松井 裕樹選手 (桐光学園)

松井 裕樹

球歴:桐光学園

都道府県:神奈川

ポジション:投手

投打:左 / 左

身長:174.0 cm

体重:74.0 kg

学年:卒業

寸評

 神奈川で横浜を打ち破ったことで勢いに乗って、大会記録の奪三振を記録。そして甲子園でも22奪三振を記録し、この夏、二度歴史を塗り替えたのが松井 裕樹だ。日増しに評判が高まっていく左腕に早くも来年のドラフト上位候補と騒がれる。確かにピッチングのレベルでは高校生の範疇を超えている。松井投手の投球を振りかえり、将来性を考えてみた。 (投球内容) ストレート 145キロ 常時140キロ~145キロ スライダー 125キロ前後 フォーク 130キロ前後 カーブ 105キロ前後  左オーバーから角度良く振り下ろすストレートは常時140キロ前後を計測。重量感が感じられ、今大会出場する左腕の中でもNO.1だろう。ただ体が流れやすいフォーム故か、疲労が溜まると大きく暴れやすい傾向があり、この辺で我慢の投球が出来るかが肝になりそうだ。今の彼の中で一番打たれやすいのはストレート。調子良い時は打たれないストレートだが、抜けやすく上のレベルを想定したらホームランを打たれるだろうなと思うボールが結構多い。ストレートの精度・コントロールは少しずつ磨いていけば良い。出来れば打たれる経験したほうが伸びる。  縦横のスライダー、フォーク、カーブ、チェンジアップ。甲子園のファンを轟かせた縦に鋭く落ちるスライダー。彼の変化球について打者から「消えた」という発言が多かったが、それだけ打者の視界では捉えることが出来ない恐ろしいスライダーなのであろう。彼の凄いところはそのスライダーを自在にコントロール出来ていることだ。どのポイントで、リリースすれば、ストライクに入れることができるか。彼はそれを理解しながら投げている。変化球の曲がりが大きいだけではなく、それをしっかりコントロール出来るのが素晴らしいのだ。  そしてストレートも右打者のアウトハイ、左打者のイン、アウトにも投げ分けながら、追い込んでお得意の縦スライダー、カーブで三振を奪っている。  クイックは1.5秒前後と早くはない。クイックは確かに磨くべきだが、標準タイムの1.2秒前後のクイックで、意図的にストライクを取れるのは、すぐ明日の試合で出来るものではない。確かに課題だが、今は勝利の為にどんなに走られても足を上げて投げても良い。  クイック技術を高めるのは避けて通れないのは明らかだが、彼が標準タイムのクイックをしてストライクを入れることができるといったら、難しい。理由はクイックをすることで、前膝の送り込みが下手になり、突っ込みやすいフォームになる恐れがあるからだ。つまりコントロールも乱れる。球速も出ない。変化球もストライクを入れられない。彼がクイックを速くしようと思ったら、その壁にぶつかると思う。クイックにしても球速が落ちない、コントロールが悪くない体重移動の仕方、感覚を最終学年に身につけてほしいと思う。 (投球フォーム)  ノーワインドアップから始動、左足を引いて、反動を使って右足を高々と上げる。トルネード気味だ。  右腕を大きく使って、開きを抑えていく、恐らく腕を振るためだろうか。右腕のグラブの抱えが甘い。そのため暴れる力を制御できず、コントロールが乱れやすい。 左腕を振り下げる、振り下げて、テークバックに入るまでの回旋が非常に速い。テークバックは大きく取っていくが、腰を回転する時はしっかりと肘を上げることが出来ていて、スムーズに腕が振れている。全身に負荷がかかっているフォームなので、しっかりとケアをしなければ故障の危険性は気を付けていきたい。  胸郭を上手く使って、上体で鋭く振り下ろす事が出来ているのが素晴らしい。速球派投手は体幹・股関節を上手く使って、上半身を鋭く回旋させられるか。彼は上半身に必要な力を伝えるのがとても上手い投手だ。非常に高い角度でボールを離しているが、高校時代の杉内俊哉のようなメカニズムだ。彼も縦のカーブを武器にしていたときはカーブに角度をつけようと非常に高い位置で離していた。高校時代の杉内とよく似ている。ただ杉内はあっち向いても、重心移動が捕手方向であったこと。松井は意図的に三塁側へ流れている。個人的に意見が分かれるフィニッシュだ。今よりも重心移動が捕手方向になって、さらに良くなる可能性があるフォームが見つからない限り、簡単にはいじらせない方が良いかもしれない。  恐らく彼なりの考えがあってのことであろう。ただそれによりフィールディングで一塁側のスタートが遅れているのは確かだ。
更新日時:2012.08.17

