試合レポート

仙台育英vs明豊

2015.08.10

見逃し率で分かる仙台育英の好球必打の姿勢とますます見逃せない平沢大河のパフォーマンス

平沢大河(仙台育英)

仙台育英の宮城大会でのチーム打率は.423。これは鳥羽の.429に次いで参加校中ナンバー2である。実はスカウトが「彼は特A(ドラフト上位候補)です」と評価する平沢大河(遊撃手)が宮城大会で打率.176と絶不調に陥っていた。それでいてチーム打率が4割を超えている。この打線の迫力が1回表に発揮された。

 1死後、何と平沢の2ランホームランを含む5連続長打が飛び出し4点、さらに2死後に8番打者のタイムリーが続いて5点を先制した。この1回の攻撃で目立ったのは好球必打。打者9人を送る猛攻の中で、3球以内に打って出た打者が6人いる。佐藤将太が初球、青木 玲磨が3球目、平沢が2球目、佐々木良介が2球目、佐々木柊野が初球、谷津航大が2球目である。

 好球必打は打者の判断基準だから、投手の役割が大きい野球を論じるのに不適切ではないかと言われそうだが、この仙台育英明豊戦だけでなく、大番狂わせと言われた津商対智弁和歌山戦でも好球必打型のチームが勝っている。

 好球必打を最も適切に表現するのは「見逃し率」である。見逃し率とは全投球に占めるストライクの見逃しの割合のこと。要するに見逃しの少ないチームのほうが試合に勝っているということである。早速、8月9日の見逃し率を見ていこう(見逃し率は数値が低いほうが好球必打の傾向がある)。

 津商12.8%>対智弁和歌山18.4%
 創成館12.1%>対天理17.6%
 滝川二11.1%>中越18.7%
 仙台育英12.6%>明豊17.9%

 試合後に「やっぱり見逃しの少ないほうが勝っているんだ」と、結果論的に見ても昂奮しない。しかし、5回が終わってグラウンド整理をしているとき、見逃し率の途中経過を見ると違う感慨がある。圧倒的な有利が伝えられた智弁和歌山だったが、2対2のスコアで5回が終わったときの見逃し率は智弁和歌山の20.6%に対して津商は14.8%だった。
 これを見てもほとんどの人は智弁和歌山の打線の迫力を1回裏に見ているから「今に盛り返すさ」と思ったに違いない。しかし、私は「優勝候補の智弁和歌山が負けるぞ」と、このとき思った。そういう目でゲーム後半を追っていたので一投一打に昂奮した。

 


関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

第97回全国高等学校野球選手権大会

 話を第4試合に戻すと、仙台育英明豊戦の5回終了時の見逃し率は「明豊12.8%対仙台育英16.1%」。その時点でのスコアが仙台育英の8対0だったので、ここから明豊が逆転するとは思わなかったが、目をみはったのは6回以降の仙台育英の攻撃である。「明豊投手陣のことは大体わかったから、ここからは積極的に行きますよ」と言わんばかりに好球必打に徹したのである。最終的に見逃し率は明豊の17.9%に対して仙台育英は前出のように12.6%と上回った。こういう楽しみ方が見逃し率にはある。

 さて、選手で注目したのは平沢である。シートノックのときからフィールディング、スローイングの動きが別次元だった。宮城大会で絶不調を極めた打撃は1回に右中間スタンドにぶち込んでいるように復活モードに入ったと思っていいだろう。振りの強さとしなやかさ、振り出しのコンパクトさに対して打ち終わったあとのフォロースルーの大きさなど、すべての面で魅了された。ドラフト上位候補の評価は不動になったとみていいだろう。

 宮城大会のときの不調の名残は守備面に見えた。3回裏、明豊の8、9番打者のゴロを下がって捕球体勢に入り、堂田弘平のゴロはスローイングエラーした。試合後にコーチの方に聞くと、「宮城大会は人工芝の球場で行われるので、強い打球に対して下がって処理するクセがついたのだろう」と話してくれた。不満はこの2つのプレーだけである。

 走塁は4回表の二塁打のときの二塁到達が8.03秒と俊足の部類。この一打は詰まり気味の右前打と言っていい。平沢は外野手の深い守備位置を見て、途中からエンジンを全開にして二塁を狙いにいく。まるでオコエ瑠偉が東東京大会決勝で見せてセンター前二塁打のように。勝手な想像だが、話題になったこのオコエのプレーに刺激された走塁だろう。走攻守が高いレベルで3拍子揃った平沢からますます目が離せなくなった。

(文=小関 順二


関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

第97回全国高等学校野球選手権大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.06

大阪桐蔭が選抜ベスト8の阿南光ら4チームと対戦!<招待試合>

2024.06.06

大阪桐蔭&履正社撃破の原動力! 超高校級遊撃手・今坂 幸暉(大阪学院大高)のドラフト指名はあるのか!?<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.06.06

【佐賀】敬徳は唐津東と唐津南の勝者と対戦<西北部地区大会>

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・近畿地区】近畿一番乗りの抽選は17日の大阪、4府県が7月6日に開幕

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・北信越地区】新潟で21日に抽選会、7月5日の富山で組み合わせが出揃う

2024.06.01

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.04

神村、鹿実の壁を破れ! 国分中央は「全力疾走・最大発声・真剣勝負」で鹿児島の頂点を狙う

2024.06.01

【愛知】報徳学園は豊橋中央にサヨナラ勝ち、豊川には黒星<招待試合>

2024.06.01

【東京六大学】早稲田大が大勝で7季ぶり優勝に大手!プロ注目スラッガー・吉納が2発、エース伊藤は8回1失点の快投見せる!

2024.06.01

報徳学園の今朝丸がセンバツ決勝戦以来の先発!モイセエフは3番センターでスタメン出場!【招待試合スタメン】

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得