Column

監督が動く!代替大会開催に向けて現場が生み出した「石川モデル」とは?

2020.05.27

高校野球における「石川モデル」のはじまり

監督が動く!代替大会開催に向けて現場が生み出した「石川モデル」とは? | 高校野球ドットコム
金沢桜丘の選手たち

 「この状況、9回2アウトだと、思ってやってます」
 5月20日、夏の甲子園大会・地方大会の中止の発表をうけて、各都道府県高野連に判断を託された地方大会に代わる独自大会の開催可否。

 今、この独自大会の「開催」に向けて思案し、動いているのは、各都道府県の高野連だけではない。3年間、球児たちとグラウンドで汗水流してきた各高校の監督自身だ。今、現場の監督たちのアイディアによって、各地の連盟が開催に向けて動き始めている地区も少なくはない。

 先の言葉は、石川県の監督会代表を務める、金沢桜丘高校野球部監督・井村茂雄さんのものだ。井村さんも、独自の地方大会開催に向けて戦っている監督の一人だ。

 石川県といえば、甲子園中止発表をうけた翌日。
 独自の地方大会開催に向けた感染防止対策の一つとして、加盟校全ての関係者たちが着用するためのスポーツマスク2000枚の購入を石川県高野連が明らかにした。

 このアイディアを高野連に提案したのが、井村さんだった。発案のヒントは、長野県・小諸商業高校野球部の竹峰慎二監督が、5月半ばに甲子園の開催を願って自作した動画をみたことからだった。もともと、若手指導者を養成する日本高野連主催の「甲子園塾」1期生の同志だった二人。

監督が動く!代替大会開催に向けて現場が生み出した「石川モデル」とは? | 高校野球ドットコム

小諸商業野球部・竹峰監督が制作した動画より

 竹峰監督が制作した動画の中では、実際に野球部顧問たちが、ネックウォーマー型の通気性の良いスポーツマスクを着用し、自主練習をしている。スポーツマスクの着用によって、大会開催が実現できるのではという願いが込められた動画から、井村さんはヒントをもらった。すぐに、知り合いのスポーツ店に電話をかけた。そこで、マスク2000枚の制作確保を確認。そのまま、石川県高野連に提案を持ち掛け、賛同を得た。

 そのスピード感ある動きの背景には、佐々木渉さんが理事長を務める石川県高野連と、4年前に発足したばかりの石川県の監督会との風通しの良い組織体制もあるが、それが今回の非常事態において、県内の球児たちを救っていることは間違いない。

 ただ、それだけではなく、他の地区も真似できるようなロールモデルの提唱が、今回着目すべきポイントだ。

 井村さんは、2000枚マスク購入の提案だけではなく、大阪府が新型コロナの感染拡大防止に向け、吉村洋文知事が全国に先駆けて掲げた「大阪モデル」にならって、高校野球における「石川モデル」を作成し、県の高野連に提案した。

[page_break:9回2アウトからの大逆転へ]

高校野球における「石川モデル」のはじまり

監督が動く!代替大会開催に向けて現場が生み出した「石川モデル」とは? | 高校野球ドットコム

石川モデルを考案した金沢桜丘野球部・井村監督

 下記の6項目について具体的な感染予防対策を明示し、プロモーション動画も制作。
1.球場の密を防ぐ
2.移動のリスク
3.熱中症のリスク
4.体力の低下や実戦不足は試合でのケガを招く恐れ
5.役員の人員確保、感染防止
6.部員が教育を受ける権利の妨げ

 「大阪の吉村知事が大阪モデルを提示した時のように、スピード感と見える化を大事にしました。感染予防対策を施した上で、私たちは独自大会に向けて検討を開始しますと宣言して、これを『石川モデル』とし、この実現に向けて高野連と共に前に向かって歩き始めました」

 また、23日には石川モデル・第二案として、感染予防対策をしながら、独自大会開催に向けてどう試合を行っていくかのさらなる具体案を佐々木理事長と監督の同志と話し合い、高野連の役員会に提案する準備を行った。もちろん、現時点ではあくまで井村さんの案ではあるため、詳細はまだ発表はできないものの、開催に向けて、3つのパターンを検討している。

A案 1週間開幕を遅らせての通常に近い形での開催
B案 1週間開幕を遅らせての土日祝日のみを使っての開催
C案 開幕は予定通りだが、土日祝のみで地区予選を行い、県大会を行う。

 ただ、現実的には、学業との両立という課題も重くのしかかる。
 夏休みがなくなったことにより、大会は土日だけの開催と考えるとA案は難しくなるだろう。また、石川県の場合は、最北部の能登地区から、金沢地区まで車での移動でも3時間はかかるため、長時間のバス移動のリスクも考慮すると、B案ではなく、C案も検討しなくてはいけない。