将来の可能性

高校2年生でこれほど伝説を成し遂げるのは高校レベルを超越した変化球のコントロール、角度あるストレートのコンビネーションを自在に操れるからであろう。マウンド度胸は元から強い投手に見えたが、神奈川大会で横浜を倒したことで、何も怖いものがないという心境ではないだろうか。まさに怖いモノしらず。どんなに戦略を立てても、力業で凌いでしまう。それだけ逞しい男だ。  課題であるクイック、フィールディング、牽制はプロを意識する上で、避けて通れない技術。それは夏の大会が終わってから磨いても遅くはないだろう。大変なのはこの大会が終わってから。多大なプレッシャーをかけられ、数字面で強烈なインパクトを残した投手なので、足元を見つめ直して自分の技術を磨くことができるか。  多大なプレッシャーをかけながらも自分をコントロールし、技術を磨いていけば、さらに難攻不落の存在となっていくのではないだろうか。  技術の精度を高め、恵まれた才能を守るだけで、プロに行ける投手なので、出来れば高卒プロを目指すべき投手だと考える。とにかく彼には故障だけは避けてもらいたい。やはりどんな技術があっても、土台となる肉体が健全であってこそ、躍動感のあるピッチングを実現出来ているのだ。これからも躍動感あるピッチングを継続出来るために彼の才能をぜひ守ってほしい。彼に一番懸念しているのはそれである。
更新日時:2012.08.17

寸評

観戦レポートより抜粋 (2012年08月09日) 松井裕樹の話をすると、松井を松井たらしめているのはスライダーである。フワッと浮いてから強烈にブレーキがかかり、真下に落ち込んでいくボールである。相手打者が打ち気にはやっているときはボール球にして空振りを取りにいき、ボールをじっくり見ていこうと思っているときはストライクゾーンに入れて見逃しの三振を狙いにいく。  この日の22奪三振の内容を見ていこう。 スライダー見送り 5個 スライダー空振り 10個 ストレート見送り 1個 ストレート空振り 6個 ストレートの空振りに触れると、内角高めのボール球が多かった。打者は高角度から落ち込んでくるスライダーの残像が頭に焼きついているため、どうしても高めのボール球に手が出てしまう。松井はそういう心理状態を冷静に読み、憎たらしいほど正確にボールゾーンにストレートを投げ入れ、それを振らせた。 ショッキングだったのは6回表、8番伊藤優作が体にぶつかると思って大きなアクションでよけたにも関わらず、それがクッククとブレーキがかかってストライクゾーンに曲がって入り、主審が「ストライク!」と叫んだときだった。野球漫画ではよくあるシーンだが、実際にこういう場に立ち会うことはほとんどない。 5回裏には打者・松井が2死一、二塁の場面で打席に立ち、ライトスタンドに3ランホームランを放り込んでいる。スコアボード上にはためく大会旗などを見ると、風はかなり強くライトからレフトに吹いていた。ライトスタンドから見ればアゲインストの風である。それをものともせずライトスタンドに放り込んだのである。強く柔らかいリストがあのスライダーを生み出す原動力なんだなとつくづく思った。 ちなみに、6回の2番打者から9回の2番打者まで10連続三振を奪っているが、これも新記録。従来の記録はというと、1926(大正15)年の和歌山中学・小川正太郎が記録した8連続。つまり、86年ぶりの更新ということになる。
更新日時:2012.08.10

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