適切な体脂肪量を考える
体脂肪はエネルギータンクとしてスタミナを支える役割がある
体力トレーニングの主な目的は「パフォーマンスの向上」と「ケガの予防」です。特にパワーアップを目指す場合は筋肉量を増やすことが大切であり、そこにスピードが加わることで大きなパワーが発揮されます。体重を増やすときの基本的な考え方としてはパワーに結びつく筋肉を増やし、体の「おもり」となってしまう体脂肪を増やしすぎないこと。ただし、体脂肪が極限まで減ってしまうと、体にとってのデメリットも大きくなることがあります。
体脂肪はエネルギータンク(貯蔵庫)としての役割があります。糖質(炭水化物)やたんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギーを持っていますが、脂質は1gあたり9kcalと倍以上のエネルギーを持っています。練習や試合で体を動かすときは、食事や補食などで糖質を含むものをとり、エネルギー源を補給しますが、糖質は消費されるのも早く、長時間になればなるほど体内のエネルギーが不足しやすくなります。体脂肪は糖質が少なくなってきたときにも運動が続けられるように、エネルギー源として使われますが、あまりにも体脂肪量が少ないとスタミナ切れを起こすことになります。この他にも細胞膜やホルモンの材料として使われたり、体温調節や衝撃に対するクッション的な役割を果たしたりします。
体脂肪は多すぎると「おもり」が増えてしまうし、少なすぎてもスタミナなどに影響が出やすい。では野球選手はどのくらいの体脂肪率を目安にすればいいのでしょうか。アスリートにとって推奨される体脂肪率は文献、測定法、競技種目によっても変わりますが、男性で4~13%、女性で12~22%前後を示すものが多く、野球選手の場合は10~15%程度、ポジション特性としてスタミナをより必要とする投手は12%前後とやや野手よりも高い体脂肪率を推奨しているものが多いようです。また実際の測定値ではこれより高い値を示す研究なども見られます。
数値はあくまでも目安ですが、野球は比較的長い時間プレーをすることが多いため、体脂肪率を一桁にまで「しぼる」必要性はなく、結果として体脂肪率が一桁となった場合は脂質を含む食べものなども積極的にとりながら、トレーニングを続けていくようにすると良いでしょう。体脂肪率を減らすことを目標にするのではなく、筋肉量を増やすことを念頭に置きつつ、体重・体脂肪率など自分自身の体組成を把握しておくことが大切です。その上で自分にとって動きやすい体重・体脂肪率を探っていくようにしてみてくださいね。
文:西村 典子
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