Column

鹿児島実業高等学校(鹿児島)【前編】

2016.03.12

「夏」への自信となる「春」にする!

 今年度が学校創立100周年になる鹿児島実が、夏に続き5年ぶり9回目となる春センバツに出場する。正月の全国高校選手権を制したサッカー部に続いて、野球部がセンバツで全国制覇を成し遂げたのはちょうど20年前、80周年の出来事だった。100周年の締めくくりに野球部が再びセンバツ出場を勝ち取って「夢を再び」と願う関係者も多いことだろう。もちろん宮下 正一監督をはじめ、選手たちも頂点を狙う気持ちは持っている。だが結果を出すこと以上にチームがこだわるのは「夏につながる自信をつけるための春にする」(宮下監督)ことだ。

「夏」にこだわる理由

宮下 正一監督(鹿児島実業高等学校)

「1つでも多く勝ち上がりたい気持ちは当然あります。でもそれ以上に大事なのは夏につなげることです。あまりガツガツと勝ちにいかず、場合によっては試したい選手、作戦を大胆にやることも、夏につながるならやるということです」(宮下監督)

 宮下監督が「夏」にこだわるのは、5年前の痛恨の思い出があるからだ。当時のチームは左腕・野田 昇吾(現・埼玉西武)や主砲・豊住 康太(現・三菱自動車岡崎)、濵田 竜之祐(専修大→日本新薬)らを擁し、秋の明治神宮大会準優勝センバツベスト8入りを果たした。現チームのメンバーが小学生の頃で「僕らの憧れ」(綿屋 樹主将・新3年)で鹿児島実を志した部員も多い。県内、九州で負けなしを誇り、夏の全国制覇をも視野に入れるチームだったが、選手権予選準決勝薩摩中央にまさかの敗戦を喫し、甲子園出場を逃した。

 夏春連続は90、91年と10、11年に続いて今回で3回目だが、監督就任以来、未だ春夏連続を成し遂げていない宮下監督にとっては「乗り越えたい課題」の一つだ。

3年生の財産

「3年生のおかげで、このチームもセンバツにいける」
宮下監督は常々言い続ける。この5年間、甲子園が遠くてもがいていた中で「先輩たちが甲子園に行ったことが自信になった」(綿屋主将)。夏にチームとして5年ぶりに甲子園を勝ち取り、開幕戦北海(北海道)に勝利した。このチームに綿屋、追立 壮樹板越 夕桂ら2年生もメンバーとして甲子園の土を踏んだ。新チームのスタートは他のチームより1カ月以上遅れたが、
「先輩たちが甲子園に行ったことで、自分たちも絶対行けるし、行くだけじゃなくて勝って上を目指す」(綿屋主将)モチベーションになった。

 新チーム最初の公式戦となる8月の鹿児島市内大会は、新チームになって1週間程度の準備期間しかない中で「負けて秋はノーシードでも仕方がない」(宮下監督)と思っていたが、尻上がりに調子を上げて優勝し、シード権をとった。

 初戦の鹿児島工戦、準々決勝の鹿児島戦はいずれも接戦で負けてもおかしくない展開だったが「不思議と負ける気は全然しなかった」と綿屋主将は振り返る。勢いづいた秋の県大会ではれいめい試合レポート)、樟南試合レポート)、鹿児島城西試合レポート)といったライバルとの争いを制し、地元・鹿児島開催だった九州大会でも準々決勝で優勝候補と目された九産大九産(福岡)にコールド勝ちするなど、持ち味の強力打線が破壊力を見せつけて、4強入りを勝ち取った。

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際立つ選手層の厚さ

練習風景(鹿児島実業高等学校)

 この秋以降の鹿児島実の戦いぶりには今までと明らかに違う点がある。打順にしても、守備にしても「不動のオーダー」が存在しないのだ。8月の市内大会から九州大会まで、13試合の公式戦を戦ったが、不動だったのは「4番・綿屋」だけで、それ以外の打順、守備は毎試合入れ替わっており、同じオーダーで臨んだ試合がない。綿屋にしても打順は4番だったが、守備が三塁から一塁になっている。
「今までのうちではなかったですね」と宮下監督。そういう起用ができるのは「一番手と二番手に力の差がなく、誰を出してもそん色ない。相手に応じた戦いができる」からだ。

 投手は本格派の丸山 拓也(新3年)、右下手の谷村 拓哉(新3年)の2枚看板。どちらの先発完投、継投も考えられる。県大会れいめい戦や、九州大会九産大九産戦と強打のチームを相手に軟投派の谷村をぶつけて会心の勝利を収めたのは、適材適所で選手を使い分ける現チームの戦いぶりを象徴している。

 打線の核は何といっても綿屋主将だ。県、九州大会の9試合で打率6割2分1厘、4本塁打、20打点は今大会の出場打者でトップクラスの成績を残した。綿屋の4番は固定として「1、3、5番、特に5番打者の出来が打線のカギを握る」(宮下監督)。
リードオフマンには、捕手から外野にコンバートされた中村 天(新3年)、闘争心を前面に出す井戸田 智也(新2年)、長打力もある板越の起用が考えられる。3、5番には左の板越、右の長距離砲・追立、飛距離なら綿屋にも負けない西野 友晴(新3年)ら、前チームからのベンチ入り経験が豊富なメンバーが担うことになりそう。

 相手投手が右か、左かでこのあたりの起用は変わってくる。綿屋が歩かされることを想定すれば、その後を打つ5番の出来が重要だ。「どの打順を任されてもいい準備はいつもしている」と板越。「チャンスでしっかり打てるように、フォームをしっかり固める」ことを冬は意識して練習してきた。西野は「打席に入る前に、相手投手のボールの軌道をイメージしてから打席に立つようにしている」という。

 下位を打つ打者も井戸田 貴也(新3年)、喜岡 大晟(新3年)、土井 剛太(新3年)らが調子を上げており、丸山、谷村は打撃でも光るセンスを持っている。内外野とも、各ポジションに2人がレギュラーを争うような図式になっており、誰が出てもそん色がない。不動の綿屋さえ、同じ一塁のポジションに1年生長距離砲の枦山 幸平が控えており、決して安泰というわけではない。それだけ熾烈なレギュラー争いがチーム内にある。

 5年前のチームは確かに全国でも屈指の強力チームだったが、主力メンバーはほぼ固定されていた。ゆえにケガ人が出てしまうと大幅な戦力ダウンが避けられなかった。春先から夏前まで誰から治れば、誰かがケガをすることが続き、ベストメンバーで臨めた試合が少なかった。そのあたりの反省もこのチームに生かされており「全国でどのレベルかは分からないけれども、選手層は厚くなったと思います」と宮下監督は自信をのぞかせている。

 後編では鹿児島実業が実施している食事トレーニングに迫りました。

(取材・写真:政 純一郎


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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