試合レポート

日大三vs佼成学園

2016.07.15

日大三底力!9回に4点、逆転サヨナラで佼成学園を破る

 大会の組み合わせ抽選で、シード校の日大三は33番を引いたのに対し、佼成学園が隣の番号の34番を引いた時、会場がどよめいた。
シード校で3回戦から登場する日大三の初戦の相手は、ノーシードながら、秋季都大会で西東京勢では唯一8強に残った佼成学園で、4年前の決勝戦のカードでもある。当然熱戦が期待されたが、想像を超える壮絶な試合になった。

佼成学園の先発は1年生の中村陸人日大三は背番号9に櫻井周斗と、左腕同士の対戦になった。
5回表までは、双方得点なし。ただしそれは、投手戦と言うよりも、嵐の前の静けさのようでもあった。
壮絶なドラマの第1章は5回裏、日大三の攻撃であった。佼成学園の投手は、前の回から中村をリリーフした2年生の溝口真矢である。

この回一死一塁の場面で、坂倉将吾がライトオーバーの二塁打で二、三塁。ここで打席には4番の山本幸次郎が入る。しかし山本の様子がどうもおかしい。打席でタイムをとり、水を飲む。暑さの中、足が吊ったようだ。山本は左前安打を放ち、1点を先取するも、代走に井上大成を送る。

5番の櫻井 周が四球の後、6番古田虎支郎の当たりは、前進守備の一塁手・速水誠生を直撃する内野安打になり坂倉が生還。
なお無死満塁の場面で佼成学園は、エースの梅田大樹を投入する。しかし、日大三の勢いは止まらない。7番櫻井朋は、ライトオーバーの走者一掃の三塁打を放ち、日大三はこの回5点を入れた。

しかしすぐさま、佼成学園が反撃する。6回表、速水の遊ゴロはややイレギュラーし、遊撃手・木村慧志の失策を誘う。

2番田村翔大は三ゴロ。それを前の回で代走し、三塁手となった井上が、一塁に暴投で無死一、三塁。3番中嶋 瞭の中犠飛で1点。
その後四球が2つ続き一死満塁となったところで、佼成学園は代打に山崎佑介を送る。山﨑は右中間の深いところに、走者一掃の三塁打を放ち、一気に追い上げる。


 しかも、7番矢本海星は三振に倒れたかに思えたが、振り逃げで一死一、三塁。9番真田和輝の四球で二死満塁。
前の回で打球が直撃した速水に代えて、代打に関口恵太を送る。もともと中心打者であった関口だけに、粘ること9球目。振り抜いた打球は、ライトスタンドに入る満塁本塁打となり、この回一挙8点。佼成学園が逆転に成功した。
この回佼成学園の安打は。いずれも代打の選手が放った走者一掃の三塁打と本塁打だけで、あとは失策や四死球、振り逃げなどの、日大三らしくないミスから得点が生まれた。

その後、日大三が8回表に1点、9回表には佼成学園がダメ押しとも思える1点を入れて、運命の9回裏に突入する。
このまま日大三が、初戦で敗れるのか。場内は異様な緊張感に包まれる。そんな雰囲気を、前の回からマウンドに上がっている佼成学園沓木明斗も感じ取ったのか、9回裏は、いきいなり2人続けて四球を出す。

ここで佼成学園は、レフトに下がっていたエースの梅田を、再びマウンドに戻す。
この場面で日大三の7番櫻井 朋は左前安打。左翼手がボール処理を誤る間に1人生還。8番木村も左前安打を放ち、1点差として、なお無死一、三塁。

佼成学園は、梅田に代わり、桐生昂汰をマウンドに送る。日大三は途中出場の浜本広幸の2球目にスクイズを敢行。しかし佼成学園バッテリーも読んでおり、しっかり外して、三塁走者を三本間に挟んで刺す。その間に一塁走者は三塁に進む。ここで浜本の、三塁後方にフラフラと上がる飛球がポテン安打になり、同点に追いつく。

さらに1番宮木紳道の左前安打で一死一、三塁となり、2番谷田部翔太を歩かせ満塁。最後は3番坂倉がきっちりセンターの大飛球を上げ、犠飛に。三塁から浜本が生還し、この回4点。日大三は劇的な逆転勝ちを収めた。
絶望的な展開から、逆転勝ちをするあたりは、さすが強豪の底力といえる。緊張の初戦を勝ち切ったことで、今後は、日大三らしさを発揮する可能性はある。この日、主将の宮木が5打数4安打と活躍したことも、希望的な材料だ。

その一方で、こうした緊迫の展開でも、エースの小谷野楽夕は登板しなかった。決して状態は良くないのだろう。大事なところで、守備の乱れもあった。
今後日大三はどこまで立ち直るか。それにしてもこの乱戦は、混戦の西東京を象徴しているようにも思えた。
一方佼成学園は、秋は逆転勝ちを重ねて8強に進んだが、春は初戦敗退。そして今回の大熱戦の初戦敗退。勝敗は常に紙一重のところにある。この試合では1年生投手の中村も好投した。今度は紙一重のところにある勝利を目指して精進してほしい。

(文=大島裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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