Interview

名将も太鼓判を押す二刀流・田村俊介(愛工大名電)が意識する関戸、森木の存在【後編】

2021.01.18

 3年前の2018年の夏、野球界に衝撃を与えた森木 大智を擁した高知中のライバルだった明徳義塾中。当時は大阪桐蔭の右のエース・関戸 康介がいたが、ともにチームを牽引した男が今回のインタビュー相手だ。

 その名は田村 俊介。愛知の名門・愛工大名電へ進学し、投手としては最速145キロ、打者としては通算25本塁打という成績を残す。まさにセンスの塊といってもいい田村は、いかにして現在に至ったのか。

 後編では打撃論や1年生の夏以降の歩みについて迫っていく。

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関戸康介とともに騒がれた二刀流・田村俊介はなぜ明徳義塾中から愛工大名電へ進んだのか【前編】

投打で牽引するも悔しい敗戦が続く

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ティーバッティングに打ち込む田村 俊介(愛工大名電)

 投手として活躍し始めた田村は夏もベンチ入りする。「大きな経験でした」と1年生の夏から登板したことを振り返る。
 「夏の大会は雰囲気が違いました。ただ先輩の最後の大会でしたので、『終わらせられない』と思うと緊張しました」

 なかでも3回戦・中部大一との試合は、「自分が投げて失点してしまいましたが、先輩にカバーしてもらえましたので覚えています」と語るが、続く4回戦・には2対4で敗戦。田村は5番手で登板したが、チームを勝利に導くことはできなかった。

 その後、秋季大会では県大会準優勝。東海大会ではベスト8まで勝ち進んだが選抜の出場権まで掴むことはできなかった。その悔しさをもって冬場のトレーニングを積んできたが、緊急事態宣言で練習自粛を余儀なくされた。

 愛工大名電でも寮を一時閉鎖しなければならず、田村は実家に戻らざるを得なかった。
 「下半身のトレーニングとして、走り込みなどを重点的に取り組むようにしていました。また、自宅にネットを作ってティーバッティングも出来るようにして、振り込むようにしました」

 結果として現状維持できたという田村は、2度目の夏も主力メンバーとして活躍。3年生のために活躍し続けるが、5回戦・至学館で延長戦の末にサヨナラホームランを許す。「調子は良かったのですが、最後にホームランを許して申し訳なかったです」と悔しさもにじませながら振り返った。

[page_break:ライバルたちの刺激を受けて世代屈指の選手へ]

ライバルたちの刺激を受けて世代屈指の選手へ

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田村俊介

 新チームになると、田村は主将に就任。投打としてだけではなく、主将としてもチームを牽引する立場となった。最後の1年間、重責を背負った田村の中で、課題は明確だった。
 「ピッチングでは球速が気になっていたので、そこを伸ばすこと。打者としては長打力を伸ばしてホームランを打てるようにすることを課題にしました」

 すると新チームから田村はホームランを量産するようになるが、その大きな要因はテイクバックにあった。
 「バットを走らせるためにも大きく取るようになりました。ただ、背中に入れてしまうとインコースが打てませんので、真後ろに引く感じにしました」

 インコースが詰まるリスクがあったが、「ティーバッティングで克服しました」と新フォームをたしかに身につけていく田村。ただ変わらないこともある。ボールをいかに線で捉えるかということだ。

 「僕の中では伸びる打球が理想なので、ボールをいかにバットに乗せてあげられるか。それをイメージしてスイングしています。だからバットをボールの軌道に入れる必要があるので、線で捉えることをイメージしてあげることで、ボールとバットの設置時間を長くしようとしています」

 他にもインサイドアウトで広角に打ち返すなどもポイントとしているそうだが、野球を始めた時から線で捉えることを意識してきた田村。そのイメージが高校通算25本塁打の技術を支え続けている。

 迎えた秋季大会は、県大会まで進んだものの2回戦で敗退。「チームのミスをカバーできずに終わってしまいました」と一言。短い言葉にも悔しさを感じさせた。

 これで甲子園への道は夏の大会のみとなった。全国の舞台に行くため、田村が乗り越えるべき課題は明確なっている。
 「ピッチングでは150キロ、バッティングでは全体としてレベルアップしないといけないと思います」

 そして最後に、盟友である関戸康介やライバル・森木大智について聞くと、こんな答えが出てきた。
 「中学の時は自分よりも凄い選手だと思っていたので、少しでも追いつければと思っていました。ただ今は投手としてタイプが違うと思うのであまり意識はしていませんが、ネットで記事を見るたびに『もっと頑張らないといけない』と刺激はもらっています」

 指導する倉野監督は「今までプロに行った選手たちと同じで、あまり言うことはないです」と田村を評価。名将が歴代のOBと比較しても遜色ないレベルであっても、甲子園には届いていない。ラストイヤーで全国の舞台に行けば、田村俊介の名は一気に広がる。

 どんな活躍を最後にするのか。田村俊介の今後に注目したい。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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