試合レポート

市立川越vs大宮

2014.07.12

打っては満塁ホームラン!エース上條、バットで魅せる

 9日に開幕を迎えた埼玉大会。この日は天候の影響で11日の日程がそのままスライドしての開催となった。[stadium]川越市営初雁公園野球場[/stadium]で行われたのは2回戦3試合。一気に夏模様と化した晴天の元行われた第1試合は、好投手・上條 将希を擁するBシード市立川越と、埼玉大宮の対戦。

 その上條から、埼玉大宮は1回表、先頭の宇野 圭亮がいきなり快音を響かせレフト前ヒットで出塁。2番・渡邉 樹がキッチリ送りバントを決めて一死二塁とチャンスを作り出す。3番・髙井 智史は三振に取るものの、4番・井手 大夢にはフルカウントと粘られた末に四球を与える。どうにもキメにいった球が外れ、怪しい所はファウルで逃げられる。初回を無失点に抑え、2回、3回も走者こそ出さないものの、毎度のようにカウントを悪くする。ショート・前村 英樹のファインプレー等にも助けられながらの我慢の投球となる。埼玉大宮攻撃陣の粘りに上條はマウンド上で屈伸の動作を繰り返し、何かがしっくりきていないという表情で首を傾げる。

 一方、埼玉大宮先発の髙井 智史は初回、見逃し三振、空振り三振とポンポンリズムよくアウトカウントを重ねる。しかし、クリーンナップを迎えたところで3連続四死球と制球を乱し二死ながら満塁のピンチを迎える。続く打者をファーストフライに打ち取って事なきを得るが、2回にも先頭を四球で出塁させ、盗塁と内野ゴロの間に三塁まで進ませてしまうなど、両先発とも少々不安定。逆に、市立川越攻撃陣にとっては、チャンスをもらいながらも得点に結びつけることができずに、緒戦の難しさを味わう格好となった。

 そして3回裏、遂に市立川越が先制する。
この回先頭の2番・松本 竜生がセンターへのヒットで出塁、すかさず盗塁を決める。3番・奈良 龍之介もヒットで続き無死一三塁。続く4番・冨岡 弥夏はファーストフライに打ち取られるものの、5番・丹羽 功太がライトへ犠牲フライを放ち1点を先制。さらに6番・沢田 瑞城がヒットで、7番・佐藤 公紀が四球で出塁。二死満塁とすると、打席には先発・上條 将希。1ボールからの2球目をライトスタンドへ運ぶ満塁ホームランを放ち、チームを、そして自らを楽にする追加点を叩き出す。この回5点を挙げた市立川越が、試合の流れをグッと引き寄せた。


 5点のビハインドを追う埼玉大宮は直後の4回表、一死から4番・井手 大夢が1回に続き四球で出塁。続く打者は、ここまで大きな声を出してチームを引っ張っている5番・主将の冨吉 雄太。その冨吉は上條の初球をレフトへ弾き返し、さらにチャンスを広げる。冨吉を含め埼玉大宮の鋭いスイングに少し気圧されたかのように上條の制球が再び乱れ始める。6番・桑原 悠馬にストレートの四球を与え、満塁とすると7番・常陰 亮佑にも3ボールと、なんと7球連続でボール。結局常陰に四球与え、押し出しで1点を奪われてしまう。
だがここからずるずると崩れないのが好投手たるゆえん。続く打者を2連続の空振り三振に取り、なんとか最小失点に抑えピンチを脱する。

 するとその裏、エースの気迫を見せつけられた市立川越は1番・平田 聖和、2番・松本 竜生、3番・奈良 龍之介が電光石火の3連打で1点。4番・冨岡 弥夏の犠牲フライ、5番・丹羽 功太のタイムリー二塁打でこの回3点を追加。
5回にも3番・奈良が一死二、三塁から3打点目となるライトフェンス直撃の2点タイムリーを放ち10対1。コールド勝ちまであと1点とすると、最後は4番・冨岡の強烈な打球がライトを襲い、埼玉大宮ライトがボールを逸らす間に奈良が還り11点目。コールドゲームを成立させた。

 序盤、いまいち噛み合わないような攻撃を見せた市立川越だったが、上條の満塁ホームランが、がらりと雰囲気を変えた。ピッチングでは危なげないとはまだ言えなかったが、上條はこの夏も「持っている」男となりそうだ。また、エースが苦しいときに支え、盛り立てる守備陣の頼もしさは健在。鍛えらえたチームがこの夏、県の頂を目指してスタートを切った。次戦、3回戦は、庄和を8対1で下した大宮武蔵野が相手となる。

 一方の埼玉大宮、最後まで気持ちを切らさず、声を出し合った姿が印象的だった。試合後、応援団に向かい晴れやかに、そしてどこか誇らしげな顔をして一礼。応援団も笑顔で迎え、お互いをたたえ合っていた。

(文=青木有実子

【僕らの熱い夏2014 第30回】市立川越高等学校(埼玉)
打てるチームと思っているのですが、守り勝つ精神的に強いチームを!一点差で勝つ野球が目標です!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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