宜野座vsコザ
攻守ともに見ごたえがあった7回裏の攻防
宜野座・當眞圭介
この試合、コザの勝利を断ち切り宜野座を決勝に導いた二人のキーマンがいた。
まずは冬を越えて一番成長したと、東 亮先生と當眞 圭介キャプテンが口を揃えて言ったショートの大嶺 稀央(まれお)。7回裏、コザは二死ながら満塁と絶好のチャンスで、3回にセンターオーバーの三塁打を放っている仲本 悠人が打席に入る。3球目を捉えた打球は三遊間を襲う。誰もが“抜けた”と思う強烈な当たりだったが、目に飛び込んできたのはダイビングキャッチでそれを抑えた大嶺の姿だった。立ち上がり一塁へ転送するが、足の速い仲本が駆け抜けて内野安打タイムリー。その合間を縫って二塁走者が果敢に三塁を蹴り本塁突入を試みる。
その中で一人だけ秋の大会を思い返している男がいた。キャッチャーの當眞だ。
「実は昨年の秋の準決勝で沖縄尚学に同じように二塁から本塁に突入されました。そのときの僕は対応が出来ず、一塁手が送球出来なかったと言います。それが一瞬過ぎり、あの場面で身体が勝手に反応していました 」。
一塁の崎原 種人(しゅうと)は本塁へ送球。當眞は完璧なブロックで二塁走者の生還を許さず最少失点で凌いだ。コンマ何秒の世界で体が反応したこの二人のプレイヤーが、10年振り4度目の決勝へとチームを導くことになったイニングだったと言えよう。
試合は、1回に二死三塁からのセンター前タイムリー、5回には二死満塁からのショートへのタイムリー内野安打と貴重な2打点を挙げた宜野座の4番、宜野座 颯と、先発し8回を121球、6奪三振の力投で1失点と好投した知念 諄也(しゅんや)ら、ここ一番での勝負強さや粘り強さが光った宜野座が逃げ切った。
敗れたコザだが、投打でバランスが良く優勝候補の嘉手納を5対10で下し、春は実に19年振りとなるベスト4へ進出するなど、昨年の新人中央大会で準優勝したその力を存分に発揮した今大会であり、夏へと繋がる戦いを見せてくれた。
4月から那覇工へ赴任が決定し、この春では副部長(秋までは監督登録)としてナインの成長を見守った東 亮先生は、「ここ数年の宜野座では一番強い」と語った。選抜21世紀枠で全国に轟かせた宜野座旋風をこの最後の夏で再び吹かせるため、また当時中学生だった自分たちに声を掛けてここまで導いてくれた先生への恩返しのため、宜野座ナインは走り続ける。
(写真・文=當山 雅通)