Interview

通算75本塁打の礎を作った中学時代と高校1年時の打撃改造 山下航汰(健大高崎)【前編】

2018.09.20

 現役高校生最多の通算75本塁打を放っている山下航汰健大高崎)。いかにしてここまでのスラッガーになったのか。それをひも解くと、中学時代~高校1年時の取り組みが実を結んでいることが分かった。そんな山下のストーリーを振り返っていこう。

スラッガー・山下を生んだ年末年始の素振り1000本

通算75本塁打の礎を作った中学時代と高校1年時の打撃改造 山下航汰(健大高崎)【前編】 | 高校野球ドットコム
鋭いスイングをする山下航汰

 山下が野球を始めたのは、小学校3年生から。当時から体つきもがっしりしていたこともあって捕手を任されており、野球を始めた時から左打ちだった。当時のチームは小所帯。あまり勝った記憶もない。山下によると年間7勝しかしていないチームだった。

 「小学校では野球をやる楽しさを十分に味わったので、逆に勝つ楽しさを知りたいと思って、強いチームに進もうと思いました。」

 柏原市在住だった山下は強いチームを求め、中学では羽曳野ボーイズへ入団を決めた。同期のメンバーには、太田 椋天理) 大石 晨慈近大附)とそうそうたるメンバーが揃っていた。

 「羽曳野ボーイズに入る選手は、本当にレベルが高くて、周辺地域のオールスターの集まりでした。同期のレベルの高さに驚かされました。」
 その中で、山下は持ち味の打撃を武器に頭角を現す。また、羽曳野ボーイズの教えもぴたりとはまった。

 「羽曳野ボーイズの指導方針は、まずトップを大きく取る。天理の太田を見ればわかると思います。その方法を教えられて、僕の場合、はまりました。あとはフルスイングすること。当てに行く打撃はいらんといわれました。」

 最上級生になると4番を任されるようになった山下だが、ここでスラッガーへ覚醒するきっかけとなる出来事があった。それは2年冬の正月休みのこと。山下は監督に呼ばれ、こう発破をかけられた。
 「ジャイアンツカップで優勝したければ、4番打者であるお前が、正月休みの間に1日1000本の素振りをしてみろといわれて。それで素振りをずっとやってきました。」

 こうした練習の積み重ねが実を結び、3年生になってからは20本の本塁打を放ち、4番打者として活躍。さらにジャイアンツカップ優勝も経験した。山下は初めて東京ドームに踏み入れた時、足が震えたという。

 「本当に緊張しました。打席に立った瞬間、足が震えました。[stadium]甲子園[/stadium]は子供の時から見に行っているので、それほど緊張しなかったんですけど、あの時は本当に緊張しました。優勝した瞬間は信じられない気持ちでした。地区大会は絶対に勝ち抜くつもりだったのですが、全国制覇はとても…」

 中学で日本一を経験した山下は健大高崎への進学を決意する。

 「羽曳野では、打って打ちまくる野球をやってきました。頭を使って走塁をする健大高崎の野球はのちの野球人生に役に立つと思いました。」

 ここまでの話を聞くと、山下は今までの自分にはないものを求める野球人だということが分かる。小学生時代に野球の楽しさを知って、勝つ楽しさを知るために羽曳野ボーイズを選ぶ。そこで中学日本一と打撃のイロハを学び、そして高校では今まで取り組んでいなかった走塁を鍛える健大高崎に進むことを選んだ。そのことについて触れると山下は「やっぱり野球が好きなんで、研究したいことがいっぱいあるんですよね。」

 やはり野球の虫である。

 そして山下は中学3年生の時にある目標を立てた。テレビ番組の特集で、「高校通算60本塁打を打ちたい」と語った。高い目標を言ってしまったと思ったが、言ったからにはその目標を達成しないといけない。それぐらい打てる打者になりたいと意気込んで健大高崎に飛び込んだ。

[page_break高校レベルに対応できるよう打撃フォームを改造]

高校レベルに対応できるよう打撃フォームを改造

通算75本塁打の礎を作った中学時代と高校1年時の打撃改造 山下航汰(健大高崎)【前編】 | 高校野球ドットコム
インタビューに答える山下 航汰

 健大高崎では打撃、走塁、守備の全てを追求した日々を送った。彼の取り組みが良く分かるよう、ここからは一問一答形式で振り返っていく。

 ―― 健大高崎に入学して、打撃はすぐに結果が残せたのでしょうか。

山下航汰(以下、山下):  いえ、まったくです。1年生から4番を打たせていただいたのですが、高校の投手のレベルは本当に高くて、ストレートのスピード、伸びのある球もあって、変化球のキレにも苦しんで、高校1年の時は1本しかホームランを打てていないんです。中学では20本打っていたので、なんで打てないんだろうと思いましたね。

 ―― そこから山下選手はどう打撃の改善に取り組んだのでしょうか?

山下: まずスイング軌道がドアスイングになっていたので、軸足(左足)の膝が出ていたのを伸ばして、軸で回転できるようにしました。自分の場合、重心が最初から低かったです。そうすると膝が前に出るじゃないですか。打つとき、軸足が外回りしてしまう動きになるので、(膝を伸ばして)立つことで軸がまっすぐになりました。そうするときれいに軸で回転できるんです。このフォームに代えて、選抜でも2本塁打、夏の大会でも5本塁打を打てて、トータルで47本出たんです。

 ―― それはすごいですね!2本の満塁本塁打を打った打席を振り返ってもらえばと思います。

山下: 小学校の時、甲子園によくいっていて、素振りをするときは甲子園の中で打つイメージをしながらやっていましたので、本当に打てたのは夢みたいでした。1本目(対札幌第一戦)はびっくりしすぎていて、周りの観客の歓声が聞こえなかったのですが、2本目(対福井工大福井戦)は冷静になっていて、ゆっくりと回って歓声を聞くことができましたね。

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選抜記録となる2本目の満塁本塁打を打った山下航汰(健大高崎) 試合は福井工大福井戦

 ―― あの打撃は山下選手にとって自信になりましたか。

山下: 自信になりましたね。技術の面ではまだ完成していなくて、まだまっすぐには差し込まれていましたし、インコースには詰まっていました。2本の満塁本塁打は変化球を打ったものだったので、速球を打つことに課題があったんです。でも甲子園で打てて記事にしてもらって自分としては自信になりましたので、練習試合からホームランを量産できました。

 ―― ストレートは打てるようになっていたのですか?

山下: 夏の群馬大会の5本目の本塁打はストレートでしたので、ストレートはだんだん打てるようになっていたと思います。でも、140キロを超えるとまだまだで、群馬大会決勝では皆川 喬涼さん(現・中央大)の140キロを超えるストレートを全く打てずに終わり、まだまだだなと思いました。

 前編まではここまで。後編ではコーチと二人三脚で築き上げたバッティングフォーム。そしてプロへの意気込みを最後に語ってもらいました。お楽しみに!

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取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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