試合レポート

上尾vs川越東

2011.04.25

上尾vs川越東 | 高校野球ドットコム

二羽(川越東)

連戦の結末

  5回表時点で2-1と川越東が1点をリードする。そう、これは前日雨のためノーゲームとなった試合の最終スコアである。だが、翌日の最終スコアは7-2で上尾川越東に勝利した。この2日間何があったのか?まずは、雨でノーゲームとなった試合から振り返ってみよう。

 この試合の先発は川越東が小柳津、上尾が三宅と両チームの背番号1が登板する。

 上尾の左腕三宅は、130km中盤のストレートとスライダーが中心のピッチャーである。左打者に対しては外角中心で組み立て、右打者には外角のボールからストライクになるスライダーでカウントを取る。この球は右打者にとっては厄介な球であろう。この日は、ややストレートが上ずっていたが、初回から2三振を奪うなどまずまずの立ち上がりだ。

 一方、川越東の小柳津も良かった。持ち味の縦カーブを中心に内外角をきっちりと投げ分け、中村の好リードもありバッターを料理する。すると、ピッチャーが作った良い流れに打線が応える。

 3回裏猿田のヒットで突破口を切り開くと2死3塁から角野がライト前タイムリーを打ち川越東が先制する。さらに4回には、大崎、中村、猿田のヒットに小技を絡め1点を追加する。

 上尾打線も2巡目以降、徐々に小柳津のボールに慣れ始め、単発ではあるがヒットが出始める。そして、5回表2死3塁から栗原のタイムリー3ベースで上尾が1点を返す。その後も続くピンチに対し、小柳津がどう踏ん張るのか、それとも、継投するのかという所で雨が強くなる。ゲームは中断し運営本部は降雨状況を見守るが、雨が降り止まないため結局ノーゲームを決断し、翌日再戦となる。


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角野ホームラン(川越東)

 そして迎えた翌日、先発は川越東が永井、上尾は伊藤が先発する。

 上尾の左腕伊藤は三宅とタイプが異なり、スライダーやカーブなど変化球中心のピッチャーである。左打者に対しての攻め方は三宅と同じで外角中心だが、三宅とは異なるのは右打者への攻め方だ。内角にフォーシーム、外角にはツーシームの握りでストレートを投げ分けカウントを取る。特に時折投げる右打者の外へ逃げていくツーシームは厄介だ。それもあったか序盤はなかなか伊藤のボールを捕らえられない。

 一方の永井だが、この日の出来は悪かった。ストレートが走らず、制球(特にインコースへの制球)が定まらない。そんな状態の永井を上尾打線が見逃すはずなかった。初回先頭佐藤のヒットを皮切りに犠打、死球を挟みエラー気味のヒットもあったが5安打を集中され3点を失い上尾にペースを握られる。

 2回になっても、永井は立ち直れない。インコースへのコントロールは戻らず、2死球を出すと2死1,2塁から
「2点で抑えられるとは思ってなかったので、少しでも多く点を取りたかった」

と言う5番伊藤に左中間へ2点タイムリー2塁打を打たれ、これでKOとなった。

 2回を終え0-5と厳しくなった川越東だが、このままでは終わらない。

 3回裏2死1塁から3番・角野のレフトへの2ラン本塁打で追撃を始める。さらに、投手陣では、2番手で上がった二羽が3回から8回までを無失点に抑えると流れは徐々に川越東に傾く。


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伊藤(上尾)

 5回裏には、この回伊藤から代わった三宅を攻め立て1死2,3塁とするが、大崎の当たりはサードライナーで併殺となる。

 さらに、8回裏には2死から中村の2ベースを足がかりに満塁としバッターは猿田と願ってもない場面を作る。だが、ここで猿田がセンターフライに終わり万事休す。この回バッテリーに代打・代走を出すなどリスクをかけていた川越東は最終回に2失点し結局は7-2で敗れた。

 試合後上尾・伊藤は川越東についてこう語った。
「監督には昨日から『5回2点ビハインドなら上出来だ』と言われていました。自分には『3回2失点で行って
くれればいい』とも。川越東には良いバッターがいっぱいいてうちより実力は上だったし、正直勝てるとは
思ってはいなかった」

 もちろん、この言葉には多少なりのリップサービスも含まれているだろう。確かに、エース三宅のいる上尾は総合力で川越東より一枚上だったかもしれない。だが、点差以上の実力差は感じなかったこともまた事実である。

 前日はロースコアで進み基本的に川越東ペースのゲームであった。だが、翌日もそうなるとは限らない。これが野球の怖さであり醍醐味でもある。その怖さと醍醐味を勝者の上尾も敗者となった川越東も身をもって味わった2日間だったのではなかろうか?

(文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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