試合レポート

双葉翔陽vs平商

2010.07.15

2010年07月14日 いわきグリーンスタジアム

双葉翔陽vs平商

2010年夏の大会 第92回福島大会 2回戦

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(平商)

後悔も悪くない

「キャプテンは元気がいい。けど、今日まで怒られていて。しっかりしてほしくてずっと怒ってきたんですけどね。山名がとんちんかんなことをやっても、もう一人(の3年生)は大人しいしキャプテン向きじゃない。凸凹コンビでした」(平商・森田健二監督)。

この日の朝、平商は9時に球場集合だった。集合した時点で監督に報告するなり、監督を呼びにいったりする。しかし、待てども、待てども、キャプテンは来ない。9時30分。痺れを切らした森田監督は、チームのもとへ行った。「30分も何していたんだ」とキャプテンは怒られた。「試合のことを考えていたら、監督を呼びに行くことがすっぽ抜けて。最後の最後にやらかしてしまいました」と、キャプテンの山名智之。

 平商の選手は12人。そのうち、3年生は山名(5番・レフト)と原田大空海(4番・サード)の2人だけ。入部当時は3人だったが、1年生のちょうどこの時期あたりに2人になった。「クラスは違うけど、男子が少ないから仲良くしている。でも、部活中はライバル」と山名。たった2人の同級生だけど、競い合ってきた。

 平商は全校生徒825人に対して、男子は131人。野球部は毎年、少人数で戦っている。昨年、一昨年と秋はサッカー部から1人、帰宅部から3人が助っ人で参戦し、何とか試合に出られる状態だった。

2人が高校野球で勝利の味をかみしめたのは2度。1年夏の初戦と1年秋の地区大会敗者復活戦で。昨秋以降、つまり、山名たちの代になってからは一度も勝利していない。この夏こそは――。

初戦となったこの試合。1、2回と失策絡みで得点に結びつけた。ムードは必然的に高まる。だが、4、5回に1点ずつを入れられ、同点に追いつかれた。でも、諦めない。6回表、失策で出塁した山名が1年生・高瀬智也のセンター前で勝ち越しのホームを踏んだ。

だが、すぐに1点を返される。そして、8回裏、自チームの失策で勝ち越しを許し、さらにタイムリーで突き放された。

試合後、勝った双葉翔陽の校歌を聴いている時、泣いている後輩たちの先頭で、山名は毅然と前を向いていた。「やることやったんで。相手のことを考えて泣きませんでした。片付けが終わって試合終了。そこまで泣かないようにしようと決めていました。でも、片付けている時には泣いてしまいました」。こらえていた分、ジワッと溢れてきた。
高校野球への充実感と満足感に入り混じり、後悔の気持ちもやっぱりある。

朝、監督を呼びに行かず、怒られたこと。「勝って、もう1試合。(挽回の)チャンスがほしかった」。

4回に無死1塁で空振り三振してしまったこと。「4番の原田がヒットで出たのでつなげたかった。3年生で1点取りたいと思って、振りが大きくなってしまった」。
期待に応えたかった。「先生にもよくしてもらって。クラスからも応援されて、いい思いばかりして。勝って、全校応援をさせたかった。応援してもらった人に試合を見せたかった」。

でも、それらは山名の個人的な後悔だという。「チーム全体としては悔いのない試合でした」。最後は、キャプテンらしく締めた。
全力でプレーしても、丸々1試合を考えれば、悔いは残ってしまう。3年生にとって最後の夏。後悔は残したくないと思うけど、それが現実。だけど、悪いことではないと思う。いつの日か、その後悔だって、高校野球の思い出として笑って話せるだろうから。

(文=高橋 昌江


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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