ベンチ外が次々と活躍する2017年調布シニア。当時のエースは文武両道を実践する強打者に
中村真也(専大松戸)
7月、調布シニア時代、ベンチ外だったももの、高校ではエースどころか、都内でも指折りの好投手となった中西健登(国士舘)、森畑侑大(創価)、松崎公亮(聖徳学園)が成長している記事を掲載したが、実際に主力選手は控え選手の活躍についてどう感じているのか気になった。そこで、今回はある選手を見るために浦安総合運動公園場に足を運んだ。
その選手は専大松戸の中村真也である。中村は当時、背番号「1」をつけていた調布シニアのエースだった。その力量は中学生でもトップクラスのものがあった。当時、中学3年生ながら最速138キロを計測する投手として活躍し、2017年のジャイアンツカップ戦では、武蔵府中シニア戦で先発するなど全国大会での実績もある。
そして中村は野球だけではなく、勉強も優れ、中学受験で桐朋中に入学し、文武両道を実践するエリート中学生だった。これほどの選手となれば、強豪校から勧誘を受けてもおかしくないだろう。
なんと専大松戸には一般試験に受験して入学したのだ。専大松戸に進んだ理由として、「自分で考えてノビノビとやっている雰囲気が気に入った」と語る。
投手として活躍を目指したが、思うようなボールも投げられず、130キロ後半の速球も影を潜めた。そして2年秋、投手をあきらめ、打者として活躍をすることを目指し、秋には4番を打つまでに成長した。
中村を見て感じるのはこだわりをもってプレーしていること。それは独特の打撃フォームから感じられる。重心を高くして、バットを頭の近くにおいて寝かせながら構えるスタイルについては「自粛期間、再開後も打撃フォームはずっと試行錯誤をしていて、現在の打撃フォームが一番ということで、現在のフォームにしています」
5日の初戦(国府台戦)で1番ライトでスタメン出場した中村は2安打の活躍。積極的な打撃姿勢を買われて1番となった中村はその持ち味を発揮している。
そして中村に訊いた。中学時代、ベンチ外だった選手が活躍していることについて。
「とてもすごいことだと思いますし、僕は尊敬します。自分も頑張らないといけないなと思いますね」
彼らが活躍している記事を見ながら気持ちを燃やすという。中村は投手を諦めたが、毎年、関東地区の逸材が集まる専大松戸の競争を勝ち抜き、レギュラーを獲得した選手である。これも凄いことだ。
注目が集まる進路。中村はこう語った。
「一般受験で大学に進んでいきたいと思います」
野球を続けるにしても、一般受験で大学を目指す方針は変わりない。
また調布シニア出身の選手で、中村とともにジャイアンツカップで投げた左腕・森士恩が佼成学園の主力投手として8年ぶりの決勝進出に貢献した。
こうしてみると、2017年の調布シニア世代は野球の技能が優れた選手だけではなく、文武両道を実践するバイタリティ溢れた中村もいて、長い歴史を誇る調布シニアの中でも「特別」な世代だったといえるだろう。