試合レポート

沼田vs中央中等

2013.04.29

沼田vs中央中等 | 高校野球ドットコム

スクイズを決めてベンチへ戻る小野里君

7点リードを一挙に追い上げられて冷や汗の沼田、後半勝負で何とか逃げ切る

公立校対決は、県内初の中高一貫教育システムを導入している中央中等と、伝統の群馬沼田という対決構図。渋いカードながら、県内のコアな高校野球ファンにとっては見逃せない試合といってもいいであろう。

中央中等は、現在のような中高一貫となる以前の群馬中央時代に一度、甲子園出場を果たしている。その後、学校のシステムそのものも必ずしも野球部活動にとっては追い風ではない状況でもあった。昨夏のチームは3年生が二人だけだった。それでも松本稔監督が、試行錯誤しながら取り組んできていた。そして、今年の選手たちは試合経験が豊富なだけに今年のチームにはそれなりの手ごたえを感じているようだ。

これに対して前橋、筑波大で後輩に当たる群馬沼田の濱田豪監督は、昨夏は初戦で前橋育英にリードしながら後半に逆転されたことを学習材料として、後半勝負に耐えられるチーム作りを目指してきた。

ところが、この試合では6回表までに7点を奪った群馬沼田。初回は二死走者なしから大橋君、高橋智君の連続二塁打で先制。2回も9番金子君と綿貫君の連続三塁打などで3点を挙げ、5回にも連続長打で加点。6回に7点目を挙げてコールドゲームペースで進んでいた。

しかしその裏、一気に状況が変わった。群馬沼田は一死一、三塁で重盗を仕掛けられたかと思い、捕手が送球をためらったものが、思わぬ方向へバウンドしてしまうということで1点を失う。そこから、7番内田君の三塁線を破る二塁打など5安打と、3番吉田君のライトオーバーへの三塁打で1点差となって試合の行方そのものが分からなくなった。


沼田vs中央中等 | 高校野球ドットコム 

沼田・山口君

それでも、群馬沼田の山口君は球数も多くなったがよく辛抱して投げた。
そして、9回に高橋智君の安打と高橋一君のレフト線二塁打で1点が追加され、結果的にこれが決勝点となった。高橋智君はこの試合、5打数5安打二塁打2本で打点2。4番打者としてチームを牽引していた。

試合後は、群馬沼田の濱田豪監督もさすがに疲れた様子だった。
「全然勝った気がしませんよ。よく勝てたなぁというのが正直なところですね。普通だったら、必ずひっくり返されている試合です。まあ、山口がよく投げたということなんですが…。7対0のままということはないだろうと思っていましたけれど、せめて7対3くらいじゃないと」と、音もチラリ。
ただ、継投も頭をかすめたものの、夏を見据えた中ではエースで厳しい局面を凌いでいくという経験も必要だろうという判断もあったという。そして、「やはり、松本先輩の作るチームは、集中が違います。いつも、勉強させられています」と、甲子園で史上初の完全試合も達成している先輩を称えていた。

その松本監督は、あと一歩ひっくり返し切れなかった展開だったが、むしろサバサバしていた。
「面白い試合だと思ってもらえました? それならば、よかったです。ここ(ベスト8)まで来て、コールドじゃどうしようもないですからね。

一挙6点? 僕はいつも試合中はあまり指示などはしないのですけれども、風に乗って打線も乗っちゃったんでしょうかね」と、相変わらずの松本節は健在だった。

もちろん、強風だったこともこの回に限っては中央中等に作用していたところもあったような打球もあった。しかし、こうした爆発力、一瞬の集中力は中央中等の見せ場と言ってもいいものである。選手個々の力としては正直、決して高いものではないが、毎年中堅以上の結果を残してくる中央中等。夏へ向けて、今年も松本マジックは健在であるとみた。不思議なチームとして、旋風を巻き起こしそうな匂いは十分である。

(文=手束仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.26

【春季関東大会】常総学院・中村虎汰郎が二刀流の活躍で決勝進出に貢献!9回にはサヨナラに繋がるヒット!投手としてはセンバツ後に再転向で連日の好リリーフ!

2024.05.26

【春季近畿大会】大阪学院大高のプロ注目ショート・今坂幸暉は3打数無安打。「第1打席がすべて」と悔やむも好守備に手応え

2024.05.26

【春季関東大会】超強力打線・帝京の快進撃が止まる! 白鷗大足利の山口・昆野を攻略できず、13年ぶりの夏への課題は「大黒柱の育成」

2024.05.26

【島根】開星、出雲が各地区で優勝<各地区大会>

2024.05.26

【宮城】仙台育英が投打に圧倒して5大会連続28回目のV<春季県大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.26

【春季関東大会】常総学院・中村虎汰郎が二刀流の活躍で決勝進出に貢献!9回にはサヨナラに繋がるヒット!投手としてはセンバツ後に再転向で連日の好リリーフ!

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.22

【春季関東大会】センバツVの両エース打ちで勝利に貢献!逆転タイムリー放った池田翔吾(常総学院)は指揮官も絶賛の打棒の持ち主!

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商