柿田 裕太選手 (松本工)

寸評

長野屈指の本格派右腕。マックス143キロのストレートに、切れ味鋭いスライダーをコンビネーションに抑える投手である。181センチの長身に加えて、肘が柔らかく球持ちの良いフォームは多くのプロのスカウトが視察に訪れていたほどであった。期待された開幕戦のマウンドであったが、5イニング12失点を喫し、悔しい、悔しい甲子園のマウンドに終わった。 （投球スタイル） ストレート　139キロ １３２キロ～１３５キロ スライダー　１１５キロ前後 カーブ　１００キロ前後 初回、２回ごろはストレートが走っていなかったが、徐々に腕が振れるようになり、キレの良いボールは何球かあった。しかしそのストレートは常時投げられず、高めに浮いたり、キレを欠くボールが殆どであった。鋭い腕の振りから繰り出されるスライダー、カーブの精度は中々なものがあるが、やはり真ん中に入ることが多く、左打者に至っては外角ストレートしか投げられない状況であった。それでもマックス139キロを計測したのは彼なりの意地だったのだろう。多くのファンが彼本来の投球を見たかったはずだが、開幕戦ほど本来のパフォーマンスを残すのが難しい試合はない。それが彼にとって不幸だったのかもしれない。 （クイックタイム・フィールディング） クイックタイムは1.1秒台と素早いタイムを計測していたが、フィールディングの処理は悪くなかったが、送球がおぼつかなかった。送球エラーが失点につながっていただけにこのエラーは本当に残念であった。 （投球の攻め） ・右打者 右打者に対しては外角中心にストレート、カーブ、スライダーを集めていたが、全体的にボールが高くなってしまっており、またシュート回転してしまうことによって多くの打者に振り抜かれていた。長野大会でもその傾向が見られたが、疲労が抜けることによって制球が安定するものだと思っていたが、やはり根本的に変わっていなかった。 ・左打者 外角中心に攻めていく配球。ストレート、スライダー、カーブを投げ分けていくが、長野大会決勝ではインコースへずばずばと突いていたが、甲子園ではほぼ外角一辺倒。狙い球が絞りやすく九州学院の打者に次々と振り抜かれていった。 （投球フォーム） ノーワインドアップから入り、ゆったりと左足を上げていく。左足を大きく上げても軸足はふらつかずに立つことができており、バランスは良い。その後、左足を三塁側に踏み出すインステップ。これにより開きを抑えているように見えるが、膝が一塁側に開いてしまっており、意味がない。それによって肩の開きが早くなってしまい、出所が見易くなっている。テークバックの回旋が非常に綺麗で、しっかりと肘をトップに持っていき、リリースしていくので、球持ちは良い。土台の良いフォームをしているが、まだ開きの早さがパワーロスしている要因になっている。この部分を修正すれば、更にボールは良くなっていくだろう。

将来の可能性

甲子園では本来の実力を発揮できなかった。そのためドラフトの観点で見ていくと素材の良さは評価しているが、まだ課題が多く、高卒プロは時期尚早だ。 甲子園で大きくアピールしたいと臨んでいた柿田にとってはかなり悔しい限りだろう。それが甲子園の怖さなのだ。しかし緊張のかかる開幕戦で投げたことは彼の野球人生の中では大きな経験だったことは間違いないだろう。この屈辱を糧にして再び立ち上がり、数年度、ドラフト指名候補として注目される投手となってほしい。