試合レポート

広島工業(広島)vs南陽工業(山口2位)

2010.06.05

2010年06月05日　宇部市野球場　

広島工業(広島)vs南陽工業(山口2位)

2010年第114回春季中国地区高校野球大会 1回戦

広島工　石田健太投手

次元が違った投手戦

　南陽工業・岩本輝と広島工業・石田健大。この大会注目の好投手対決は、期待を裏切らない見事な投げ合いだった。

６回に失った１点が致命傷になった岩本。広島工業は１死から、２番山口修平(２年)がレフト前ヒットで出塁。続く３番倉本龍(３年)が三振する間に山口は盗塁を成功させる。打席には最も警戒していた４番の和田凌太(３年)。プロも注目する好打者だ。この場面で南陽工業サイドはどう和田を打ち取るか。岩本が選択したのはフォークを引っかけさせることだった。
カウント１－２からの４球目。岩本はそのフォークを投じた。和田が放った打球は注文通りとなり三塁前へのボテボテのゴロ。完全に岩本の勝ち。

　しかし次の瞬間、落とし穴が待っていた。あまりにボテボテだったため、突っ込んできた三塁手の田上徹(３年)は捕球時に体勢を崩していた。そのまま一塁へ投じるとこれが悪送球に。二塁走者の山口が生還し、広島工業に待望の先取点が入った。
｢エラーは仕方がない。その前にヒットを打たれてランナーを出してしまった自分の責任｣と野手を庇った岩本。その表情には投手戦に投げ負けたという悔しさがにじみ出ていた。

　一方、石田の方は散発の３安打。｢絶対に投げ負けたくない｣という気合がピッチングに乗り移っていた。象徴的だったのが３回、８番の家重太誓(３年)に三塁打を浴びた直後の場面。打順は９番だったが、南陽工業に犠牲フライを打たせなかった。

岩本、石田の投げ合いはこの時期としては滅多にお目にかかれない熱投だった。この日は敗れたものの、成長著しい岩本を山崎監督は｢全国制覇させてあげたい投手｣と期待を込めている。
たかが1点、されど1点。この悔しさを、夏にどんな答えとして示せるだろうか。

（文＝松倉雄太）

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