九州国際大付vs北海
花田駿(九州国際大付)
向きが変わった風
九州国際大付が先制し、北海が追いつく。突き放してはまた追いつく。それが三度ある見ごたえたっぷりのゲームだったが、ハイライトは8回に訪れた。
直前の7回裏に三度目の同点に追いつかれた九州国際大付。8回表の先頭打者は6番花田駿(2年)。カウント2ボールからの3球目。北海の玉熊将一(2年)が投じた直球を迷いなく振り切ると、打球はライトスタンドへ突き刺さった。
「打った瞬間行ったと思いました」と抜群の手応えを強調した花田。打たれた玉熊は、「抑えたい気持ちが力みにつながった」と肩を落とした。
この8回の本塁打。本来ならば浜風(ライトからレフト方向)に押し戻されるのが通例。この日も試合開始当初はその浜風だった。ところが7回あたりから、風向きはコロコロと変わる。花田が打席に立った時、浜風とは完全に逆のレフトからライト方向への強風が吹いていた。その風にも乗ってグングン伸びた本塁打。
打席で集中しすぎていた花田は、「風には気づいてませんでした」と風の質問に苦笑い。一方玉熊の球を受け続けてきた捕手の玉木昂太(3年)は、「この時間(昼)には風は変わるかもしれないね」と頭に入れていたことを話してくれた。
神様は花田の一発を後押しするかのように風向きを変えた。北海バッテリーにとっては不運としかいいようがない。
これで勢いに乗った九国はさらにチャンスを作って1番平原優太(2年)のタイムリーでもう1点を追加。それまで、勝ちこされても1点差で凌いできた北海にとって、はじめてスコアボードに『2』という数字が入ったのはことのほか重かったようだ。
この試合、他にも目立ったのは九国打線の積極的なスイング。
「考えた投球」が持ち味の玉熊から1回にわずか6球で先取点。玉熊に考えるスキを与えず、「狙い球を絞って積極的に打っていけ」という若生正廣監督の指示が見事に当たった。
また5打数5安打の主将・髙城俊人は、「上から叩くようなイメージで打て」と具体的な指示も受けていたと話してくれた。
得点してもらった次の回に失点してしまった北海の玉熊は「甘くなると打たれる。もうボール1個分外せる厳しいコントロールを身につけたい」と前を向いた。
9回裏、北海が1点を返して粘った時、風向きはまた変わる予兆を示していた。
取って取られて、取って取られての展開は、同じようなリズムが崩れた時が勝負所と感じさせる試合。勝った九州国際大付の若生監督は、選抜で初めてのベスト4。「それは意識していた」という選手から、大きなプレゼントをもらった。
今大会、まだ一度もリードを許していないことを自信に、中1日で日大三に挑む。