大垣日大vs静岡商
大垣日大ベンチ
阪口監督不在でも、大垣日大は本来の野球で快勝
台風2号が発生したのと、梅雨前線が停滞しそうだということで天気が心配されたのだが、どんよりとした曇り空ながら何とかこの日の試合は成立した。
天候ももう一つ芳しくなく、平日の金曜日ということもあって、スタンドの入りはもう一つというところだったが、それでも県内の人気校静岡商が登場とあって、古くからの後援団体である「静商ネット会」の人たちを中心に集まっていた。
今春のセンバツにも出場した岐阜県1位の大垣日大は、67歳の名将・阪口慶三監督が、体調不良で入院したということもあって、この大会は休養。
高橋正明監督代行で戦うこととなった。もちろん公式戦は初采配ということになるのだが、「実は先の鹿児島県の招待試合で、スタンドに5千人も入っていた試合を経験させてもらいましたから、それに比べたら今日は…」と、少し苦笑しながらも、初戦敗退をしなかったことには安堵していた。
初回、大垣日大は1死から安藤嘉君が中前打で出ると二塁盗塁して、2死二塁から高田君が三遊間を破るタイムリー打で帰してあっさり先制。3回にも、三番星野君の左翼へのソロ本塁打で追加点を挙げた。このリードを、完封リレーで守りきることになるのだが、大垣日大の先発マウンドに登ったのはエースの葛西君ではなく、11番をつけた左腕栁川君だった。
阪口監督がいつも、「この子はマウンドマナーが、素晴らしくいい投手だ」という評価を与えている投手だという。
県大会以上の公式戦は初先発ということで、少し緊張はあったようだが、立ち上がりから無難だった。
途中まではサイドハンドかと思わせるような体の動きなのだが、そこから急に胴体を立てて腕を上に持っていって投げおろすというやや変則気味のフォームだ。
驚くようなスピードがあるというわけではないものの、制球力は十分だった。
8回からは、葛西君がリリーフして、二塁打こそ打たれたもののきっちりと抑えた。
高橋監督代行は、「今日の試合は、2点しか取れなかったということよりも、0に抑えられたということが収穫でした。ノーエラーというのも大きかったですね。8回から葛西を投入したのは、栁川がいっぱいいっぱいだったということではなく、葛西をリリーフに使ってみるということを試したかったからです」と、守りの野球に徹しきれたことを評価した。大垣日大としては、本来の野球が出来たと言ってもいいであろう。
静岡商・中村君
静岡商としては、結局、好機らしい好機もあまりなかった。
三塁へ走者が進んだのは2回、3回、4回と7回とあったものの、いずれも2死となってからだった。ただ、2回、3回、4回の無死での走者を何とかしたかったところであろう。
もっとも、無死の走者をいずれもしっかりとバントで進められたのは、静岡商らしい野球だったといえよう。
見城直哉監督は、「こういうロースコアのゲームをものにできなくてはいけません。1球を大事にしていく姿勢をもっと大事にしなくてはいけないということを、相手から学びました」と、静岡商らしい試合が出来ていただけに、あと一本が出なかったことを悔やんだ。
それでも、2年生の中本君は肩の故障が癒えたばかりだったということだが、まだ本調子ではない中で、いい投球をしていた。
171㎝と決して大きくはないが、バネのある小気味のいい投球が出来る投手である。ただ、肩が気になるのか、この日はまだ腕を振り切れなかったところもあったようだ。
打線では、四番中村君が2安打、七番に入っている中本君が3安打したものの、この二人以外では八番杉浦君と九番の八木君がそれぞれ散発で、上位がほとんど封じられたのも痛かった。
(文=手束 仁)