試合レポート

伊勢崎商vs大間々

2012.04.16

伊勢崎商vs大間々 | 高校野球ドットコム

川島(大間々)

試合ができる喜びと悔し涙に誓う夏

 昨春、選抜に出場した前橋育英。 昨夏も優勝候補として異論無くあげられていた。うだる様な暑さの7月の陽が傾く頃。大間々高校の選手達は歓喜に沸いていた。大川主将の快投、そして2年生の大塚、川島らの活躍で4-0で前橋育英を撃破した。ある種の奇跡や波乱だと言われもした。

その試合を見ていた者として奇跡かどうかはわからないが、灰色にストライプのユニフォームを纏った選手達が、前橋育英を凌駕する肉体を惜しげも無く見せつけ、球場を俊敏に駆け抜けた。

その実績から、秋以降の活躍も期待された大間々高校。しかし全16名の野球部員。引退した3年生を除くと8名しか残らかった。なんとか人数を揃えた出場した秋季大会。 古豪前橋工業に惨敗だった。

大きな身体からは想像できない程、俊足で俊敏なプレーとパワフルな打撃で昨年からチームの主軸となっている大塚慎也。「新一年生がたくさん入ってくれたので やっとゲーム形式の練習ができる様になりました。」と言った。

練習試合の解禁前の他校が紅白戦やゲーム形式の練習に勤しんでいる頃。基礎トレーニングを続けてきたそうだ。その成果なのか。大間々高校の選手達の下半身は他校のそれと比べても遙かに鍛えられている様に見える。

対する相手は伊勢崎商業は昨今メキメキと力をつけてきているチーム。昨秋は選抜に出場することになる高崎高校にサヨナラ本塁打で敗れている。

まずこの試合で目に付いたのは伊勢崎商業のストップウオッチとヘッドスライディングだ。攻守交代になり自チームが守備につくとストップウオッチを持った控え選手が秒数を読み上げる。 だいたい1分や45秒だろうか。毎回毎回 一定のリズムで守備につく。流れを壊さないために考案されたとのこと。


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大間々注目の捕手 深澤

また自チームの攻撃時 2アウトから凡退してチェンジになった場合打者走者は2塁まで全力疾走してヘッドスライディングをする。これは気合いを確認するための言わば儀式ということだ。

伊勢崎商業 先発は169cmの堀越。 左腕横手投げ。変則投法と言った方が良いのか。特徴のある投げ方をする。 120から130kmの直球のキレが良く右足を上げたあとのタメタイミングやテイクバックの時間を常時変えている。
これが球持ちの良いリリースと相まって速い直球はより速く、抜いた直球も大間々の各打者が差し込まれる。
また牽制が上手い。立ち上がりは苦手なのか。無失点に抑えたが2回までは四死球が目立った。 

大間々高校先発は川島。 昨年はリードオフマンの右翼手として大活躍した。160cmの小柄な左腕だが直球に伸びがあり、こちらも球速は120-130km代だろうか。更に緩急をつけたカーブやフォークボールを操る。 マウンド裁きやフォールディングは軽快でマウンド上で躍動する様にも見える。

注目すべきは川島のコントロール。相手が右打者左打者関係なく内角をどんどん突いてストライクを先行させてくる投球は見ていて気持ちが良い。

試合は伊勢崎商業が2-1で迎えた6回、7回に球威の落ちてきた川島君を責め追加点を奪い試合を終始優位に進める。
9回表にも2番近藤君の左中間タイムリー2塁打やボーク、ワイルドピッチで2点を奪い試合を決定づけた。

大間々高校も9回裏。 9番田部井のヒットと盗塁でチャンスを作ると1番期待の大塚のタイムリーで1点を返し打線が息を吹き返したかにも見えたが後続が倒れ試合終了となる。

両投手が試合の中盤以降 ガクッと球威が落ちた事が印象的だった。
伊勢崎商業は川島の球威が落ちたところを見逃さず得点を重ねた。2番打者で投手の川島。セーフティーバントを試みるなど打撃でも相手を揺さぶり続け、7回にはセンター前安打も放った。彼の運動量。今日の試合は相当なものだったの推測できる。


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伊勢崎商業 堀越手

大間々高校は球威が落ちた伊勢崎商業 堀越を早打ちで、結果として助けてしまったのが痛かった。 試合終了後にも大間々高校 大塚は
「甘いボールを見逃さずにいこうと試合前に徹底しました。しかし低めの変化球に手を出して打ち取られてしまった。 夏は1点の勝負なのが去年で良くわかりました。今のままでは勝てません もう一度やり直します」
と悔しそうに語った。

試合終了後、大間々高校の選手の中には涙を流す選手の姿が見受けられた。口々に悔しいと発する彼らの言葉からは、思いっきり試合ができる喜びと3月末まで、モチベーションを落とさず基礎トレーニングを続けてきた日々が走馬燈のように蘇っている様だ。

奇跡や波乱と言われた昨夏。しかし大間々高校は夏に勝つために用意周到に厳しい練習や下準備を続けてきた。 
彼らからしてみたら、必然を自分たちの手でたぐり寄せた結果ではないのだろうか。彼らの悔し涙から、奇跡とは観ている側の勝手な思い込みなのでは?と思い知らされた様な気がした。

(文=木内 慎治)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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