試合レポート

八戸学院光星vs市立尼崎

2016.08.09

市立尼崎・平林が気迫の力投!八戸学院光星・田城も負けじとフルスイングで4安打!

 33年ぶり出場の市立尼崎。その原動力となったエース・平林弘人は、135キロは計測していたが、コントロールも高めに浮いていて、スライダーの精度もそれほど高くなかった。その平林の姿を見ているので、まさか兵庫県内ではトップクラスの報徳学園打線を夏、1失点に抑えるとは想像できなかった。

 その平林は春に比べて劇的にコントロールが良くなったが、コントロールだけではなく、春にはなかった大きな武器を身に付けた。それがツーシームだ。そのツーシームを身に付けたというのが、大会前とのこと。練習試合で投げていても強豪校の打者たちを抑えたことで、このツーシームを使うようになった。

 それが長田報徳学園明石商を破る大きな武器となった。また八戸学院光星打線に対してもこのツーシームが良くきまっていた。

 右スリークォーターから投げ込む直球は、常時135キロ~141キロを計測。力を入れた時は、140キロをどんどん投げ込んでいた。そして自慢のツーシーム。球速は、130キロ後半を計測するなど、球速はほとんどストレートと変わらない。それが打者の手元で急激に食い込んでいく。右打者、左打者ともに苦しみ、5回まで無失点。投球フォーム的には東明大貴(オリックス)を彷彿とさせるような小気味の良いフォームで、まだ体つきが発展途上で、大学・社会人でうまくビルドアップできれば、145キロ前後までスピードアップする予感を刺せた。

 また打線も1回裏に4番藤井倭の適時打で1点を先制し、しっかりと守っていた。
 しかし6回表だった。先頭の田城 飛翔に高めの135キロのストレートを捉えられ、バックスクリーン横に飛び込む同点本塁打を許す。八戸学院光星打線は内よりに入って来る直球を狙い撃ち、この回、7安打を集中させ、一気に4点を入れて逆転するのであった。ストレートに過信すぎたところがあっただろう。7回以降、スライダーの割合を増やし、立ち直りを見せていく平林。ずるずると引きずらない投球はさすがであった。

 一方、八戸学院光星櫻井一樹も、130キロ~135キロ(最速138キロ)のストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップ系統の変化球を上手く織り交ぜて狙い球を絞らせないピッチング。上手く打たせて取っていたが、7回裏、市立尼崎は9番殿谷小次郎の適時二塁打、そして9回裏には、8番谷尻尚紀の適時二塁打、9番殿谷の犠飛で同点に追いつき、今大会初の延長戦に持ち込んだ。この同点劇にスタンドは大盛り上がり、いつしか市立尼崎を推す雰囲気となっていた。



 

 しかし決勝打を打ったのは、田城 飛翔だった。二死満塁のチャンスで回ってきた田城はストレートを捉えて一塁強襲安打。5打数4安打2打点の活躍だった。田城の何が良いかといえば、ストレートを振り遅れせず、強く叩けること。オープンスタンスで構え、グリップを肩の位置に置いて構える姿には雰囲気があり、ゆったりとタイミングを測って、インステップ気味に踏み込んで、外角をしっかりと捌けること。10回表の決勝打は内角のストレートをキレイに打ち返すことができていた。この日はライトの外野守備でもファインプレー。さらに塁間4.15秒の俊足。走攻守の完成度が高く、今年の高校生外野手ではトップレベルの力量を持っている選手ではないだろうか。

 市立尼崎は一歩及ばずであったが、平林の力投に乗せられるようにナインも泥臭いの守備を見せていた。この泥臭さというのは、チームとしてこだわっていること。確かにミスはあったが、これは次の課題としてとらえてほしい。また投の平林と同じく打として引っ張った藤井。オープンスタンスで構え、トップを深く取って、弧を描いたスイング軌道から放たれる打球の鋭さは八戸学院光星の打者に負けていなかった。次のステージでも強打者としても活躍が期待できる素材と感じさせた。

 試合後、イチアマナインに大拍手が送られた。そこには、この試合の戦いだけではなく、苦しい兵庫大会を勝ち抜いた試合を含めて、「よくここまで頑張った!」と労っているように感じた。1回戦敗退で終わったが、人々の心を揺さぶるような熱いチームであったことは間違いない。

(文=河嶋宗一

八戸学院光星vs市立尼崎 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ優勝の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【宮崎】日章学園、富島、小林西などが初戦を突破<県選手権大会地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?