Interview

市立須磨翔風高等学校 才木 浩人投手「スケールと修正能力の高さを兼ね備えた剛腕」【前編】

2016.10.20

 10月20日、阪神タイガースからドラフト3巡目指名された須磨翔風才木浩人。同球団の藤浪晋太郎投手を彷彿させる長身細身の投手らしい体躯から繰り出されるストレートは最速148キロ。甲子園出場こそ果たせなかったが、強豪ひしめく激戦区兵庫にて、公立校を牽引する存在感たっぷりのピッチングは多くの高校野球ファンを魅了した。

 そんなスケール感たっぷりの17歳に会うべく、兵庫県神戸市に位置する野球部グラウンドを訪ねたのはドラフト会議の数日前だった。

体はタテもヨコも発展途上

市立須磨翔風高等学校 才木 浩人投手「スケールと修正能力の高さを兼ね備えた剛腕」【前編】 | 高校野球ドットコム

才木 浩人投手(市立須磨翔風高等学校)

「こんにちは! お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」
人懐っこい笑顔を浮かべながら、バックネット裏の一室に現れた才木 浩人。伸びた髪の毛が夏の激闘の日々から経過した月日を実感させる。才木投手に話をうかがうのは昨年の6月以来、1年4か月ぶり。当時、線の細さを感じさせた体は随分と厚みを増していた。

「今、体重は何キロあるんですか?」
「79キロです。高校に入った時は70キロくらいだったので、そこから比べると増えましたが、もっと増やしていきたいですね」
「身長が187センチありますものね。でも身長も少し伸びてませんか? 見た感じ、187センチ以上ありそうな気がしてならないのですが」
「周りからはよく『おまえまたでかくなった!?』と言われます」
「やっぱり。まだまだ成長中」
「8月にジャストフィットでズボンを作ったんですけど、この間、久しぶりに履いたら丈が全然足りなくて…。太ももが太くなった影響もあるのかもしれないけど、『おれ、まだ成長してるわー』と思いましたね」

 ボディーはタテもヨコもまだまだ発展途上。その事実、ひとつとってもワクワクさせられる。

[page_break:プロを目指すと決めた高2の春]

プロを目指すと決めた高2の春

市立須磨翔風高等学校 才木 浩人投手「スケールと修正能力の高さを兼ね備えた剛腕」【前編】 | 高校野球ドットコム

才木 浩人投手(市立須磨翔風高等学校)

「高校野球…納得はしてないです」

昨年は2年生エースとして春ベスト4夏ベスト8の原動力となった才木。高校ラストイヤーでの甲子園出場の期待がかかったが、昨秋は県大会1回戦で姫路工業に敗退。今夏報徳学園に5失点を喫し、2回戦で姿を消した。

「報徳戦が終わった時も負けたという実感がなかなか湧いてこなくて。クールダウンのキャッチボールをしていたらチームメートが泣いている光景が視界に入って、そこでようやく『え?終わったん?高校野球終わってもうたん…?』となって。正直、もっとできたんじゃないかという思いが自分の中にはあります…」

 夏の敗戦から約2か月後の9月13日、才木はプロ志望届を提出した。
「2年の春にエースナンバーをいただいた時から高卒でプロを目指そうと、自分の中では決めていました。この学校で1番を背負えたら、プロを目指そうと入学時から決めていたんです。監督からもプロを目指せとずっと言っていただいたことも自信になりました」

 才木を3年間見守り続けた中尾 修監督に話をうかがったところ、「1年の夏頃にはプロを目指せと伝えました」と返ってきた。
「『おまえはピッチャーをやる要素がすべて整っている。おまえほど恵まれたやつがプロを目指さないのは野球の神様に失礼だ』みたいなことを言いました。とはいえ、ここまでの投手になるとは想像できませんでした。私の想像を超える成長曲線を彼は描きましたね」

[page_break:中2の秋にスタートした投手人生]

中2の秋にスタートした投手人生

市立須磨翔風高等学校 才木 浩人投手「スケールと修正能力の高さを兼ね備えた剛腕」【前編】 | 高校野球ドットコム

才木 浩人投手(市立須磨翔風高等学校)

 兵庫県神戸市にて生まれ育った才木 浩人が野球をはじめたのは小1の時。きっかけは3歳年上の兄が地元の軟式少年野球チーム「枝吉パワーズ」に入団したことだった。
「ぼく自身はサッカーチームに入りたかったのですが、兄弟でスポーツがわかれると親の動きがなにかとややこしいからということで、ぼくも野球チームに入団する流れになって。最初はさほど乗り気ではなかったのですが、やっているうちにどんどん野球にのめり込んでいきました」

 強肩を買われ、小学生時代の定位置はキャッチャー。軟式野球部に所属した王塚中では入部時にピッチャーを志望するも、中2の秋までは小学生時代同様、司令塔を務めた。
「元来、目立ちたがり屋なので中学ではピッチャーをやりたかったのですが、1年の時はキャッチャーができる部員がぼくしかいなかったんです」

 中2の時にキャッチャー出身の後輩が入部。加えてエースが故障したこともあり、秋頃より才木が主戦としてマウンドに上がるようになった。
「よく『球速いな』とは言われましたけど、中3の時点で最速122キロ程度だったと思います。チームも弱かったですし、自分が強豪高校でエースを張れるような投手だとはとても思えなかった。実際、どこの高校からも声はかかりませんでした」

 2014年春、兄が高校野球生活を送った公立の須磨翔風に入学。「絶対にこの学校のエースになる」との目標を設定し、野球部の門を叩いた。
才木の入学当時の印象を中尾監督は次のように語った。

「『ヒジと手首が柔らかい子だなぁ』というのがピッチャーとしての第一印象でした。ブルペンで投げてもボールはさほど来てなかったですし、スピードは120キロ程度だったと思いますけど、身長は既に184センチほどありましたし、手足も長い。少し時間はかかるかもしれないけど、ボールがしっかりと指にかかりだしたら面白いだろうなと思いましたね。いいピッチャーが揃った学年でしたし、入学当時の才木の位置づけは3,4番手でしたが、将来性は抜群だと感じました」

 中尾監督は入学間もない才木の投球フォームに関し、気になる点があった。
「スパイクの横幅で3足分ほど三塁側に踏み出す、極端なインステップだったんです。足が早く地面に着いてしまい、そこから無理やり体を捻って投げるようなフォームだった。そこで彼には『技巧派になりたいなら別に今のままでもいいけど、球に角度のある上手投げの本格派になりたいんだったら、真っすぐ踏み出すスクエアなステップになるよう、意識していった方がいいぞ』と伝えました。

 以後、彼のフォームを観察していたところ、少しずつスクエアに近づいていき、1年の秋には完全に真っすぐ踏み出せるフォームになっていた。『修正能力の高い選手だなぁ』と感心したものです」

 才木選手のインタビューは後編に続きます!!

(文=服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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