Column

姿勢のゆがみをチェックしよう

2016.04.16

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 地域によっては春季大会も始まり、いよいよ公式戦が始まるシーズンとなりました。まだまだ寒暖の差があるため、ウォームアップを念入りに行い、ケガのないようにがんばってもらいたいと思います。さて今回はパフォーマンスに大きく左右する姿勢について、自分でチェックできることやコンディショニング方法などについて考えてみたいと思います。

背中が丸まった状態になっていませんか

 投球動作を繰り返すと、利き腕側の肩は自然と前方よりにクセ付いてしまうことが多く見られます。肩が少し前に入って背中が丸まった状態となり、その状態でバランスをとろうとすると、頭は自然と前方に移動します。頭の重さは5kgほどあり、頭の位置が前方に移動するだけで、首や肩、背中にかけて2~3倍程度の負荷(10~15kg程度)がかかるといわれています。こうした状態が長期にわたって続くと、肩こりや頸部の痛み、寝違えや頭痛などを引き起こしやすくなります。肩が何となく重いと感じるときは、背中が丸まって頭が前方に移動していないかを確認してみましょう。壁を背にして、かかと、おしり、肩甲骨、後頭部を、壁につくようにして立ちます。この姿勢を維持することがむずかしいようであれば、首から背中、腰背部にかけての筋肉が張っているのではないかと考えられます。

姿勢の悪さは投球動作に影響する

 背中が丸い状態で投球動作を繰り返すと、腰椎や胸椎でのひねり動作が不十分となり、本来できるはずのしなやかな動きが制限されてしまいます。腕が上がりきっていないところで身体の入れ替えを行わなければならず、肩はむりやり腕を上げようとさまざまな筋肉を動員して何とかしなやかな動きになるように「代償運動」を行います。その結果、肩周辺部の筋肉に過度な負担がかかって痛みを生じたり、肘のしなりで肩の動作を補おうとして肘を痛めたりといったことが考えられます。

筋肉の緊張をとることとトレーニングで鍛えること

トレーニングでは「引く動作」と「押す動作」を考慮しよう

 

 姿勢の悪さを改善するためには、首から背中にかけての筋肉をしっかりとストレッチして、柔軟性を回復させることが大切です。仰向けに寝転がった状態で膝を抱え、背中をゴロゴロと丸めて動くだけでも筋肉の緊張は和らぎます。また円い筒状のストレッチポールなどを準備できる場合は、こうした道具を有効活用することもよいでしょう。また背中を使ってモノを引く動作を中心にトレーニングを行うことも、身体の前側と後側のバランスを改善する効果が期待できます。逆に身体から押す動作(ベンチプレスやショルダープレスなど)を過度に行いすぎると、大胸筋や三角筋などが張ってしまい、より背中の丸い状態をつくり出してしまうので注意が必要です。トレーニングは姿勢をチェックしながらバランスよく行うことが大切です。

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[page_break:ペアで姿勢をチェックしよう]

普段使いのシューズからわかること

 今度は今使っている靴をチェックしてみましょう。履けば履くほど靴底はすり減ってきますが、そのすり減り方によっても身体の使い方や姿勢を確認することが出来ます。靴底の外側がすり減っている状態は、体重が拇指球に乗っておらずどちらかといえば外側に荷重がかかっている状態です。O脚であったり膝の外側に痛みが出やすい傾向にあります。外側ばかりを過剰に使っていると当然内側の筋肉はゆるむため、内ももを締めて力を発揮するバッティングやピッチングにも影響がでる可能性があります。

 逆に靴底の内側がすり減っている状態は、膝が内側に入りやすく、膝の靱帯や半月板などを痛めやすいことが考えられます。左右ですり減り方が極端に違う場合も、身体のバランスが崩れていると考えられますので、左右差を確認しながらストレッチやトレーニングを行うようにしましょう。

ペアで姿勢をチェックしよう

野球は非対称の動きが多いので身体のバランスを意識しよう

 

 今度はペアになって姿勢をチェックしてみましょう(一人で行う場合は鏡を見ながら行いましょう)。姿勢をチェックしてもらう人は骨盤の出っ張り部分に手を当ててまっすぐに立つようにします。抑えた手の位置に左右差がないかをチェックしてもらいましょう。左右差がある場合、低い方に骨盤が傾いていることが考えられます。骨盤が正しい位置におさまっていないと身体のゆがみやバランスの崩れを引き起こし、腰痛やぎっくり腰の一因ともなりやすいので注意が必要です。

 野球は左右非対称の動きが多く含まれているので、バランスをとるために逆スイングを行ったり、日常生活においては左右非対称の姿勢(足を組む、片側の足にいつも体重をかけて立っている、重いカバンを片方の肩にかける等)を長時間にわたって行わないようにするなど意識してみましょう。最近遠征等で使用するチームバッグはリュック型が主流となりつつありますが、これも姿勢のゆがみを防ぐためには理にかなったものなのです。

【姿勢のゆがみをチェックしよう】
●投球動作を繰り返すと利き手側の肩は前方へと移動しやすく、背中が丸まりやすい
●5kgの頭が前方に移動すると、首から背中にかけて2~3倍の負荷がかかる
●背中が丸まっていると感じたら筋肉をほぐすこと、トレーニングで「引く動作」を多めに行うこと
●普段使いのシューズからも姿勢や身体の使い方がわかる
●ペアもしくは鏡を使って骨盤の位置をチェックしよう
●野球は非対称の動作が多いため、それを改善する努力をしよう

(文=西村 典子

次回コラム公開は4月30日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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