小さな大投手・戸田 懐生(徳島インディゴソックス) NPB基準を超える「勝負の2020」はじまる
徳島先発の戸田 懐生は腕の振りも鋭く147キロを記録
「阿波踊り」……。今年はライブでは見られない徳島のソウルイベントをマウンドで体現するのが徳島インディゴソックス2年目の19歳・戸田 懐生(とだ・なつき)である。171センチの小柄な体をいっぱいに使うダイナミックなフォームから放つストレートは常時140キロを優に超え、最速148キロ。スライダーの切れ味も一級品で、昨シーズンは途中加入にかかわらず17試合19回1/3を投げて失点0、1勝5S。
ポストシーズンでも四国アイランドリーグチャンピオンシップ1回0失点、ルートインBCリーグ覇者・栃木ゴールデンブレーブスとのの日本独立リーググランドチャンピオンシップでは初めての失点と敗戦を経験するも2Sをあげて日本一獲得に大きく貢献。NPBドラフト指名解禁となる2020年は戸田にとって、さらなる飛躍を遂げる一年となるはずだった。しかし……。
新型コロナウイルス感染拡大による度重なる開幕延期。「もう一度体を作り直すことができた。体力面、筋力面をアップさせたり、フォーム固めができる期間」としてもう一度ストレートで押す投球に向けた体づくり、よりよい準備ができたとはいえ、実戦感覚の不足は否めなかった。
それでもエースとして当然のように指名された開幕投手の座。そして対戦相手・香川オリーブガイナーズの先発は前年まで阪神タイガースに所属していた歳内 宏明。「100%の力で入ろうと思った」戸田も最速147キロのストレートにスライダーや、チェンジアップを駆使して三者凡退2三振で返した初回から一転。2回・3回は二死無走者から連続失点を喫する。
その課題を明確に指摘したのが吉田 篤史監督である。現役時代はヤマハで都市対抗野球MVP(橋戸賞)を獲得し、千葉ロッテマリーンズ・阪神タイガースでの13年間で中継ぎを中心に292試合に登板し、NPB・ルートインBCリーグ・関西独立リーグでの指導経験を経て今季から、徳島インディゴソックスを率いる知将はこう話す。
「相手が良かったから、(力みが出る方向へ)それに引っ張られた。そこで自分のピッチングしなきゃって振り返ってできるようになれば」。ただ同時に吉田監督は収穫を得た上での次なるテーマも口にした。
「6回裏一死満塁のピンチを切り抜けたことは評価するが、目一杯(力を)使っていたから7回裏からは継投させざるを得なかった。彼が大エースになるにはあのピンチを乗り切って、さらにもう一回ピンチを乗り越えられるようにならないと。一番最初(の試合)なので変えましたけど、続投させて、負けても完投して負ける、そういうふうになれるといい」
超えなければならない壁。指揮官の想いは当然、戸田にも伝わっている。
「失点の場面はインコースが使えなくて外でかわしに行き過ぎた。もっと使えたら楽に行けたと思う。僕と比べて歳内さんは追い込んでからの制球力が高かったので、もうちょっとそこの精度を上げていかないと」
この試合、11奪三振3安打完封勝利で「NPB基準」を戸田に見せつけた歳内。でも、開幕戦で明確な指針を理解できたことはむしろ戸田にとって幸いであろう。「勝負の2020」。目指すものはこれで定まった。歳内を超え、チームの、いや、リーグの“大エース”と呼ばれる存在となり、NPBを夢から現実にし、さらに活躍できる右腕へ。「小さな大投手」戸田の挑戦はこれからも続いていく。
(記事=上溝 真司)
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