肩は一度脱臼するとクセになる？

ダイビングキャッチで肩を強打すると脱臼することがある

　野球は接触の少ないノンコンタクトスポーツに分類されますが、時々人や物とぶつかって、アクシデント的にケガをすることがあります。野球で見られる肩関節の脱臼には、ボールを捕ろうとダイビングキャッチを試みたときや、フェンスにぶつかって肩を強打したときのように直接肩に大きな衝撃が加わるケースと、牽制での帰塁やヘッドスライディングでベースとの距離があわずに手をついてしまったときに手から肩へと衝撃が伝わる介達外力によって脱臼するケースがあります。肩関節の脱臼はその多くが前方・下方変位であり、肩関節の外転・外旋位を強制されることによって起こります。

　初めて肩関節を脱臼した場合はすみやかに医療機関を受診して整復し、適切な処置、適切なリハビリテーションを経て競技復帰することになりますが、10代で初回脱臼したケースは再発率が80～90%にも及ぶとも言われ※、十分なリコンディショニングを行っても再度脱臼してしまうことは珍しくありません。肩関節は複雑な動きができる代わりに土台が不安定であり、脱臼時に関節包（かんせつほう）や関節唇（かんせつしん）といった軟部組織を傷めてしまうと、さらに関節が不安定になって脱臼を繰り返すようになります。

　何度も繰り返す肩の脱臼（いわゆる脱臼グセ）のことを「反復性肩関節脱臼（はんぷくせいかたかんせつだっきゅう）」といいます。このような状態になってしまうとボールを投げようとする動作や、バットスイングなどでもすぐに肩が外れてしまうようになります（あまりにも肩関節がゆるんでいると自分で整復できることもあります）。肩関節を支える腱板筋群（いわゆるインナーマッスル）を強化することは大切ですが、軟部組織が切れたりはがれたりしたままでは脱臼グセを防ぐことはむずかしく、このような場合は手術によって傷んだ組織を修復することが必要となります。何度も繰り返す肩の脱臼は野球のプレーだけではなく、日常生活にも支障が出る場合も多いので、医師と相談の上適切な対応をとるようにしましょう。

※参考サイト）反復性肩関節脱臼（日本整形外科学会）

文：西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中！