関西vs如水館
激闘から19時間後の準々決勝
如水館のエース・浜田大貴は8回裏、意を決したようにマウンドに上がった。
4回途中から登板していたが、6点を失い、7回途中からファーストの守備に回っていた浜田。
捕手の木村昂平からの「もう一度投げさせてほしい」という懇願に迫田穆成監督は応えた。
チームの意思に奮いたった浜田。8回裏のマウンドを楽しむように三者凡退で切って取った。
3回戦(能代商戦)の激闘からわずか19時間後に迎えた準々決勝。
前夜は興奮からか寝付くのに時間がかかった選手もいたという。
この日の関西戦。選手の疲労はピークだった。
浜田自身も「体力的にキツかった」と試合後に漏らしている。
抽選の妙とはいえ、急に翌日10時半からのゲームになるのは辛い。対する関西は中1日で余裕があった。
体力と当時に大事なのは、気持ち(精神)のスタミナ。これは3試合連続延長戦を経験した如水館の選手にしかわからない。
甲子園での延長戦という極限状態のプレッシャーを何試合続けても経験すると、気持ちのスタミナが疲弊してきてもおかしくない。この日はやはり守備でミスが出てしまった。
4回途中からマウンドに上がった浜田も同じ。体は大丈夫でも、ボールに気持ちが乗りきらないような投球が何度かあった。
また4回表に1点差に迫ったという流れが、「浜田の投入が早かった」という迫田監督の決断に繋がったのも不運だったのかも知れない。
奇しくも「浜田を早く引きずり出す」という関西陣営の思惑通りになってしまった。
関西打線は5回に浜田に襲いかかった。
如水館内野陣のミスや、4番渡邊雄貴のタイムリーなどで3点。さらに1死2、3塁で6番関泰典がフルカウントから如水館陣営の意表を突くスクイズを決めた。
浜田の緩急を狙う徹底と大胆な策が生きてこのイニング4得点。如水館の選手に落ち着くゆとり与えぬ攻撃で試合の大勢は決まってしまった。
2対8で迎えた9回に1点を返し意地を見せた如水館。
「悔いはやはりあります」と浜田は涙を見せたが、3戦連続の延長戦を戦い切ったという満足感も見せた。浜田が投じた448球は十分に讃えられるものだった。
せめてもう1日、いやもう数時間余裕を持てたならどんな試合になっただろう?
考えても仕方がないが、そう思いたくなるような試合だった。
素晴らしい試合だったが、全国の球児のために1つアドバイスを送りたい。
場面は5点差の9回。2死1、2塁から、2塁走者が自分の判断で三盗を決めた。相手投手の投球パターンを読み切った見事な走塁だが、同時に危険な走塁だったとも言える。
点差は5点。つまり己の判断で自分だけが生還しても意味の少ない場面である。結果はセーフになったが、アウトならそこで試合は終了だった。
常に次の塁を狙う姿勢は立派と言えるが、守る野手の気持ちになれば、走者を溜められてじっくり攻められる方が嫌なはずなのだから・・・
(文=松倉雄太)