試合レポート

二松学舎大附vs都立高島

2021.07.23

二松学舎大附2年左腕・布施失点好投、都立高島は来年への自信に

 関東一とともに秋、春ともに都大会ベスト4へ勝ち進んだ二松学舎大附が、5回戦進出をかけて都立高島と対戦した。

 二松学舎大附が先発に抜擢したのは背番号10を付けた2年生左腕・布施 東海だ。春季都大会で3度ほど登板している布施だが、実に素晴らしいボールを投げ込む好投手だった。

 「1本立ちさせたい」という市原監督の思惑から先発起用されたが、小学生の時は横浜DeNAベイスターズジュニアにも選出された実績を持つ。ノーワインドアップから右腕で壁を作りながら重心を移動させる。流れるような投球フォームからは、力強く角度ある真っすぐを投げ込む。加えて、緩急をつけ、目線を外すカーブに、ストレートに近い軌道から落ちるスライダーが、同じようなフォームから投げ込まれる。都立高島の打者陣は、この投球を前になかなかボールを捉えきれない。

 市原監督も同じ左腕でOBの大江竜聖、そして現エースの秋山 正雲と比較して「変化球でストライクが取れるのが良いところです」と布施のストロングポイントを話す。布施本人も「球速はないので、変化球でテンポよくストライクを取って、守備にリズムを作る」ことを大事にしているとのことで、自身の強みを十分理解しているようだ。

 対戦した都立高島角津田 夢叶からは「ピッチングのリズムが良かった」と同じ投手として優れている点を話せば、菊池監督は、ストライクを取りに来た変化球を狙うように指示を出したそうだ。ただ際どいところに決まっており、なかなか連打とはいかなかった。

 同じ左腕である秋山ではあるが、「自分はまだまだです」と決して現状に満足していない。市原監督も「球威、そして体力強化をしないといけない」と課題は明確となっている。この夏だけではなく、秋以降も二松学舎大附はサウスポーエースがチームを牽引していくことになりそうだ。

 しかし都立高島のエース・角津田も同じ左腕として黙っていない。
今大会は、角度と回転数の高い質の高い真っすぐを武器に、打者と勝負してきた。だが、この試合は逆に、変化の大きいスライダーを外角中心に低めへ集める巧みな投球を見せる。「一歩間違えればホームランになる」と菊池監督は覚悟しながらも、高めには回転数の多い真っすぐを投げる。外角にはスライダーを投げ、時折チェンジアップを混ぜることで、外野フライを打たせる。攻めの姿勢をバッテリーに示した。

 勇気ある組み立てであるが、試合中も二松学舎大附の打者から痛打されることがあっても、結果的に野手の正面を突く。もしくは守備範囲に打たせることで、二松学舎大附をリズムに乗せない。作戦は大方成功だったといっていいだろう。


 ただ二松学舎大附は、少ないチャンスを逃さなかった。
2回に一死から四球でランナーが出たところで、6番・浅野雄志の二塁打でチャンスを広げる。ここで7番・丸山 丈司の犠牲フライ、8番・鎌田 直樹と1番・永見恵多にタイムリーが生まれ、3点を先取する。

 この回、二松学舎大附の打撃を振り返ると、各打者が右方向へ打とうという意識が見え、事実しっかりと打球を飛ばしてきた。各選手の体格や打席内での雰囲気を見れば、パワーでどんどん飛ばしていく印象を受けるが、きっちり打ち分ける技術もある。なおかつ「際どいところは見逃してきたので、試合慣れしている感じがありました」と都立高島・角津田が話していたが、ボール球にもあまり手を出してこないようだ。対戦するチームにとっては嫌らしい打線ではないだろうか。

 4回にも1点を追加してから一時、二松学舎大附都立高島の角津田に封じ込まれる形だったが、7回に打線が息を吹き返し、8番・鎌田のこの試合2本目のタイムリーなどで一気に3得点を記録した。これで7対0とコールドが成立し、二松学舎大附は7対0で都立高島を下してベスト16に勝ち進んだ。

 市原監督は試合を振り返って、「布施がよく頑張ってくれました」と2年生左腕の好投を勝因に挙げる。野手陣については、まだ納得はしていないようだが、5回戦以降はシビアな試合となるだろう。ここから調子を上げていくことを楽しみにしたい。

 敗れた都立高島は、「多くなった四球から相手に攻められた」と菊池監督は、敗因を語った。マウンドにいた角津田も「相手を恐れてしまい、制球が定まらずに四球が増えたことで、ピンチを招いてしまいました」と涙ながらに振り返る。7回を投げて7四死球で、うち5つが失点したイニングに絡んでいた。余計な四死球が失点に絡んだことは悔やまれるが、そこから得点に結びつけた二松学舎大附打線も素晴らしいといっていいだろう。

 都立高島は昨年の秋より菊池監督が就任し、助監督にはこの春から着任して、偶然にも菊池監督と同じ日大一出身の浅賀 大貴氏が務めている。前任の島 修司氏の教えを土台に、新たな風を吹き込みつつある中でベスト32まで勝ち進んだことは、1つの自信となるはずだ。秋以降、さらに一回り強くなった姿を見られることを楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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