田中 大樹選手 (花巻東)
短評
観戦レポートより抜粋(2018年3月26日) 花巻東の先発、左腕・田中大樹(3年)の独り舞台と言ってもいい試合だった。 1回表のピッチングを見た限りではストレートは速くても120キロ台だし、変化球も目をみはるようなキレがあるようには見えず、どこで継投するかがポイントだと思った。しかし、2回に5、6番打者が空振りの三振に倒れ、「あれ?」と首をひねった。108キロ、112キロの変化球が何やら奇妙な落ち方をしているのだ。あえて表現すれば「揺れて→止まって→落ちる」という軌道を描いていた。 それでもストレートは速くなく、昨年秋の公式戦の防御率は2.41と普通だ。ついでに言えば、奪三振率5.49、与四死球率3.51も普通だ。それを本人もわかっているのだろう。4回まで15人の打者のうち9人に対してボール球から入っている。「まともに行けば打たれるのでとりあえず様子を見て」という一歩引いた気持ちがあったのだろう。それが5回以降は一変した。21人の打者のうちボール球から入ったのはわずか5人。自信がついた様子がこのボール球の変遷だけでわかる。 持ち球はスライダーとチェンジアップ。スライダーはカウント球として使い、勝負球は徹底してチェンジアップにこだわった。90キロ台から100キロ台のスピードで、前述したように揺れて、止まって、落ちる。東邦の昨年秋の打撃成績は、打率.398が智辯学園の.423に次ぐ今大会出場校中第2位、本塁打23は東海大相模の13本を圧倒的に引き離すナンバーワンである。 その強力打線が執拗に繰り出されるチェンジアップに翻弄され、なす術がない。花巻東ベンチは試合途中、ブルペンに背番号11の伊藤 翼、背番号17の西舘 勇陽を送り、継投の準備に入ったが、これほど完璧に相手打線を抑えれば代えられない。
更新日時:2019.01.28
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