熊本工vs鳥取城北
熊本工業・山下滉太「外角低め」の出し入れで完投勝利!
初回、二死三塁のピンチをしのいだ熊本工業は、その裏・1番・坂井凌一塁手(3年)の中越二塁打と相手守備の乱れからつかんだ一死一・三塁から4番・工藤誠也三塁手(2年)が三遊間を破る先制適時打。続く2回には一死一・二塁から坂井が鳥取城北先発・上原拓真(3年)外角高めを逆らわず左中間に落とす適時二塁打。3回裏にも先頭の工藤が相手2番手左腕・福岩希莉也(3年)大会第10号となるソロアーチをレフトスタンドに叩き込むなど、序盤にして完全に主導権を握ることに。その後も毎回安打でリズムを保つ努力は怠らなかった。
一方の鳥取城北は頼みの2枚看板が共に制球を乱し、カウントを取りにいく甘い球を相手打線に狙われた。打線も熊本工業左腕・山下滉太の前に6回まで5安打無得点。
ただし山下に疲れが見えた終盤は一転して鳥取城北ペースに。7回表には二死無走者から苦心の配球とゼスチャーで味方を鼓舞した5番・鳥飼力斗主将(3年)以下の3連打で1点を返し、続く8回にも1番・田中涼太中堅手(2年)、2番・平山拓磨遊撃手(3年)の連続三塁打で1点差に迫る意地を見せた。
しかしながら次打者のスクイズ失敗で反撃ムードは一気にしぼむことに。4回以降無失点に三塁線適時打も放ったが福岩含め、本来の実力を出すタイミングがほんの少しだけ遅かった。
[page_break:このカードで注目すべきプレイヤーはこの選手!!]エキサイティングプレーヤー
山下 滉太(熊本工業3年・投手・左投左打・170センチ61キロ)
9回で要した球数、117球。10安打を打たれながら無四球2失点完投という粘り強さもさることながら、この試合で素晴らしかったのは「外角低め」の出し入れだった。
特にスタメンに7人並んだ右打者への外角低めは冴え渡っていた。2回裏の3三振はいずれも外角。特に6番・山田草太三塁手(3年)から二死目を奪った見逃し三振は、この日最速136キロで低めに突き刺さった。終盤、鳥取城北の迫力ある攻撃をしのげたのも、彼が頼りになるボールを持っていたからである。
これまでは熊本県が全国に誇る高校生左腕といえば昨夏・今春連続甲子園出場の大竹耕太郎(3年)であったが、山下もまた大竹とは違った味で全国レベルの左腕たることを16,000人の観衆に示したといえよう。
(文=寺下友徳)