試合レポート

木更津総合vs千葉英和

2010.10.08

2010年10月07日 千葉天台球場

千葉経大付vs千葉明徳

2010年秋の大会 秋季千葉県大会 準々決勝

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三國 和磨(木更津総合)

木更津総合、壮絶な打撃戦を制し、ベスト4進出!

千葉県の強豪校の一つである木更津総合
戦国・千葉といわれる中でも安定した実績を残している学校である。
2006年夏から2010年夏までの成績を見ていくと優勝3回、準優勝2回、4強2回、8強3回、16強2回と激戦区・千葉でこれほどの実績を残しているのは素晴らしい。
その実績を支えているのは粘り強さと一気に畳み掛ける集中打であると考えている。
私がこのチームは終盤に強いチームだと感じたのは2008年秋の成田戦。
この試合では最大5点差から逆転サヨナラ勝ちを収めたのである。
今年の夏も東海大望洋戦で10-6という大接戦を演じ、最後まで諦めないチームカラーがこのチームの最大の売りである。

この試合でもその集中打を発揮した試合であった。1回の裏に8点を先制される。普通ならばコールド負けを感じさせる雰囲気。
しかし、木更津総合のチームカラーを知るだけにこのままでは終わらないなと見ていた。

やはり高野の本塁打、三國の3ランで一気に8対5の3点差とし、3回の表に2点を返し、1点差とする。
その裏に1点を取られたが、4回の表に一挙6点を入れて逆転。

その後も打線の爆発は止まらず、なんと21対14で千葉英和の猛追を振り切りベスト4進出を決めた。
今年のチームは例年以上の破壊力を誇る。もしかしたら2008年夏を凌ぐ打撃力を誇るチームかもしれない。
秋でこれほど振れるチームは久しぶりだ。強力打線の一角を担う選手たちを紹介していきたい。

【木更津総合編】
三國和磨(右/右 左翼手 1年生):強力打線・木更津総合の核弾頭。
6打数4安打の大当たり。うち1本がライトへのホームラン。風にも乗って入った形だが、ホームランはホームランだ。
バットを寝かせたスクエアスタンス。バットを揺らしながらタイミングを測っていき、打ち返していく好打者。
ヒットはすべてセンターからライト方向という右打ちが上手い選手。
特に癖がない選手であり、打撃に関しては合格レベルだ。ただ守備では目測を誤りヒットにしてしまうなどまだ改善の余地がある。地肩が特に優れて選手ではないので、外野手であることが残念だ。この打撃で内野もこなせたら◎評価なのだが……。まだ1年生今後に期待したい。


高野勇太(木更津総合)

郡健登(右/左 三塁手 2年生):木更津総合の4番に座る強打者。
この試合では5打数3安打の活躍。ライト線を破るスリーベース、ファーストへの内野安打、レフト前ヒットと右、左へ打ち分けた。
グリップを予め引いたスクエアスタンス。ただグリップをあまり動かさないので、リストワークが硬く、柔軟性を欠く選手だ。
守備は鍛えられており、動きは良く、地肩の強さもまずまず。

高野勇太(右/左 右翼手 1年生):今日のMVP男。第1打席にライト越えのホームラン、第2打席に左中間を破るスリーベース、第3打席にはライト前ヒットと二塁打を打てばサイクルヒットという活躍であった。

どっしりとした構えには雰囲気があり、いかにも強打者という雰囲気を醸しだしている。
始動を仕掛けるのが遅くボールをぎりぎりまでに引き付けて抜群のヘッドスピードでぶつけていく強打者。
役者が多い木更津総合の中でも打球の速さはピカイチ。
これが1年生だというから驚きだ。肩も中々強く、強肩強打の外野手として注目を浴びていくことになるだろう。
来年の今頃には千葉県屈指の強打者として成長しているか注目していきたい。

