都立広尾vs東京成徳大高
2安打されるも27人でピシャリの広尾、「ほぼ完璧な試合」
広尾の左腕・春田君が、3回と7回に安打こそ打たれたものの、牽制死とライナー併殺で切り抜け、9回の越沼君のリリーフも含めて無残塁打者27人で抑えた。
春田君は左のスリークォーターだが、打者から見ると腕の出処が非常に見えづらい変則気味の出方である。それも、好投につながった要素でもあろう。それでいて、体があまりぶれないので、制球もきちんとしており、野手も守りやすいようだ。
渋谷の住宅街にあって、グラウンドが狭いということもあって、例年、さまざま形のティバッティングをメインに徹底した振り込みを中心とした練習で攻撃型のチームとなる広尾。梨本浩司監督は、イケイケの攻撃野球のチーム作りが好きなのだが、今年のチームは少し違った形に仕上がったようだ。
「春田の制球がいいので、バッテリーの配給に合わせて守りも動きながら、守っていくというスタイルで、先取点を取って逃げていくという形のチームになっています」という、従来の広尾の攻撃野球ではないスタイルだ。
ところが、この試合ではそれが見事にハマった。
初回、広尾は、先頭の山田君が中越二塁打、さらに暴投で三塁へ進む。殿岡君はセーフティースクイズを試みるが、先制点が入り俊足の殿岡君も一塁に生きた。バントで二塁へ進むと、5番西澤君の右前打で殿岡君も帰って、この回2点が入った。
4回には宮崎君が、「神宮第二球場ならでは」(梨本監督)というソロホーマーをレフトに打ち込んだ。
そして7回には、ニ死三塁から殿岡君が遊ゴロを放つが、これが深いところへ飛んで一塁セーフとなり内野安打。これで、決定的ともいえる4点目が入った。50m走は6秒を切るくらいの俊足がここでも生きて得点につながった。
東京成徳大は1年生の全校応援で動員をかけていて、一塁側スタンドはほぼいっぱいに埋め尽くしていた。
梨本監督も「いやぁ、ビックリしましたね。でも、こんな雰囲気のところでいい戦いが出来て、しかもほぼ完璧に近い試合で勝てましたから、言うことなしです」と、相手の大応援も苦にならなかったという様子だった。
完敗という印象になってしまった東京成徳大だったが、外野手を中心に好プレーも何度かあった。攻撃では、もう一つ攻めきれなかった面もあったが、引き締まった試合で、大応援団に十分に応えることの出来た試合だったといっていいのではないだろうか。
(文:手束仁)