休校期間も、通常授業日と同じ感覚を持つ意識を伝えている安城(愛知)野球部
試合中の安城ナイン ※写真は2019年11月から
「生徒と会えませんから、(野球に関しては)何もやれることがありません。今選手たちには、個人個人での練習メニューそのものは各自に任せてあります」
そう答えてくれたのは、近年、西三河地区で躍進著しい安城の加藤友嗣監督である。前任の岩津から異動して4年目。岩津時代には春季県大会でベスト4にまで導いたことで一躍注目された。
加藤監督自身は、「公立校だから、ずば抜けた素質の選手が来ているわけではないので、いろいろ仕掛けながら、相手をかく乱していく野球」というスタイルを目指している。それが、安城でもかなり浸透してきた。また、そんな野球スタイルを求めて、徐々に地元からも思いの強い野球少年が目指してきてくれるようになってきたという。
「今年入学してきた1年生の中には、中学時代にクラブチームで全国大会を経験しているような選手も来てくれています。まだ見ていないので何とも言えないんですけれども、そういう実績のある選手ですから、素質はあるし意識は高いと思います。それに、そんな下級生が入ってきて、一緒に練習していけば、上級生にも刺激になっていきます。それがチーム全体としての底上げにもなっていきますから」
そんな期待も膨らませながら迎えるはずの新学期だった。ところが、何も出来ないまま1カ月が過ぎてこうとしている。その歯がゆさ、虚しさはいずこも同じであろうが、期待が高かった分、もどかしさは一入であろう。
そんな安城の今はと言うと、たまに学年別に登校日があり、その際に学年ごとに短い時間で簡単な意識確認のためのミーティングを行っている程度だという。
「それは、月並みですけれども、『(コロナなんかに)負けないで頑張ろう』ということしか言っていません。3年生には、『大会はあるというつもりで準備はしていこう』ということは伝えています」
そして、休校の期間の時間の使い方としては、可能な限り通常の学校生活と同じようにしていってリズムを崩さないようにということを指示している。つまり、午前中から3時頃までは、授業があるのと同じようにメリハリをつけながら自習や手伝いなどを行い、トレーニングとしては、日々の部活動の開始とほぼ同じ時間くらいから始めていくという形で生活のリズムを作っていくようにと奨めている。
一方で指導者としては、夏の大会中止という最悪の事態になってしまった場合にどのような形で選手たちにどのようにアプローチしていくのがいいのかということも常に考えているという。
「他の部活動の場合ですと、バレーやバスケやラグビーのように冬にもう一つ3年生とし最後の大会のあるところもあるのでしょうが、インターハイで終わりという生徒も多いですからね。それに、生徒としては3年生は受験ということもあります。そのことを考えると、救済措置として試合をやろうということでも、あまり引っ張りすぎても、今度はそっちに影響してしまいます。ただ、ウチにも出来るのであれば、野球で上(大学)に行きたいかと考えている生徒もいます。そういう子たちにとっては、腕試しをする場、披露する場というのも与えてあげないといけませんから」
野球部の顧問として監督としての立場と、教員として生徒の進路も含めて、その先を考えていかなくてはいけないという両方の立場の中で、加藤監督自身も悩むところだというのも本音のようだ。
それでも、自分の気持ちがしぼんでいてはいけないという意識は強く持っている。
「大会をやれれば、今年は全部ノーシードなんだから…。ウチなんかには逆にチャンスになるんだから、そのつもりで行こう」
機会あるごとに選手たちには、そんな言葉も伝えているという。
記事:手束 仁
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