに関節が腫れてきます。自力歩行はむずかしく、担架でグランド外に運ぶか、誰かの手を借りて移動することになります。応急処置として膝関節の腫れを抑えるためにアイシングを行いながらすぐに医療機関を受診するようにしましょう。前十字靱帯損傷は基本的に手術で治癒を目指す方法が勧められます。靱帯が切れたり、ゆるんだりした状態でのプレーは膝関節の不安定感を増すだけではなく、将来にわたって日常生活での動作不安や半月板損傷などの二次的なケガも考えられるからです。受診した医師と相談しながら手術・リハビリテーションなどを進めていくようにしましょう。
文:西村 典子
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