試合レポート

大阪桐蔭vs秀岳館

2017.03.30

秀岳館の積極攻撃・積極走塁を封じた大阪桐蔭バッテリー

大阪桐蔭vs秀岳館 | 高校野球ドットコム

秀岳館vs健大高崎

 大会も終盤になりレベルの高い同士の試合になると点はそう入らない。つい先ごろまでスポーツ紙を賑わせていたWBC(ワールドベースボールクラシック)も、2次ラウンドや準決勝以降は投手戦になることが多かった。履正社が4対1で報徳学園に勝った第1試合は8回が終了した時点で2対2というロースコアだったし、この試合も最後まで2点以内の僅少差だった。点がそう入らないという前提で戦略を練り、投手を起用する。つまりベンチワークがこの試合の最大の見どころだった。 積極的に動いたのは秀岳館のほうだ。3回裏、2死から1番半情冬馬(3年・遊撃手)がヒットで出塁すると、次打者の2球目に二盗を企図して失敗、4回には3番木本凌雅(3年・一塁手)が死球で出塁すると次打者の5球目に二盗を企図している。

 大阪桐蔭の捕手、福井章吾(3年)は背番号3をつけているように、本職は一塁手である。本来の正捕手である岩本久重(3年)が練習中に左手有鉤骨(ゆうこうこつ)を骨折したため急遽、先発マスクをかぶっているが、岩本の故障が回復すれば一塁に戻る可能性もあるという。

 この急造捕手がとんでもないくらい肩が強かった。イニング間の二塁送球タイムでは最速1.87秒を計測。プロでも強肩の目安は2秒未満である。1、2回のイニング間では1.95秒、1.91秒を計測しているので、超高校級の強肩と言って間違いない。そういう強肩を見せられても秀岳館は走り、福井は2本続けて刺した。二盗を阻止した3回の二塁送球タイムは2.07秒、4回は2.06秒。私は実戦では2.0秒台を強肩の目安にしているので十分な強さと言っていい。


 盗塁だけではない。秀岳館は積極的に打って出た。大阪桐蔭の先発、徳山壮磨(3年)の球数が117球と少なかったのは、秀岳館各打者が好球必打を徹底したからだ。3安打した半情などは4打席・15球のうちストライクの見逃がしが1つもなかった。結果的には大阪桐蔭が2対1で勝っているのでもっと慎重に攻めてもよかったのではないか、という意見もあると思うが、この日の徳山のデキのよさを見れば待球作戦をとればかえって徳山の術中にはまったと思う。この日、徳山が5球以上投じてヒットを打たれたのは2本。逆に凡打は7つあったからだ。

 先制したのは大阪桐蔭。6回表、2番宮崎仁斗(2年・左翼手)がレフトに二塁打を放ち、二死三塁になったところで5番大阪桐蔭 山田健太(2年・三塁手)が秀岳館の先発、左腕の田浦文丸(3年)が投じたスライダーをライト前に運んで先制した。その前の球が110キロのチェンジアップで、山田は体勢を崩してこれを何とかファールにしている。田浦の勝負球はチェンジアップなので、当然山田の頭の中にはチェンジアップにどう対応するかという思いがあったはずだ。もし6球目が変化球でなくストレートだったら結果は違ったものになっていたと思う。

 8回には3番中川卓也(2年・一塁手)がライト前に運び、4番がバントで送って1死二塁とし、山田が今度は内角寄り132キロのストレートをレフト前に押し込んで2点目の走者を迎え入れた。その裏、秀岳館は1死から半情がヒットで出塁し、二進後、3番廣部就平(3年・三塁手)がレフト前にタイムリーを放って1点差としたがここまで。

 決勝は履正社大阪桐蔭という史上初大阪決戦となった。どっちが有利か予想はまったく立たない。大阪桐蔭のエース、徳山が履正社の主砲、安田尚憲をどう封じるか、焦点はこの一点にかかっている。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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