神村学園vs出水
集中と徹底で圧勝・神村学園
ダイヤモンドを1周する田中梅里(神村学園)
神村学園が、快進撃で勝ち上がった出水を鎧袖一触で寄り切り、強豪私学の底力を発揮した。
口火を切ったのは7番・児玉和也(2年)。準々決勝の出水中央戦で3安打6打点と好調な児島が一死一二塁からセンターオーバー二塁打を放って2点を先取する。
「リズムが悪かったので、何とか1本打ちたかった。しっかりセンター返しの打撃ができて良かった」と児玉。序盤3回までは攻守のリズムがかみ合わず、劣勢の展開だっただけに、何とかきっかけをつかみたい副主将の集中力が生んだ一打だった。
「あの一打が、みんなの方の力を抜いてくれた」と小田大介監督。そこからは神村打線が長打攻勢で畳み掛ける。
5回は二死から3番・田中梅里(1年)が、初球を詰まりながらも低い弾道のライナーでレフトスタンドに叩き込んだ。
「高めを狙えと言う監督さんの指示通りに打てて良かった」と田中。6回には勝敗を決定付ける満塁弾も放っている。こちらも初球の高めの変化球を逃さなかった。こちらは滞空時間の長い、大きな放物線を描いてレフトスタンドに消えた。
「バットに当てるだけのバッティングはあまり好きじゃない。思い切り振り抜きたい」自らの身上をバットで体現した。背番号は16だが、思い切りの良さと時にはバントでつなぐ器用さもあり、状況に応じた打撃ができるセンスを買って、小田監督が3番に抜擢した期待に応えた。
2ラン本塁打を放つ豊田(神村学園)
夏のベンチ入りメンバー11人が残り、主砲・山本卓弥(2年)ら主力メンバーも豊富にいて、安泰に思われた新チームだったが、地区大会ではライバル鹿児島城西に苦杯をなめ、スタートでつまずいた。
「初心に返って、考え方を変えた」と児島は言う。
「自分たちには力がある」という慢心を捨て、今やるべきことに集中し、自分たちが取り組むべきことに集中するようになった。
「『予習』よりも『復習』を大事にして一戦一戦強くなろう」。
小田監督が掲げる現時点のテーマだ。試合前の準備はもちろん大切だが、試合の後、見えてきた課題を一つずつ復習し、次の試合で克服する。
準々決勝の出水中央戦では7回まで9対0と大差をつけながら、7回裏に4点を奪われ、9回までもつれた。
「今日は九州大会がかかった大事な試合。相手は勢いに乗っている出水だから、最後まで気を抜かず、集中することだけは言い続けた」(小田監督)。
一戦ずつ課題をクリアしながら、徐々にそのポテンシャルを発揮しつつある。決勝の相手は8月の南薩地区決勝で敗れた鹿児島城西。この1カ月でどれだけ成長したのか、計るには絶好の相手だ。
(文=政 純一郎)