試合レポート

福井工大福井vs仙台育英

2017.03.24

終盤に逆転、福井工大福井が41年ぶりとなる勝利を掴む

 1回裏、仙台育英はファーストストライクを狙い打ちする好球必打で先行する。1番西巻賢二(3年・遊撃手)が初球をレフト前ヒット、進塁打で二進したあと3番山田利輝(3年・左翼手)が初球をレフト前、4番佐川光明(3年・中堅手)が1ボールのあとの2球目をセンター前ヒットで先制点を挙げると、5番杉山拓海(3年・右翼手)が1ストライクからの2球目をレフト方向へ二塁打を放ち、あっという間に2点を先行する。6人の打者を送り込んだこの回の攻撃で相手投手が投げた球はわずかに14球。優勝候補の一角に挙げられるだけあると思った。

 このシーンを見れば仙台育英が圧勝すると思っても不思議でないが、仙台育英の好球必打はしばらく鳴りをひそめる。福井工大福井の先発、左腕の摺石達哉(3年)が外国人打者に対する日本人投手のようにボール球から入る辛抱強いピッチングで2~5回まで四球1つしか許さなかったのである。4回表、福井工大福井は四球で出塁した1番北川智也(3年・二塁手)を二塁に置き、4番山岸旭(3年・左翼手)が1ボールからの2球目、133キロのストレートをレフトスタンド最前列に放り込み同点に追いつく。

 仙台育英が好球必打を復活させたのは6回裏だ。先頭の西巻が遊撃手のエラーで二塁まで進み、2番鈴木佳祐(2年・三塁手)がバント安打で一、三塁とすると、山田のセンターフライで3点目、さらに杉山がレフト前ヒットで4点目を加えた。この6回の攻撃で摺石が投じた球はわずか10球。2ランホームラン一発で2点を挙げている福井工大福井の攻撃と比べるとそれぞれの役割分担がはっきりし、機動力も使えている。

 たとえば、無死一、三塁で山田が犠牲フライを打ったときホーム返球の間に一塁走者は二塁へ進み、杉山のレフト前ヒットで生還している。そしてこのときもホーム返球の間に打者走者の杉山は二塁へ進んでいる。間に合わないホーム返球を繰り返す福井工大福井と、抜け目なく二塁を陥れる仙台育英。この6回の攻撃を見て正直、仙台育英が勝ったと思った。

 まさかの逆転劇が演じられたのは終盤だ。福井工大福井は8回表、先頭の9番摺石がレフト前ヒットで出塁すると1番北川がライト前ヒットで続き、無死一、二塁という絶好の同点機を迎える。ここで2番吉田有哉(3年・右翼手)が送りバントを試みるが、仙台育英のピッチャー、長谷川拓帆の好判断で1-5-4の併殺。吉田は4、6回にもバントをし、4回表は一塁走者を二塁に進めることができなかった。そして3度のバントで吉田が一塁到達に要したタイムはいずれも5秒以上。これは明らかに怠慢走塁である。この併殺シーンを見て今度こそ福井工大福井は負けたと思った。

 ところが仙台育英の長谷川が3番井上開都(3年・一塁手)、4番山岸に四死球を与え、二死満塁のチャンスが再び訪れる。ここで5番島谷元貴(3年・捕手)がレフト前に2点タイムリーを放ち同点。さらに9回には一死後にヒットを打った山内貴文(3年・中堅手)が二盗で進塁、長谷川の二塁けん制悪送球で三塁に進むと、さらに長谷川がワンバウンドの暴投で勝ち越し、とどめは怠慢走塁と批判した吉田がレフト前にダメ押しのタイムリーを放ち、選抜大会では41年ぶりとなる勝利をもぎ取るのである。

 好走塁の仙台育英と拙攻・拙守を繰り返す福井工大福井。中盤までの仙台育英に傾いた流れがそれまで好投を続けていたピッチャーの四死球だけでひっくり返る展開。野球は怖いと思わされた好ゲームだった。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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