試合レポート

駒大高vs八王子

2017.04.09

駒大高の鉄腕・吉田永遠!八王子の攻撃を振り切りベスト8進出!

駒大高vs八王子 | 高校野球ドットコム

吉田 永遠(駒大高)

 3回戦で強豪・創価を破り勢いに乗る駒大高が、昨夏の西東京の覇者・八王子に挑んだ一戦は、雨の中、波乱の展開になった。

 駒大高の先発は、3回戦で創価を完封した吉田永遠。秋季都大会では1回戦で日大三相手に好投し、日大三の小倉全由監督も「あのピッチャーは良かったですね」と語る逸材だ。

 球速は140キロに達しないが、伸びがあり、スライダーのキレもいい。「緩急でなくて、高低で勝負できる投手です」と駒大高の川端教郎監督は言う。

 とはいえ、そこは試合巧者の八王子。1回裏は5番・山崎智也の右前安打で1点、2回裏は、2番・加藤大翔が中前安打で1点と、いずれも逆らわない打撃で、八王子が得点を重ねる。ただ駒大高の川端監督にすれば、「ビッグイニングさえなければいいと思っていました」と、慌てない。

 八王子の先発は、左腕の早乙女大輝。相手のタイミングを外す投球で、序盤3回は安打を許さない。

 ところが4回表に、早乙女の投球が突然崩れる。始まりはこの回の先頭打者、駒大高の2番・岩村海秀を三振に仕留めながら、振り逃げで出塁を許したことだった。続く佐久間雄大は三ゴロで併殺かと思えたが、二塁封殺のみ。4番、先発投手でもある吉田永遠が右前安打でチャンスを広げると、5番・馬場舜のライトオーバーの二塁打で1点を返す。さらに6番・小林龍弥のセンターオーバーの三塁打で2人が還り、一気に逆転する。

 この回あたりから、雨脚が強くなり出し、試合も風雲急を告げ始める。続く7番・吉田勝紀の一ゴロで、本塁送球したが野選になり、三塁打の小林も還る。ここで、制球力がいいはずの早乙女が連続して四球で歩かせ満塁に。八王子は早乙女とともに投手陣の柱である米原大地を登板させる。

 代わった米原から駒大高は、内野ゴロ、暴投、2番・岩村の右前安打で3点を追加。この回、一気に7点を入れた。

 その裏の攻撃で、八王子は3番・櫻井陸朗のレフトオーバーの三塁打で1点を返す。八王子の粘り強い攻撃の前に、駒大高の吉田永遠は球数が増え、4回を終えたところで球数は97球を記録している。降りしきる雨の中、試合がいつストップしてもおかしくない状況になり、試合自体が落ち着かなくなってきた。


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米原 大地(八王子)

 5回裏に八王子は、2つの四球と捕逸で一死二、三塁とし、途中出場の9番・呉屋アンディ佐助の遊ゴロを、遊撃手が三塁に悪送球。2人が還り八王子が2点差に迫る。

 5回が終わったところで、試合は雨のため約40分中断。試合再開後も、雨が強くなったり、弱くなったりを繰り返す。

 八王子にとって痛かったのは、6回と8回の攻撃だった。6回裏八王子は、この回先頭の櫻井が左中間を破る二塁打で出塁したが、続く熊澤諒太の右飛に飛び出して併殺。チャンスがついえた。

 7回表に駒大高は、吉田永遠のセンターオーバーの三塁打などで2点を追加し、リードを広げる。

 それでも八王子は8回裏、四死球2個で一死一、二塁とし、6番・米原の右前安打で1点を返す。さらに7番・初鹿野滉平の四球で一死満塁のチャンス。続く途中出場の8番・野村悠仁は中飛に倒れる。さらに二塁走者の米原は飛び出しており、併殺になってチャンスを潰す。駒大高の川端監督は、6回と8回の2つの併殺が大きかったと語っている。

 八王子は9回にも走者を2人出して反撃したが、得点できず、9対6で駒大高が勝ち、準々決勝進出を決めた。

 それにしても驚くべきは、駒大高の投手・吉田永遠のタフさだ。2日前に創価を完封したばかりであるうえ、八王子の粘り強い攻撃にあい、この試合球数は211にもなったが、最後までスタミナが切れなかった。吉田永遠は秋季都大会で日大三相手に好投したにもかかわらず、後半スタミナ切れして打ち込まれた。そのため、冬の間、ウエイトトレーニングなどで、スタミナ、体力作りを徹底した。試合後吉田永遠は「あまり疲れていません」と語る。東京の高校球界に、楽しみな投手が1人出現した。

 駒大高の川端監督は、同校が1999年にセンバツに出場した時の主将だった。夏のシード校も、その時以来という。

 この春は創価に続き、八王子を破った。次の相手は西東京大会の本命である早稲田実。強豪相手にどう戦うか。2年前、入学式を終えたばかりの清宮幸太郎が最初に出場した公式戦が、駒大高との試合であった。そのあたりの因縁も含め、注目の一戦となる。

 一方、八王子は雨天の中、落ち着きを失ったまま試合に敗れた。力のあるチームであることは確かだが、どのような状況であれ、いかにその力を発揮するかというのは、課題である。

(取材・写真=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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