Interview

つくば秀英高等学校 長井 良太投手「130キロ未満から149キロ!スピードアップの秘訣とは?」

2016.05.11

 MAX149キロのストレートを武器に、プロのスカウト陣からも今秋のドラフト候補として注目されているつくば秀英長井良太投手。中学時代のポジションは捕手で、高校入学時の球速は130キロにも満たなかったという選手は、どのような成長を遂げて現在に至ったのだろうか。

ずっと県外の学校に進みたいと思っていた

長井 良太投手(つくば秀英高等学校)

 中学時代は学校の軟式野球部でプレーしていたが、そのチームとは別にいわゆる野球塾にも通って技術を磨いていた長井投手。中学1年生の頃からずっと、高校は県外のチームに進むことを意識していた。

「県内のチームだと甘えが出て、遊びに流されてしまうんじゃないかと思っていたので、厳しい環境に自分の身を置くには県外に出た方が良いと考えていました」

 そこで、兵庫県神戸市出身の長井投手に当時の野球塾の指導者が進路として薦めたのが、茨城県つくば市にあるつくば秀英高校だった。

つくば秀英のことを調べてみたら、甲子園には出場していないですけれど、プロ野球選手を何人も輩出していたので、ここに行けば自分の能力も高められるのではないかと思って決断しました」

 高校に入学し、ピッチャーへコンバートされた長井投手。

「中学時代からストレートが速いと周囲に言われていたので、森田 健文監督に直訴してピッチャーをやらせてもらうことになりました。でも、B戦に登板した時、中学時代の感覚で投げたら見事に打たれてしまってレベルの差を痛感しました」

 また、練習もハードだった。

「1年生の頃はトレーニングについていけず、ケガばかりしていました。とにかく走ることが多いので足を故障してしまって、治ったと思ったらすぐに別の場所……という感じでした。満足に練習できないし、練習をしたらしたで、ものすごく走らされてキツかったし、この頃は地元に帰りたいとよく思っていました」

 1年の夏が終わる頃には、練習にも環境にも慣れてきたのかケガをすることもなくなっていった。

「足をケガしている時は上半身のウエイトトレーニングをやって、できる範囲で体を鍛えていたのが良かったんじゃないでしょうか」

 ただ、冬場の練習はさらに厳しさを増した。

「走り込みを中心にかなりキツいトレーニングをしました。同時にウエイトトレーニングでスクワットやランジをやって下半身を鍛えたり、股関節や骨盤を強化したり。そして、投げ込みをやることで肩の筋力もつけていきました」

 これにより126キロだった長井投手の球速は2年夏に140キロを突破。秋には149キロまで達した。

「149キロを出した時のことは、あまり覚えていなくて。球速よりも試合に勝つことに集中していたので、あとで聞いてビックリしました。ただ、自分は真っ直ぐでカウントを取って、真っ直ぐで三振を取っていくタイプなのでスピードにはこだわっていますし、どれだけ質の良い真っ直ぐを投げられるかを常に意識しています」

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[page_break:指先を強化し、真っすぐも変化球も鍛えた]

指先を強化し、真っすぐも変化球も鍛えた

ピッチャー長を務める長井 良太投手(つくば秀英高等学校)

 そこで、ボールにスピンを多くかけるために取り組んでいるのが指先の強化だ。

「水を入れた1.5リットルのペットボトルを人差し指と中指で挟んで上へ持ち上げる動作を、毎晩30回×3セットやっています。このトレーニングによって、真っ直ぐだけじゃなく変化球にも良い効果が表れていると感じています」

 だが、昨秋の茨城大会は1回戦で敗退。213球の熱投も実らず、石岡一に延長13回の末、1対2で競り負けた。

「試合で延長戦を投げるのは初めてで、10回まではまだ大丈夫だったんですけれど11回から肩やヒジに疲れが出て、真っ直ぐのスピードも130キロ前半まで落ちてしまいました」

 そこで、この冬の練習ではスタミナアップに励んだ。

「甲子園に行くチームでもエースが1回戦から決勝まで投げていたりするので、それに比べたら自分はまだまだ甘かった。だから、スタミナをつけたくて、冬は週2回、火曜日と金曜日に200球を投げ込みました」

 また、投球フォームも変えることにした。

「1年の冬に、まずは『速いボールを投げる』という目標を立てて、スピードを出すために左足を上げてから下ろす時、テイクバックでは右肩を下げて投げるように意識していました。ただ、この投げ方ではコントロールが悪かったので、140キロが出るようになってからはテイクバックで右肩を下げずに、そのまま投げるように変えました。これで制球が良くなりましたし、球速も落ちなかったので上手くいったと思います」

 成果はすぐに表れ、3月の二松学舎大付との練習試合では完封勝利を挙げた。

「この試合では真っ直ぐと変化球で上手く緩急を使えました。バッターの裏をかくこともできましたし、昨秋の東京都大会準優勝のチームを0点に抑えることができて、とても自信になりました」

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甲子園出場&150キロを実現する

ランニングする長井 良太投手(つくば秀英高等学校)

 しかし、春季大会は地区予選の初戦で古河一に1対10の7回コールドでまさかの敗退。

「1対5とリードされた場面からの登板だったので、『自分のピッチングで流れを引き寄せてやる』という意気込みでマウンドに立ちました。それで、ストレートに対してバッターはタイミングが合っていなかったので、ピンチを抑えたりしたのですが試合の流れは変わらなくて……。結局、自分も変化球が浮いたところを捉えられ、5点を奪われて負けてしまいました」

 シード校として油断があったことは否めない。

「今後はどんなチームが相手だろうと全力で戦っていきます。そして、早く負けてしまったことをプラスに捉え、トレーニングする期間が長くなった分、より自分を成長させていくつもりです」

 球速も目前まで迫っている150キロを目指す。

「左足を上げてから着地するところで、股関節が開いてしまっていて体重移動が上手くできていないので、ここを修正すれば150キロは出ると思っています。それで、今は初心に戻ってウエイトトレーニングで股関節を鍛え直していますし、キャッチボールでも一球一球、極端なくらい意識して投げています。それに、今のフォームだとボールの出どころも相手バッターから見やすくなっているので、ギリギリまでリリースポイントを隠すようにしたいです」

 ランニング、投げ込み、トレーニングと様々な練習を積み重ねて球速を上げてきた長井投手に、どうしたら速いボールが投げられるのか聞いてみた。

「他にはリストの強化を意識していて、ウエイトトレーニングでリストカールをやっています。あと、つくば秀英ではボールを速くするためのいろんな方法を教えてもらっていて、かなり知識が増えました。もちろん自分に合うか、合わないかはやってみないと分かりませんが、行けると感じたものは絶対に取り入れています。中学時代は149キロを出せるとは思っていなかったですし、正直、140キロも難しいと考えていたので、つくば秀英に来て本当に良かったです」

 エースの自覚を胸に、最後の夏へ向けて始動している長井投手。

「夏は初戦から全部、投げたいですね。もちろん、甲子園に行くことが一番の夢なんですが、やっぱり一戦必勝という気持ちを持って目の前の試合を一つひとつ勝ち上がっていきたいです」

 甲子園という夢を叶えるために突き進むことがきっと、もう一つの夢であるプロへの道を切り開くのにつながることだろう。

(文=大平 明


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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