 とはいえ、一番、球児たちの心情を理解している県の監督たちの思いは、やはり当初の地方大会と同じ形式をとるA案であることは間違いない。

 石川県高野連は、石川モデル・第二案の提案も判断材料の一つとし、今月末に臨時役員会を開催し、独自の県大会開催に向けて協議する予定だ。

 「私たちが出来ることは、どんな状況でも耐えて、開催が実現できるようにいろんな案を出していくことです。
 ただ、やはり、独自大会の開催はそんなに簡単なものではありません。石川県も分散登校が始まりましたが、部活動の再開目処も立っていません。そんな中で、今、動きながらも、私の中では常に9回2アウトだと思っています。色々とアイディア出しをして、連盟事務局に提案していっても、どこかでつまずいた時点で試合終了。いつ、独自大会が出来なくなってもおかしくはないんです。だけど、野球は9回2アウトから逆転できるスポーツです。まだ石川県も独自大会が正式に決定したわけではないので、最後まであきらめず、大逆転を起こしてやろうと思ってやっています」

 高校3年生の球児たちの最後の夏。
 そして、3年間ともにした仲間たちと野球ができる夢。
 そのための大会開催に向けて、連盟の方々も、そして現場の監督たちも今、本気で動いている。

 「絶対に、絶対に、開催する」
 20日の甲子園と地方大会中止の発表をうけて以降、各地の監督たちの動きが慌ただしくなった。電話口の向こうから聞こえる監督たちの言葉から、開催実現に向けての熱い思いが伝わってくる。

 すべては、教え子たちのためだ。

 今週末にかけて、独自の地方大会の開催に関する発表を行う地区が増える見込みだ。その裏には、誰よりも球児たちに寄り添い、本気で考え、本気で動いてきた「監督たち」の存在があることも忘れてはならない。

(取材=安田 未由

【お知らせ】
今回ご紹介した石川モデルの内容が知りたい方は編集部までお問い合わせください。
その際に、学校名・お名前・電話番号もご記入いただけますと幸いです。
問い合わせ先⇒info@hb-nippon.com

※お問い合わせは、連盟又は学校関係者の方に限ります。
所属先の確認が取れない場合は、お答えできない場合がございます。
どうぞご了承ください。

関連記事
各都道府県の学校再開、夏の代替大会開幕予定一覧リスト
徳島県高野連・球児に寄り添い独自の夏県大会実現へ
【緊急企画】母校や応援している高校の球児たちに、あなたのエールを届けよう!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.02.21

前川右京&田村俊介「高卒3年目スラッガーコンビ」は金本&前田の伝説打者たちの再来か!?

2024.02.21

準硬式の球春到来を告げる関東大会!連覇狙う帝京大、名門・中央大が軸 シード校に喰ってかかる4校も注目<田中裕毅の”準硬ドットコム”第8回>

2024.02.21

センバツ出場32校のユニホームを調べてみた! 漢字とローマ字どっちが多い?ワセダ文字は5校も! レッドソックス風も登場!

2024.02.21

泉口祐汰(巨人)は”大阪桐蔭のジンクス”を破ることができるか!? キャンプ高評価も、社会人→プロ入りした名門出身者を待つ「レギュラーの壁」

2024.02.21

ヤクルト1位・西舘を輩出した専修大が卒業生の進路を発表!指名漏れ外野手はヤマハ、神宮大会優勝経験のアンダースローは軟式転向!

2024.02.20

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.02.16

【関西地区高校・大学監督人事】天理の名将・中村良二氏が大阪学院大に、後任は天理大6連覇指揮官! 近大、関大、立命大なども監督交代!

2024.02.17

センバツ出場・豊川の練習環境がスゴい!公営球場並のグラウンド、雨天練習場、寮も完備! 注目スラッガー・モイセエフ擁して春に旋風を巻き起こす!

2024.02.17

名門・日立製作所が新人5人を発表!慶大のトップバッター、東海大の主将などが実力派が加入!

2024.02.19

国士舘大卒業生進路判明!大阪桐蔭出身内野手がバイタルネット、甲子園準優勝外野手は徳島インディゴソックスへ!

2024.02.20

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.01.26

東海地区で起きた逆転現象!なぜ事前予想を覆して宇治山田商が2枠目、愛工大名電は3枠目になったのか?

2024.02.02

【大学野球卒業生進路一覧】 2023年の大学野球を盛り上げた4年生たちの進路は?

2024.02.16

【関西地区高校・大学監督人事】天理の名将・中村良二氏が大阪学院大に、後任は天理大6連覇指揮官! 近大、関大、立命大なども監督交代!

2024.01.28

‘24年センバツ出場監督勝利数ランキング! あと1勝で「歴代トップ」大阪桐蔭・西谷監督、チームを変えて甲子園に帰ってきた名将2人、伝説のチームを率いた指揮官たちがそろって出場!