明徳義塾vs新田
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カットボールが切れていた尾松投手(明徳義塾)
「強い明徳」。大一番での完璧な勝利
「めちゃくちゃうれしい!」
これは東京・渋谷センター街路上で女子高生が発していた言葉ではない。試合後、香川・レクザムスタジアムのベンチ裏にて今年11月28日で55歳を迎える明徳義塾・馬淵史郎監督が連発していたフレーズだ。
とはいえ、指揮官を狂喜乱舞させるほどこの新田戦における明徳義塾は「完璧」であった。
まずは「1番から9番までシュミレーションして臨んだ」(馬淵監督)ディフェンス面。初回2死2塁でとりわけ警戒していた高校通算34発の4番・細川智裕(2年)との初対決に際しては、「尾松(義生・2年)は(2回戦の)寒川戦(2010年10月24日)で外角に浮いたボールを右打者に打たれていたので、それを逆手にとって内角で勝負した」杉原賢吾(1年)のリードにより内角スライダーで三振を奪い、強打新田の勢いをせき止めることに成功した。
そして「寒川戦後の1週間でマスターした」カットボールを随所に散りばめた尾松も、4回に5番・中川昌弘(2年)に対し、この試合唯一の失投から許し
たタイムリー3塁打などで献上した2失点を除けば、7回21アウトのうち外野フライすら5つしかない低めへのコントロールで「0」の数字と内野ゴロの山を築くことに。
これには馬淵監督も「試合ごとによくなっている」とご満悦であった。
一方、打線も制球が定まらない新田投手陣から2回裏の先制点となる連続押し出しを含む10四死球、全員出塁と抜群の選球眼でチャンスをつかむと、1点差に迫られた3回には尾松のスクイズ、4回には代打・梅田翼(2年)の2点タイムリーなどで毎回着実に加点。
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2回裏・打席に立つ北川倫太郎(明徳義塾)
特に「新田はサードと投手のフィールディングが悪いのでバントトレーニングをやった」(馬淵監督)成果を、無死1塁からの2番・今里征馬(1年)、3番・先田弦貴(2年)の連続サード前バントで無死満塁とし、梅田のタイムリーにつなげた一連の采配とそれに応えた選手たちの技量は正に「圧巻の域」といえるだろう。
これに対し、「ファーボールやエラーで浮き足立って攻撃にも影響した」(秋山和輝監督)と全く持ち味を出せぬまま終わった新田。
となれば7回コールドという結末もしごく当然のことであった。
かくして3年ぶり10度目の秋季四国大会決勝進出を決めると共に、3年ぶり14度目のセンバツ出場へ大きく前進した明徳義塾。
もし正式にセンバツ出場が決まれば、2002年夏の第84回大会全国優勝を含む2001年夏から2004年夏にかけて7季連続出場していた「黄金時代」以来の2季連続出場となる。
が、それ以上にチームにとってもターニングポイントであったこの大一番での完璧な勝利は、単に数字以上の価値を持つもの。
もし「明日も必死でいきたい」と名将も宣言した決勝戦も快勝で飾るようなことがあれば、かつて四国を、いや全国を席巻した「強い明徳」がいよいよ戻ってくることになりそうだ。
(文・撮影=寺下 友徳)