他には5打数3安打と猛打者を記録した国廣 拓人(右/左 二塁手 1年生)もこつこつと当てた打撃が身上の選手。
4安打を打った3番の森佳祐(右/右 一塁手 2年生)はスラッガーというスケールはないものの、勝負強さとミートを兼ね備えた強打者。
この2人は詳しくチェックできなかったので、これからも追いかけて見ていきたい選手。

打線の破壊力は素晴らしいものがあるし、上位に食い込むのは納得だ。
しかし木更津総合はその上から中々突き出せないでいる。


角張健(木更津総合)

その原因は何か。
それは投手陣にある。
木更津総合は投手の素材は良い。
しかしそこから勝てる投手になれるには更にステップアップが必要だ。

2008年に選手権に出場した田中淡路のような絶対的な安定感を持つ投手は稀である。

今日投げた投手を紹介していくと先発した角張健(右/右 2年生)は長身の本格派右腕。1年生から登板している右腕だが、1年のときからあまり変わっていない印象。ストレートは常時120キロ後半~133キロを計測。昨年とそれほど変わっておらず、伸び悩んでいる印象。ストレートが高めに浮き、結局、ワンアウトしか取れずに降板。この試合は全く投球が組み立てることができなかった。

黄本創星(右/右 1年生)は木更津総合の中で最も力のあるボールを投げ込む投手。速球は常時130キロ~136キロを計測。何度も136キロを計測しており、スピード能力は中々なものがある。下半身がかなりがっしりしており、下半身を支えた投げ方は東海大望洋の長友昭憲に似ている。

腕の振りは力強いが、やや外回りな腕の振りをしているため、出所は見易く、慣れ始めると打たれやすい。
変化球は120キロ前後の縦スライダー、直球中心の組み立てなので、5回に打ち込まれ途中降板した。

その黄本の後を受け継いだのがエースの大高柾樹(右/右 2年)。
大高は最初の打者を見逃し三振に取り、ピンチを切り抜ける。その後はヒットを打たれながらも粘り強い投球。
3失点したものの、千葉英和の猛追を振り切った。

しかし昨秋からの成長があまりみられなかった。
球速は常時125キロ~130キロのストレートと、スライダーだ。
このコンビネーションで攻めるも、ボールが甘く入る事も多く、彼も伸び悩んでいる印象を受けた。

木更津総合が甲子園を狙える位置に達するまでには投手陣の成長が不可欠だ。ここ数年続いているこの課題をどのように改善するかが夏へのカギになる。


立花玲央(千葉英和)

【千葉英和編】
エースの艫部春紀(1年 右/右)は小柄ながら130キロ台(マックス133キロ)の直球を投げ込む投手。
小柄なため角度はあまり感じない、開きが早いフォーム、アウトコース一辺倒の投球なため徐々に捉えられていった。
4番に座る選手。まだ力強さはなく課題も多いが、冬を越えてどのような選手になるか見てみたい。

注目の立花玲央(2年 右/左 右翼手)。
この試合では5打数1安打に終わり、勝利に貢献できなかった。
均整の取れた体格には雰囲気を感じさせるが、トップに入った時にグリップに入りすぎる癖があり、インコースにも詰まらされている。肩の強さは平均的で、動きは悪くない。

気になったのは試合の入り方で、すべてのことをスマートにこなそうとする印象を持った。
淡々とプレーしている印象で、今後主将としてどのようにチームを引っ張っていくのか気になる。今のところ、味方を叱咤激励するタイプとも、プレーからも皆を引っ張るタイプとも感じなかった。

一番の高橋良喜(2年 右/右 三塁手)は5打数4安打の活躍。
スイングは速く、芯に食ったときの打球はかなり速いが、巻き込む打撃をする選手で、外角には脇が開いた打ち方になっており、ドアスイングになってしまう。
この試合では殆どストレート中心の攻めであったが、スライダー中心の攻めに切り替えたら対応できるか不安な選手ではあるが、思い切りの良いスイングは魅力的なので、対応力を高めると更に大きく成長する可能性を秘めている。

(文=編集部 河嶋宗一
(撮影=国吉辰一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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