試合レポート

九州学院vs敦賀気比

2014.11.17

九州学院中盤の猛攻で敦賀気比に逆転勝利

先発した山﨑颯一郎(敦賀気比)

 九州大会が終わったのは、10月30日。2回戦から登場の九州学院の坂井宏安監督は、「九州大会の後、実戦練習ができていない」と、やや不安を抱いて試合に臨んだ。対する敦賀気比は、2日前に四国大会優勝の英明に打ち勝ったばかり(試合レポート)。実戦感覚の差が、まず序盤に出た。

 1回表敦賀気比は、1番の篠原涼が右前安打。犠打などで二死三塁となり、打席には4番の平沼翔太。平沼は内野ゴロとなったが、球足が遅く、遊撃手への内野安打になり、敦賀気比があっさり先制した。

 敦賀気比の先発は、身長188センチと長身の、背番号18の1年生・山﨑颯一郎
「経験をさせたかったし、どれだけ投げられるか、みたかった」と、敦賀気比の東哲平監督は山崎起用の理由を語る。

 山崎は、直球は130キロ台の半ばくらいだが、長身だけに変化球にも角度があり、九州学院打線は手こずる。
1、2回は三者凡退。3回裏は2四死球に捕逸などで二死二、三塁のチャンスを得ると、2番の米満巧は二遊間にゴロ。これを二塁手が捕りそこなう失策で、九州学院は無安打で同点になった。

 九州学院の坂井監督が、「ノーヒットでも、1点取れて気持ちが楽になった」と、語るように、実戦から遠ざかり、試合にしっくり入り込めていなかった九州学院にとっては、貴重な1点であった。

 それでも敦賀気比が押し気味であることに変わりはなかった。
2、3回と先頭打者が出たものの得点できず、4回には先頭の5番山本皓大が中前安打。外野手の守備位置が深かったため、山本は二塁を陥れた。犠打で一死三塁とし、7番藤原巧海は強烈な三直。これが併殺打となって、九州学院はまたピンチを切り抜けた。ある面これが九州学院の野球でもあった。
「先頭打者はよく出します。出しても点をやらない」と、坂井監督は語る。

第45回記念明治神宮野球大会

9回完投勝利を収めた伊勢 大夢(九州学院)

 もっとも5回表は、あっさり二死となったものの、そこから敦賀気比が得点を入れる。1番篠原が内野安打、2番中井基継は三塁手の失策で出塁し、3番林中勇輝は左中間を破る二塁打で二者が生還した。

 5回裏は、九州学院が反撃に転じる。先頭の7番元村優吾が遊撃手の失策で出塁すると、8番伊勢大夢は左前安打。9番中原力也はきちっと送って一死二、三塁。続く1番長谷川大将は一ゴロ。ところが一塁は誰もカバーに入っておらず、内野安打。実質的に守備のミスが重なり、点が入った。

 敦賀気比の東監督は試合後、「ミスが点につながることは、選手もよくわかったはずだ」と、厳しい表情で語った。さらに2番米満の一ゴロで二死二、三塁。3番友田晃聡は中前安打を打ち、2人が還り、4対3で九州学院が逆転した。

 とはいえ、試合は打ち合いの様相であり、勝敗の行方は分からなかった。そして明暗を分けたのが6回の攻防であった。

 九州学院の先発は、九州大会を1人で投げ抜いた伊勢大夢。スリークォーターからの140キロ台の直球と、変化球のキレ味の良さを武器とする投手だ。

 6回表、敦賀気比の先頭打者である5番山本は、伊勢を襲う強烈なライナー。伊勢は素早く反応して捕球するも、あまりに打球が強かったため、グラブをはめた左手がしびれるほどであった。
九州学院の坂井監督は、「本人は痛かったかもしれないけれども、ピッチャーをライナーを捕れたことで、流れを呼んだ」と語る。

 それでも敦賀気比は、続く木下翔吾、藤原と連続安打で一死一、三塁。藤原の代走・栗栖千真は、一、二塁間に挟まれ、その間に木下は本塁を突くがアウト。得点のチャンスを逃した。

第45回記念明治神宮野球大会

3ラン本塁打を放った中原力也(九州学院)

 その裏九州学院は、7番若原笙弥が右中間を破る打球で迷わず三塁を狙い、三塁打。8番伊勢は四球で一死一、三塁。打席には9番で捕手の中原。
「昨年の秋は4番を打っていました。捕手は守りの要なので、打順を下げたら、『えっ』と思うようなバッティングをするようになりました」と坂井監督が語るように、もともと力はある。

 その中原の打球は、レフトフェンスに向かって飛んでいった。審判が手を回し本塁打のゼスチャーをすると、敦賀気比の左翼手と三塁手が、フェンスを越えていないと必死のアピール。4人の審判が改めて協議し、本塁打となり、非常に貴重な3点を追加した。

 後で映像を見ると、フェンスに当たっただけで、越えていない。ただ観客を入れていない[stadium]神宮球場[/stadium]の外野スタンドは光を反射して、非常にみにくい。特に今の時期は、太陽が低いため、より強く反射して審判泣かせでもある。

 試合後敦賀気比の東監督が、「審判が判断したことなので仕方ない。打たれた方が悪いのです」と語ったように、判定の間違いというのは、あってはならないけれども、人間である以上致し方ない部分もあり、受け入れないといけない。ただ敦賀気比にとっては、あまりに痛い3点であった。

 九州学院は7回にも1点を追加し、8対3で勝利を収めた。
敗れた敦賀気比の篠原主将は、「そんなに劣っているわけではないけれども、結果が出ないということは、まだまだ足りない部分があるということ」と語っており、これからの練習の刺激になる敗戦であった。

 ただ先発の山崎に関しては、下半身をうまく使っていないため、球に力が加わっておらず、体格が生かされていないことが気になった。その点は本人も自覚しているようで、「足が開いて、力が入らないフォームを直したいと」と語っていた。

 九州学院の準決勝の相手は仙台育英
「そんなところと試合ができることはありがたい。挑戦です」と、九州学院の坂井監督は、試合が楽しみといった表情で語った。

(文=大島 裕史)

第45回記念明治神宮野球大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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