西川 遥輝選手 (智辯和歌山)
寸評
1年夏に魅せた鮮烈なデビューから1年半。その後の西川遥輝は、怪我などで完全に伸び悩んでいた。しかしこの春は、久々に万全な体調で、選抜に挑んできた。持っている潜在能力は、誰もが認める天才肌。果たしてプロと言う領域を考えた時、一体どのぐらいの選手なのだろうか?今回は、最終学年になったことから、ドラフトと言う観点から考えてみたい。 (プレースタイル) 走攻守三拍子ハイレベルにまとまった中距離ヒッター。そのスマートなプレースタイルは、何処かイチロー(マリナーズ)を彷彿させるような、独特の雰囲気を持っている。今回は、その三拍子のレベルが、一体どのぐらいの可能性を秘めているのか考えたい。 (守備・走塁面) 昨夏の和歌山予選では、僅か3試合で1盗塁と怪我の影響があったのか?足をアピールできなかった。しかし秋からは、24試合で18盗塁を記録するなど、出塁すれば積極的に盗塁を試みてきたことが伺われる。このことからも、かなり体調が良かったことや、気持ちの部分でも最上級生に変わり、チームを引っ張ってゆこうと言う意識が感じられる。 実際選抜では、塁間を4.1秒前後で駆け抜けるなど、これはプロに混ぜると中の上レベルの脚力であり際だつ数字ではない。実際にプレーを観ていても、一年の頃の走力からして、もう少し速い走力はありそうなものだが、プロで足を売りにできるかは微妙なレベル。ただプロで自分の特徴を見出す必要性に迫られれば、もっと足でアピールすることになりそうだ。何よりこの選手の素晴らしいのは、一塁までの走力以上にベースランニングでの加速にある。そのため二塁打・三塁打が多くなること。盗塁と言うくくりでは微妙だが、そういった長打に結びつける走力に非凡なものがあることは、ぜひ抑えておきたい。 昨夏などは、中堅として打球への反応の良さを魅せていた守備。選抜では右翼手としてライトフェンス際を恐れないキャッチングを魅せて、意外にガッツもあるじゃんと綺麗なプレーをしすぎるイメージを払拭してくれた。打球への判断力・まわり込みだけでなく、球際での上手さも魅せてくれたことは、新たな収穫。また地肩に関しても、強肩ではないにしろ、プロの基準レベルを満たすものがあることも実証してくれた。 現状の身体能力に関しては、先輩である喜多や池辺と言う先輩以上のものをすでに示しているし、更に秘めたる身体能力には、更に上のものを期待できる点は、打撃以外にアピールポイントに乏しかった先輩達に比べると、高校からプロ入りへの大きなアドバンテージとなっている。 (打撃内容) 選抜緒戦の高岡商業戦では、ボール球に手を出すなど球の絞り込みが悪かった。一年生から甲子園に出場している彼でも、緒戦は力みから本来の選球眼を発揮仕切れない精神状態だったのかもしれない。しかしこの試合で一本ヒットが出たことで、元来の落ち着きを取り戻し、続く興南・島袋投手との対戦では、低めの見極めに絶対的な動体視力・選球眼の良さを発揮致しました。この選手、集中力を上がってきた時は物凄い能力を発揮致しますが、そうでは無いときに凡打を繰り返すように、集中力があまり長く持続しないタイプなのだと現状思われます。そのため一年夏のように、初めての甲子園でモチベーションや意識が物凄く高い時は、素晴らしい能力を発揮するのだと思います。 また打撃フォームに関しては、この半年あまりでフォームを根本的に変えてきている選手です。天才と言われてきた選手ですが、自分のスタイルを変える勇気と謙虚さがあります。この点は、先輩の池辺が全くスタイルを変えられなかったのとは対照的です。 ただ高校時点では、先輩である池辺や武内のように、文句なしの能力はまだありません。打ち損じも多いですし、期待に応えられるほどの結果も伴いません。まだこの打撃フォームが、完全に自分のものになっていないのかもしれません。 まずは、打撃の準備段階であるトップが立ち後れないようにし、投手のトップのタイミングと合わせる意識を持つこと。そして踏み込むタイミングをもう少し工夫するなど、タイミングの取り方に工夫が欲しいかなと思います。その辺が、しっくりしてくるようになれば、持ち得る才能を遺憾なく発揮できるようになるのではないのでしょうか。
更新日時:1970.01.01
将来の可能性
守備にしても、走力にしても、打撃にしても、その潜在能力は素晴らしいです。ただそれを、短期的に爆発させることはできますから、集中した時のプレーは見事です。しかしその集中力を長く持続させることに大きな課題を感じます。 またプレースタイルを観ていると「鋭さ」が感じられず、先輩である喜多や池辺と言った天才的な資質を示しながら伸び悩んでいった先輩達とダブる部分が気になります。ただ先輩達よりも、身体能力を秘め三拍子の総合力が高い点や自分のスタイルを好い意味で変えることのできる人間的な謙虚さがある点は、これから彼が伸びて行く過程で、とても重要なポイントだと思います。夏までに欠点を克服して行けるのか、またそのときにどんなプレーを魅せてくれるのかと言う期待はありますが、現時点の内容でも、充分高校からプロに入る器の持ち主だと判断いたします。あとは、プロで飯を食って行くんだと言う「貪欲さ」を、ぜひ伝えて欲しいと願うばかりです。
更新日時:1970.01.01
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