食欲を刺激する炭酸水
食欲を刺激し、食べる量を増やすためにも上手く活用したい炭酸水。
アスリートの食生活として栄養バランスに大きな偏りが見られてしまうと、疲労回復や体力アップといった点からも問題になることが多くなってきます。選手の中には炭酸飲料を飲まないようにしている、またはそうした指導を受けているところも少なくないでしょう。
炭酸飲料を大量に飲む習慣がついてしまうと、糖分の取り過ぎによって「ペットボトル症候群」と呼ばれる急性糖尿病を引き起こすことがあるからです。またここまで過度に炭酸飲料をとる状態ではなくても、糖分の取り過ぎや炭酸などによって膨満感を感じてしまうと、肝心の食事が食べられなくなり、筋肉の材料であるタンパク質や身体の調整機能を果たすビタミン・ミネラル分などが不足することが考えられます。
こうしたことから炭酸飲料はアスリートにとって長く敬遠される存在だったのですが、最近では無糖の炭酸水が気軽に手に入るようになり、その効果が注目されています。
炭酸水はペットボトル1本分(500ml)程度の量を一度に摂取すると、膨満感を感じて食欲が抑えられてしまいますが、コップ1〜2杯程度の量を食事前にとると、胃腸を刺激し自然と食事量が増えることが期待できます。身体づくりのために食べる量を増やしたいと考えるアスリートにとっては、適切なタイミングと適切な量を踏まえたうえで炭酸水を食事にも利用するとよいでしょう。
また炭酸水は疲労回復効果にもよい影響を及ぼすと言われています。炭酸水は二酸化炭素が水に溶けた状態なので、これを飲料として飲むことで小腸から吸収されて血液中の二酸化炭素濃度が上がります。血中の二酸化炭素濃度が高くなると、脳は体内の酸素が不足していると判断して、血管を広げて血流量を増やし、末端にまで酸素が行き渡るように働くため、全身の血行がよくなり、疲労物質の分解・代謝のサイクルがより早く進むようになります。
またケガをした部位についても損傷した組織に酸素や栄養素を送り届けることで、細胞の新陳代謝を促し、ケガをした組織のより早い回復にもつながります。
糖分を多く含む炭酸飲料(ジュース)は飲み過ぎに注意が必要ですが、炭酸水そのものの身体に及ぼす影響というのはアスリートにとっても非常に役立つものです。適切な量とタイミングを見ながら、上手に活用してみましょう。
文:西村 典子
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