「自分のできることに集中する」規律を重んじるカリビアンスラッガーのルーツ ネフタリ・ソト(横浜DeNAベイスターズ)
2018年6月、彗星のごとく現れたカリビアンが、ホームランを連発。瞬く間にキング争いでトップに立つと、その勢いはシーズン終了まで衰えず、来日1年目にしてホームラン王のタイトルを獲得。
その男の名は、ネフタリ・ソト。今季も順調にホームランを量産しているソト選手。前編ではそのバッティングのルーツに迫っていった。後編ではメンタル面やプエルトリコの野球事情。そして高校球児へのメッセージをもらった。
彗星のごとく現れたカリビアンスラッガーのルーツ ネフタリ・ソト(横浜DeNAベイスターズ)
自分のできる以上のことを求めない
ソト選手(横浜DeNAベイスターズ)
今年はここまで92打点(9/8時点)と、打点でもトップを走るソト。2位の村上宗隆(ヤクルト)から5位の坂本勇人(巨人)まで僅差での争いが続くが、打点王獲得も視野に入れる。得点圏打率も.321とハイアベレージを残すソトだが、チャンスでの心構えはどんなものなのだろうか。
「得点圏で打席がまわってきたときは、いつも以上により強い気持ちでランナーを返すバッティングを心掛けています。いつも以上に集中して打席に入ることが大事ですし、いつも以上に積極的に打席に入ること。自分が狙っている球がきたら打ち損じないことです。
ミスショットをしないためには、やはり練習での取り組みです。自分で試合を想定した練習をして、自信をつけることです。そこから、自分のできることが出てくると思うので。
例えば、ランナー三塁とか、二、三塁のシチュエーションのときは長打を狙いません。ヒット1本で1点、2点入るので。自分のできること以上のことを求めずに、練習でやってきたことを試合で出す。あとは自分に自信をもつことです。」
練習のときから試合での状況を想定し、その状況ごとの打撃に取り組み、試合ではその成果を出すことに集中するのだ。ともすれば結果ばかりを追い求め、本番で力が入ってしまいがちだが、目の前のタスクにフォーカス(集中)するということは、野球に限らず全ての物事に共通して言えそうだ。
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笑顔を見せるソト選手(横浜DeNAベイスターズ)
甲子園期間中、横浜DeNAベイスターズのベンチ裏では、連日中継が流れていた。プロ野球選手も母校の勝敗に盛り上がるという話をよく聞くが、プエルトリコ出身のソトも、高校野球には興味がある様子だ。
「日本の高校野球はレベルが高いですし、競争力が高い印象です。雰囲気も、熱気があって凄い。また、選手たちの規律がしっかりしていますね。
プエルトリコでは日本のような高校野球はなくて、学校に野球部がありません。メジャーリーグのアカデミーだったり、地域のクラブチームだったりに入り、その中でリーグ戦をやるという感じです。
日本の高校球児たちには練習だけでなく、食事・栄養管理を大切にして欲しいですね。食べることでエネルギーになりますし、身体も回復します。もちろん成長にもつながりますから、大事なことです。
僕はとにかくたくさん食べることを心掛けていました(笑)何でも食べていましたね。当時はすごく細かったので、(量を)食べなければいけませんでした。」
カリビアンの選手と言うと、陽気な性格で、チームのムードメーカー的な存在となり、一度乗ると止まらないというようなイメージを持つだろう。一方で、時に気分屋で、その身体能力と才能で野球をやっているように見えてしまうこともあるが、決してそうではなく、明確な課題と目的意識を持って、それに向かって努力を重ねていることが改めて伝わってきた。
また、日本の野球が重んじる「規範・規律」を好意的にとらえている。
「球児のみなさんには、毎日の練習にしっかり取り組んでもらいたいです。大会が近づくにつれて、直前の練習も大事になりますね。あとは、学校ごとの規範や規律を守ることで、精神的にも強くなれると思います。あとは試合で、自分自身のベストを尽くしてください。」
2年連続のホームラン王に、打点王との二冠獲得、そして何よりチームの21年ぶりの優勝に向けて、規律を重んじるカリビアンはバットを振り続ける。
(記事=林龍也)